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留守を任された夫が子ども置いてランニング…。原因は無責任ではなく、見通しの弱さ?【著者インタビュー】

  • 2026.7.18

【漫画】本編を読む

夫・翔太と子ども、3人で暮らす結衣。翔太のやりっぱなし、出しっぱなし、突然想定外の行動を取る……などの行動に悩まされていた。そしてある日、「夫はADHDではないか?」という疑念を抱くようになる。そしてADHDについて調べるうちに、発達障害のあるパートナーと生活する中で孤独感や絶望感、無力感に襲われる状態を「カサンドラ症候群」と呼ぶことを知る。しかし、そこまでわかっても解決策は見いだせず、絶望する結衣。そこに「ADHD謎解き探偵団」を名乗るブルドッグと女性が現れて……。

『もしかして、うちの夫はADHD? ~夫の見てる世界を体験したら、すれ違いが減りました~』(はなゆい/オーバーラップ)は、“夫の見てる世界”を通じて、夫婦の間に生じるすれ違いをどう捉え直していくかを描いた作品だ。ADHDの人、そしてそのパートナーからも支持を集める本作は、どのようにして生まれたのか。ADHDグレーである著者・はなゆいさんに話を聞いた。

――ADHDの特性がある夫・翔太の冒頭のエピソードで、「4歳の子どもと留守番しているのに子どもを置いてランニングに出かける」という話が衝撃的でした。こちらはADHDのどんな特性に当てはまるのでしょうか?

はなゆいさん(以下、はなゆい):これは“未来シミュレーションの弱さ”や、“今、自分がやりたいと思ったことへの注意の偏り”が関係しているケースとして描きました。ADHDの方全員がこういう行動をするわけではないのですが、「今やりたい」という感覚が強くなると、その先の展開を十分にシミュレーションできないことがあります。例えば「子どもが危ないことをしたら?」といった予測を頭の中で並行して考えることが苦手な場合があるんです。本人としては「すぐ戻るから大丈夫」という感覚でも、パートナーからすると「なんでそんなことを!?」となってしまう。この“危機感のズレ”が、夫婦関係ではかなり大きな衝突になりやすいと感じています。

ここで描きたかったのは「ADHDだから無責任」ということではありません。「本人にはどう見えていたのか」を理解しないと、ずっと「ありえない!」だけで終わってしまうということです。もちろん、危険な行動は改善が必要ですし、家族でルールを作ることも大事です。でもまずは「なぜそうなったのか」を理解することで、対策の立て方も変わってくるのではないかと思います。

――本作には監修として精神科医の司馬理英子先生が加わっています。制作にはどのように関わったのでしょうか?

はなゆい:制作のかなり早い段階から司馬先生にご相談しました。私自身の悩みを描いた前作『ただのぽんこつ母さんだと思っていたらADHDグレーでした。』の出版後、SNSやメッセージを通じてパートナーに関する相談を、本当にたくさんいただきました。ただ私は医師ではないので「こうしたらうまくいきます」とは言えません。そこで先生に、実際の事例や対応についてお話を伺いました。「こういう場面では何が起きている可能性があるのか」「パートナーはどのように対応するといいのか」「実際にどのような工夫をしている方がいるのか」といったことをたくさん教えていただき、伺ったことは作品にもかなり反映されています。さらに完成前にはネームもチェックしていただきました。

私は漫画を描くとき「わかりやすく伝えること」をとても大切にしています。そのため専門用語をたとえ話や自分なりの言葉に置き換えて描くことが多いんです。ただ、そこで本来の意味からずれてしまってはいけません。誤解を生まないか、極端な描き方になっていないかといった点を確認していただき、必要に応じて修正をしていきました。

――司馬先生とのやりとりの中で、印象に残った事柄を教えてください。

はなゆい:一番印象に残っているのは、“話を聞いてもらうこと”自体の力です。最初に先生とは2時間ほどお話しさせていただいたと思うのですが、驚くほどあっという間で。すごく濃密な時間だったのであっという間に感じたんだと思います。最初は作品作りのための話をしていたのですが、気が付けば私自身の困りごとの話まで聞いていただきました。その時感じたのが、先生が相手を否定しないということです。例えば悩みを打ち明けたとき、「そういうことってありますよね」「それは大変でしたね」とまず受け止めてくださるんです。その上で「こういう背景があるのかもしれませんね」「こういう工夫をされている方もいますよ」と自然に視野を広げてくださる。

実は私、以前から司馬先生の著書を読んでいたのでお会いする前はとても緊張していたし、変なことを言ってしまわないだろうかと不安だったんです。でも実際にお会いすると本当に話しやすくて、その不安を忘れてしまうほどでした。帰る頃には気持ちが軽くなっていて、「ADHDっぽい人生もそんなに悪いものじゃないかもしれない」と思えるくらい力をもらったんです。この経験を通して「ちゃんと聞いてもらうこと」はそれだけで人を支える大きな力があるのだと実感しました。

取材・文=原智香

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