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ハーランドの“あの写真”…日本代表オランダ戦も担当したプロカメラマンが「W杯でのリモート撮影」について解説

  • 2026.7.21

FIFAワールドカップ2026で世界的に注目を浴びたスーパースターの一人、ノルウェー代表FWアーリング・ハーランド。

25歳の怪物ストライカーはラウンド16において、日本代表を破ったブラジルを相手に圧巻の2ゴールを挙げ、王国をワールドカップの舞台から引きずり下ろすと同時にノルウェーを初の準々決勝へと導いた。

そんなハーランドは今大会、7つのゴールを記録したが、SNSなどで話題となった写真がこちら。

画像: (C)2281968025,Mark Smith,GettyImages

グループステージ第1節のイラク戦。1-1で迎えた43分にDFのバックパスが弱くなったところを逃さず、猛烈なプレッシングからGKが蹴ったボールを足に当てて勝ち越し弾を奪ったシーンだ。

構図の素晴らしさと圧倒的な迫力から、世界的に大きな反響を呼んだ一枚…。そこで、QolyとGetty Imagesの共同企画、第3弾ではこの写真の“裏側”を紹介する。

残念ながら撮影したマーク・スミス氏(Mark Smith)からコメントはもらうことはできなかったものの、同僚のプロカメラマンであるダン・マラン氏(Dan Mullan)から、今大会でのリモート撮影について色々うかがうことができた。

リモートカメラについて

「今大会では、用途に応じて複数種類のリモートカメラを使用しています。最も一般的なのは、ゴール裏に設置するリモートカメラです。ピッチ上のゴール裏に設置し、ピッチサイドにいるフォトグラファー席まで伸ばしたケーブルを通じてシャッターを操作する仕組みとなっています」

リモートカメラの設置について

「リモートカメラの設置場所を決める際には、いくつかのポイントを考慮しています。

まず重要なのは、『どのような写真を撮りたいか』を明確にすることです。撮影したいカットから逆算し、その場所にフォトグラファーを配置できるかを検討します。もし配置が難しい場合は、リモートカメラの設置を選択します。そのため、設置場所は試合中にフォトグラファーが立ち入れないエリアであることが多く、代表的な例がゴール裏のピッチ上です。

また、多くのスタジアムで共通して設置される場所もありますが、同時にテレビ中継用カメラとの位置関係も重要な要素です。今大会では、中継カメラがゴールネット後方にポールを伸ばして設置されるため、そのポールが画角に入り込まないよう、リモートカメラはゴールの片側へ寄せて設置するなど、細かな調整を行っています」

画像: リモートカメラ設置の様子(こちらはまた別のカメラマン) (C)Getty Images
リモートカメラ設置の様子(こちらはまた別のカメラマン)

リモートシャッターの操作について

「リモートカメラのシャッターを切る方法はいくつかあり、撮影シーンや設置環境に応じて使い分けています。最もシンプルなのは、ピッチサイドのフォトグラファーが手持ちカメラに装着した無線送信機を使用し、リモートカメラを遠隔で作動させる方法です。

一方、FIFAワールドカップのような大規模大会では、設置されるリモートカメラの台数が非常に多く、無線による電波干渉が発生しやすくなります。そのため、ゴール裏のリモートカメラなどは、安定した撮影を実現するためにトリガーケーブルを直接配線してシャッターを操作しています。

さらに、Canonのソフトウェア『EMR』を活用する方法もあります。ネットワーク上で複数のカメラを接続し、ノートパソコンから遠隔でシャッターを切ることができるほか、カメラが捉えている映像をリアルタイムで確認することも可能です。加えて、試合中の光の変化に合わせて露出などのカメラ設定を遠隔で調整できるため、刻々と変化する撮影環境にも柔軟に対応しています」

リモートカメラならではの価値とは

「私たちがリモートカメラを活用する上で大切にしているのは、『このイベントを、これまでにない新しい視点でクライアントへ届けられるか』という考え方です。

もちろん、リモートカメラが人間のフォトグラファーに取って代わることはありません。むしろ、ピッチサイドで撮影する経験豊富なフォトグラファーの視点を補完し、人の手では捉えられない新たなアングルやポジションから、決定的な瞬間を切り取ることを目的としています。

リモートカメラならではの視点を組み合わせることで、試合の臨場感や迫力を、より多角的に伝えられると考えています」

ちなみに、ダン・マラン氏は、日本代表のオランダ戦でリモート撮影した以下の写真が、試合当日6月14日のGetty imagesが選ぶベストショットに選出されている。最後にそちらのコメントも紹介。

画像: (C)2281584897,Dan Mullan,GettyImages

「ダラス・スタジアムの高所に設置されたキャットウォークから、リモートカメラを用いて撮影されたこの一枚は、FIFAワールドカップ最大級の会場のひとつをまるで小さな惑星のように描き出している。

フォトグラファーのダン・マランは、大会開幕の数日前から専門機材を使ってカメラを設置し、安全訓練や綿密な準備を経て、観客席からは決して見ることのできない独自の視点を実現した。

約7万人の観客がピッチを取り囲む光景は、サッカーが持つ世界的な魅力を象徴するビジュアルとして表現されている。球体のような広角表現によって、試合そのものがひとつの世界の中心に置かれ、世界中の何百万人ものファンを結び付けるワールドカップのスケールと熱狂を印象的に伝えている」

画像: リモートカメラならではの価値とは

ダン・マラン(Dan Mullan)

英国南西部を拠点に活動する受賞歴のあるスポーツフォトグラファー。イングランド・プリマスで生まれ育ち、プリマス・カレッジ・オブ・アートで写真を学んだ後、6年前にGetty Images初のスポーツフォトグラファー・インターンとして入社。その後、正社員フォトグラファーとなり、これまでにラグビーワールドカップ2大会、オリンピック2大会、FIFAワールドカップ1大会など、世界各地を飛び回り、さまざまなスポーツを取材・撮影している。現在は、国際オリンピック委員会(IOC)、ワールドラグビー、FIFA、イングランドラグビー協会(England Rugby)、イングランド・ウェールズ・クリケット委員会(ECB)などのクライアントと密接に連携しながら撮影を行っている。

筆者:奥崎覚(編集部)

試合だけでなくユニフォーム、スパイク、スタジアム、ファン・サポーター、カルチャー、ビジネス、テクノロジーなどなど、サッカーの様々な面白さを発信します。現場好き。週末フットボーラー。

画像提供:Getty Images

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