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「俺だって疲れてるんだよ」と言った休日、ヘッドセットを外した理由

  • 2026.7.21
ハウコレ

コントローラーをテーブルに置いたとき、台所で流れている水の音と、息子の部屋から転がるクレヨンの音がいっぺんに戻ってきました。

どちらも、俺がずっと遮断していた音でした。ヘッドセットを両耳にかぶせると、リビングにいるのに誰の声も届かなくなります。

通知音が止まる場所

会社でシステムの保守運用を担当して3年になります。トラブルが起きれば携帯が鳴り、対応が終わるまで席を立てません。この半年は不具合の連鎖が続いていて、布団に入っても通知音が頭のどこかで鳴り続けている気がします。休みの日にヘッドセットをつけてゲームを起動すると、ようやくその音が遠のきます。妻や息子の声まで届かなくなることはわかっていました。でも俺には、日常の音が何も聞こえない時間が必要でした。

「うん、上手だね」

その日も、ソファでコントローラーを握っていました。息子が「お父さん、見て」と目の前に立ちました。ヘッドセットの片耳を浮かせて「うん、上手だね」と答えましたが、絵を見る余裕がなく、目は画面に残ったままでした。妻が「ちゃんと見てあげてよ」と言いました。「見たよ」と返しましたが、見ていないことは自分が一番わかっています。「画面を見たまま何がわかるの」。妻の声を受けて、俺はまた片耳を塞ぎ直しました。息子がソファの横に絵を置いて部屋に戻っていたことに気づいたのは、少し後でした。

俺だって

台所のほうから妻の声が飛んできました。「毎週こうだよね。休みの日くらい、この子のほう向いてあげてよ」。ヘッドセットを首に下ろして、妻のほうを見ました。「俺だって疲れてるんだよ」。嘘ではありません。ただ、その言葉が息子の代わりにはならないことも、ゲーム画面がオートセーブに切り替わるのをぼんやり眺めながら、わかっていました。

そして...

コントローラーをテーブルに置きました。ヘッドセットを外すと、台所の水の音と、息子の部屋からクレヨンが転がる音が戻ってきます。どちらも、さっきまで俺が遮断していた音です。息子の部屋のドアを開けて「さっきの絵、もう1回見せて」と言いました。息子が持ってきた絵には、3人が手をつないで並んでいました。来週もまたヘッドセットに手が伸びるだろうとは思います。でもあの絵の中の俺は、何も持たずに息子の手を握っていました。

(30代男性・システムエンジニア)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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