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【新・フレンチシック特集】フランス映画はおしゃれから“リアル”へ!

  • 2026.7.17
Hearst Owned
多様な“生”を映し出す現代のフレンチシネマ

フレンチシックな映画といえば、アンナ・カリーナやジーン・セバーグなどおしゃれミューズを輩出したジャン=リュック・ゴダール映画に象徴されるような、女も男も自由なエスプリを持ち、哲学的な会話を繰り広げ、恋の駆け引きをするヌーヴェルヴァーグ作品を思い浮かべる人が多いだろう。もしくは、イザベル・アジャーニやエマニュエル・ベアールが漂わせた魔性や官能性、ジュリエット・ビノシュやシャルロット・ゲンズブールが体現したアンニュイな女性像にフランス映画らしさがあったかもしれない。

今も数々の名作はフレンチシックの神髄となる魅力を放っているが、1990年代後半あたりからフランス映画はダイバーシティを映す鏡に。特に2010年代以降は、おしゃれだけではない多民族国家フランスの多様な現実を映し出す作品が主流になった。女性監督が頭角を現し、女性のさまざまな生き方が描かれる“女性の視点”が顕著となり、それはボディホラーというジャンルにまで及ぶ。また、パリ郊外や地方に生きる人々にまなざしを向けた物語も増加。多様なルーツや価値観を持つ人々のリアルな生を投影し、オーセンティックな女性像や現代社会を描くことが、今のフレンチシネマの魅力といえそうだ。

【FEMALE GAZE】女性視点の多彩な人生の物語

<strong>『落下の解剖学』</strong>(2023)夫の殺害容疑をかけられた妻をめぐる法廷劇。社会的に成功した女性が直面するジェンダーバイアス。ジュスティーヌ・トリエ監督作。 aflo

セリーヌ・シアマ『燃ゆる女の肖像』(2019年、カンヌ国際映画祭脚本賞)、ジュスティーヌ・トリエ『落下の解剖学』('23年、同・パルム・ドール)、オードレイ・ディヴァン『あのこと』('21年、ベネチア国際映画祭金獅子賞)など女性監督の台頭目覚ましいフランス映画界。また、矛盾や欠点を抱えながらも人生を模索する、年齢も境遇も性的指向もさまざまな女性の姿が多くの作品でフィーチャーされるように。女性の視点が豊かな物語を生み出している。

<strong>『Les enfants des autres』</strong>(2022)『急に具合が悪くなる』で主演したヴィルジニー・エフィラ演じる教師が、パートナーの幼い子どもと向き合う物語。レベッカ・ズロトヴスキ監督作。 AMANAIMAGES
<strong>『Les femmes au balcon』</strong>(2024)真夏のマルセイユ。アパートで暮らす3人の女性は、向かいの隣人との出会いをきっかけに悪夢のような事件へ巻き込まれる。俳優のノエミ・メルラン監督作。 AMANAIMAGES

【BODY HORROR】現代のボディホラーをけん引する女性監督たち

<strong>『ALPHA』</strong>(2025)皮膚が石灰化する謎の奇病を描く、ジュリア・デュクルノー監督の新作。2026年日本公開。 ©MANDARIN & COMPAGNIE / KALLOUCHE CINEMA / FRAKAS PRODUCTIONS / FRANCE 3 CINEMA

体の変容を通して、現代社会が抱える恐怖や欲望、不安を描くボディホラー。2021年、『TITANE チタン』でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞したジュリア・デュクルノーがフランスの女性監督が描くボディホラーの筆頭。話題だった『サブスタンス』('24年)のコラリー・ファルジャ、今年のカンヌのミッドナイト部門で『Sanguine』が上映されたマリオン・ル・コロローにも注目。

<strong>『Sanguine』</strong>(2026)研修医が奇妙な症状を抱えて運び込まれる患者に直面。やがて彼女自身の体にも不気味な変化が。新鋭マリオン・ル・コロロー監督作。 Hearst Owned

【DIVERSE LIVES】舞台は郊外、地方へ。社会の片隅から見える景色

<strong>『君の見る世界をなぞる』</strong>(2025)南仏、学校になじめず、建築現場で見習いとして働く16歳の少年が、ウクライナ出身の青年に惹かれていくが……。8月21日、全国公開。 ©Les Films de Pierre / Lucky Red / Page 114 / Les Films du Fleuve / France 3 Cinéma / AMI, Alexandre Mattiussi

『レ・ミゼラブル』(2019年)、『バティモン5 望まれざる者』('23年)など、移民が暮らすパリ郊外(バンリュー)でフランス社会の格差や分断を描いた注目監督ラジ・リに代表されるように、閉塞感漂う時代の影響を色濃く受ける、パリ郊外や地方に生きる人々のリアルを映す作品も今のフランス映画の潮流だ。若者たちの孤独やアイデンティティの揺らぎ、ジェンダーやセクシャリティをめぐる葛藤など、多様な声をすくい上げるまなざしに注目したい。

<strong>『L’Amour Ouf』</strong>(2024)フランソワ・シヴィル、アデル・エグザルホプロス、ヴァンサン・ラコストなどフレンチスターが共演。格差と暴力に引き裂かれたラブストーリー。 aflo
<strong>『Ma frère』</strong>(2025)同じ団地で育った2人の少女の、ひと夏の葛藤と成長。新鋭リズ・アコカ&ロマーヌ・ゲレ監督作。 aflo

【CLASSIC REBORN】名作にこそ今を生きるヒントが隠されている

<strong>『L’Etranger』</strong>(2025) アルベール・カミュの不朽の名作小説『異邦人』をフランソワ・オゾン監督が映画化。主人公ムルソーをバンジャマン・ヴォワザンが演じた。 AMANAIMAGES

古典や歴史を再解釈する動きも近年のフレンチシネマの特徴。フランソワ・オゾン監督は、バンジャマン・ヴォワザンを主演に、作家アルベール・カミュの名作『異邦人』を映画化。モノクロの美しい映像で展開される不条理ドラマはフレンチシックそのもの。今後もヴィクトル・ユーゴーの古典『レ・ミゼラブル』、『三銃士』の著者アレクサンドル・デュマの父トマ・アレクサンドル・デュマの生涯を映画化するなど大作が続く。

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