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5人のプロにASK! 2026年サステナブルファッションの現在地と注目の14ブランド

  • 2026.7.18
Hearst Owned


自分らしい選択を!サステナブルは思うほどハードルは高くない

近年、ファッション業界におけるサステナブルは“特別な取り組み”ではなく、もはやスタンダードになりつつある。その一方で、求められるテーマや役割は年々多様化し、ブランドにはこれまで以上に幅広い視点が求められているようだ。環境や社会課題へのアプローチが多様化するなか、数値だけでなく、プロダクトやサービス、ブランドの姿勢など、いま知っておきたい取り組みとは?

100点を目指すのではなく自分なりの基準で選び続ける

ファッションジャーナリストで『WWDJAPAN』サステナビリティ・ディレクターの向千鶴氏は、これからのファッションは「作る」だけでなく、「手放す」までを含めて提案することが新たなスタンダードになると話す。「リサイクル素材の活用やトレーサビリティの確保など、“どう作るか”の段階を経て、いま業界における大きな課題となっているのが、“どう手放すか”です。これまで大量廃棄が前提だったファッション業界でも、リユースやリサイクルといった選択肢が広がりを見せています。回収量の増加からは、衣類の循環に対するアクションが業界だけでなく消費者にも着実に浸透していることがうかがえます。これからは“ファッションを売るところまで”ではなく、“End of Life(製品寿命のその先)”までを提案する時代になるでしょう」。

情報過多でサステナブル疲れに?

一方でその意識が広がるほどに、「何が正解なのか」と迷う人も増え、『サステナブル疲れ』という言葉も聞かれるようになった。こうした流れについて、「SNSの普及によって消費者の情報リテラシーは高まり、ブランドが発信するメッセージの真偽も厳しく見られるようになりました。とはいえ、常に高い意識を持ってサステナブルな選択を続けている人は決して多くないはず。そして消費者は、ブランドが完璧であることを求めているわけではありません。できないことはできないと認めることも含め、自分たちの言葉で誠実に伝えようとする姿勢こそが、いま求められるサステナビリティにおける透明性なのだと思います」。

サステナビリティを取り巻く現状について、一般社団法人unisteps共同代表理事、の鎌田安里紗氏は、「気候変動による異常気象や資源価格の高騰など、環境・社会課題はますます身近なものになっています。サステナビリティは、もはや“地球にいいこと”というプラスアルファだけでなく、社会や事業を成り立たせるための前提にもなっています。この10年でファッション業界の取り組みは大きく前進しましたが、脱炭素、資源循環、水リスク、生物多様性、人権など、考えるべきテーマは年々増えています。それらすべてを理解し、完璧にクリエイションへ反映することは簡単ではありません。

さらにこの30年で衣服の価格は大きく下がり、セールも当たり前になりました。手頃な価格で服を楽しめるようになった一方で、気軽に買えることは気軽に手放せることにもつながってしまいます。大量生産や低価格化、そして消費のスピードが加速したことは、ファッション業界が抱えるさまざまな課題の背景にあります。だからこそ、生産量を適正に保ち、服が適正な価格で販売されることが大切です。とはいえ、すべてにおいて完璧な選択をする必要はありません。大切なのは、自分なりの基準を持ちながら、一つひとつ選択を重ねていくことです。また、毎日着るTシャツや肌着と、一生ものとして受け継がれるコレクションピースでは、求められるサステナビリティのあり方も異なります。アイテムごとの役割や特徴に合わせて、柔軟に考える視点も必要ではないでしょうか」。

ファッションプロが厳選する、サステナブルブランド14選

【1】服を長く愛するために、リペアという選択

ファッションにおいてサステナビリティを考えるとき、最も身近なアクションのひとつがリペアだ。傷んだら買い替えるのではなく、修理しながら長く愛用し続けることは、廃棄の削減にもつながる。気に入った一着を大切に着続けること。その積み重ねこそが、すぐできるサステナブルな選択のひとつといえるだろう。

ミッタン(MITTAN)

Courtesy of MITTAN

京都に拠点を置くミッタン(MITTAN)は「永く続く服」を理念に、デザイナーの三谷武氏が2013年に設立。シーズンごとのテーマを設けず、修繕、染め直し、再販を前提としたものづくりを続けており、不要になった製品は購入時期や状態を問わず、国内定価の20%(税別)で現金で買い取り、メンテナンス後に京都の店舗などで再販売する循環型の仕組みを実践している。

Courtesy of MITTAN

「ブランド設立当初から、服が使い捨てられないための仕組みに取り組んできたミッタン。着なくなった服の買い取りや、長年着込んだ服の修繕サービスを提供し、服を長く循環させることを提案しています。リペア専用のインスタグラムアカウントでは、美しく直されたミッタンの服の写真が並びます。服を生み出すことに責任を持ち、1着1着の服に愛情を注ぎ続ける姿勢に共感します」。(一般社団法人unisteps共同代表理事/鎌田安里紗)

リムレス トーキョー(RIMLESS TOKYO)

Courtesy of Rimless Tokyo

空間演出を手掛けるマクリ(MACRI)が2026年に立ち上げた東京発のアイウェアブランド。フレームを持たないリムレス構造を「余白」のデザインとして捉え、装いに自然と溶け込むアイウェアを展開。軽やかな掛け心地と、ジェンダーや年齢を問わず取り入れやすいデザインで、日常に寄り添う目元のスタイリングを提案する。また、全モデルで共通パーツを採用することで、無駄を省いた合理的なものづくりと高いメンテナンス性を両立している。

Courtesy of Rimless Tokyo

「レンズ、ブリッジ、テンプルを独立したパーツで構成し、全モデルで共通パーツを採用することで、無駄な在庫を抱えない柔軟な生産体制を実現。さらに、レンズのみを交換することで既存モデルをアップデートできるため、新たな金型や大規模な設計変更を必要とせず、小ロットかつ短期間での生産が可能に。また、破損や経年劣化の際も必要なパーツだけを交換しながら使い続けられるなど、高いメンテナンス性も特徴的です。レンズシェイプやカラーを更新しながら長く愛用できる仕組みによって、“買い替える”のではなく、“更新しながら使い続ける”という思想を体現しています」。(フリーランスPR/安田香織)

【2】服づくりから考える、人と社会をつなぐ責任ある循環

受け継がれる技術や文化、人と社会との繋がりまで見据えた服づくりが広がっている。ファッションが生み出す循環は想像以上に豊かで、社会との関わりを育みながらも、着る楽しさやときめきを大切にしている。そんな新しい価値観を体現するブランドが描く、これからのものづくりとは。

リブ ノブヒコ(RIV NOBUHIKO)

Courtesy of RIV NOBUHIKO

小浜伸彦とリバー・ジャンが手掛けるリブ ノブヒコ(RIV NOBUHIKO)。“Wild Luxury : Practical Couture”をコンセプトに、ハンドワークを多用したクチュールを展開。子育てや介護、退職などで新たなキャリアを模索する人々に、服づくりの技術と就労の機会を提供し、職人として活躍できる機会を提供する。コレクションの多くの服やアクセサリーは職人たちの手によって制作されており、伝統的なラグジュアリー ファッションの技術を活かしながら、独自のメソッドとコミュニティを育てながら独創的、かつ丁寧な服づくりを行っている。

Courtesy of RIV NOBUHIKO

「フランスのメゾンで経験を積んだデザイナーデュオによるブランドで、日常着をベースに、ちょっとした装飾で着る人の気分を豊かにするデザインを展開しています。クリエイションを支えているのは、日本各地と韓国に点在する在宅のスタッフたち。育児や介護などでキャリアを中断せざるを得なかった人々を採用し、メゾンの工房機能を“分散型"で構築するというユニークな生産体制を実現。服づくりが人と社会をつなぎ直す装置になっているという意味で、もう一つのサステナビリティのかたちを見せてくれています」(ファッションジャーナリスト、『WWDJAPAN』サステナビリティ・ディレクター/向千鶴)

「サステナブルという言葉は、機能や仕組みに注目されることが多いですが、リブ ノブヒコはまず純粋に服として美しく、“特別な一着として着続けたい”と思わせてくれる力があると感じています。その上で、手仕事による表現や既存の服への新たなアプローチによって、ファッションの楽しさと持続可能性を両立しているように思います」。(スタイリスト/辻ゆず夏)

ゴールドウイン(GOLDWIN)

リサイクル糸を使用したワッフルライトロングスリーブフーディー ¥16,500 <strong>GOLDWIN</strong> Courtesy of Goldwin

70年以上培ってきた技術と知見を生かし、アウトドアから日常まで寄り添うゴールドウイン。“人と自然の可能性をひろげる”というパーパスのもと、さまざまなライフスタイルにフィットするアイテムを提案。その思想を表現したビジュアルブック『A STUDY OF THE RHYTHM OF NATURE』は、自然のリズムや人とのつながりに着目した一冊に仕上がっている。そんなゴールドウインのものづくりを日常で感じるなら、まずは定番人気のワッフルライトロングスリーブフーディーからトライしたい。優れたキックバック性による快適な着心地が魅力で、フードを被れば紫外線対策としてはもちろん、肌寒い季節には防寒性も発揮する。また、青山では“Goldwin Repair Club”を定期開催し、セルフリペアを原則に縫製や圧着、染め直しなどを自らの手で楽しめる場所を提案。

ビジュアルブック『A STUDY OF THE RHYTHEM OF NATURE』より。 Courtesy of Goldwin

「ゴールドウインは、ファッション産業が抱える社会課題を問い直すイベントを定期的に開催しています。人と自然の関係を再考する800冊を揃えた6日間限定の書店イベント『Nature Observation Bookstore』では、自然・環境・人間・遊びの可能性を探りながら、開かれた対話の場を提案。ものづくりだけにとどまらず、日本を代表するアパレル企業が、自らの産業が及ぼす影響と真伨に向き合う姿勢を示していることは、高く評価できると思います」。(フリーランスPR/安田香織)

キッズワールドワイド(KIDS WORLDWIDE)

「RIVER FUND NY」のコミュニティグループの子どもたちが描いた絵をプリントしたロングTシャツ ¥16,2300 <strong>Kids Worldwide</strong> Courtesy of Kids Worldwide

ファッションを通じて子どもたちの創造性を育み、教育支援を行うことを目的に設立された社会貢献型ファッションプロジェクト。ワークショップで制作したアートワークやメッセージを実際のプロダクトに落とし込み、その豊かな表現力を発信している。ブランドのシグネチャーであるカラフルでポジティブなグラフィックには、子どもたちが描いたアートや、「Change The World」、「The World Is Ours」といった希望をテーマにしたメッセージを採用し、プレイフルな世界感をストリートウェアで表現。

Courtesy of Kids Worldwide

「キッズワールドワイドは“未来を担う子どもたちへの投資”という視点から持続可能性を捉えているところに魅力を感じます。子どもたちとに制作したアートワークをアイテムに落とし込み、その収益をコミュニティへ還元する仕組みは、ファッションが社会とどのように繋がれるかを示しているように思います。環境面だけでなく、人や文化、教育を含めた広い意味でのサステナブルを実践。わたしの考える未来と共感する部分があります」。(スタイリスト/辻ゆず夏)

【3】素材とクラフトが織りなす新たな創造性

素材開発から循環型ものづくり、クラフト技術の継承、B Corp認証まで。ファッション業界におけるサステナビリティの定義は、かつてないほど広がりを見せている。環境配慮を共通項としながらも、その実践方法や価値観はブランドによってさまざま。多様なアプローチのなかにこそ、ブランドが社会とどう向き合おうとしているのかが表れている。

シーエフシーエル(CFCL)

CFCL 2026-27年秋冬コレクションより。 Launchmetrics.com/spotlight

デザイナーの高橋悠介が2020年に設立したブランド。3Dコンピューター・ニッティング技術を核に、現代生活に寄り添う衣服を提案している。2026年には、ニットウエアの研究・開発から企画、生産までを一貫して担う自社工場「CFCL Knitting Factory」を埼玉県草加市に設立。コレクションブランドが所有するホールガーメント主体のニット工場として世界最大規模を目指し、クリエイションと事業、そしてニット産業の持続可能性を追求。シグネチャーの「POTTERY」シリーズは、再生ポリエステルによるドラマティックなフォルムと、快適なストレッチ性を兼ね備え、ブランドを象徴するアイテムとして人気を集めている。

「POTTERY」シリーズのドレス ¥69,300<strong> CFCL</strong> Courtesy of CFCL

「リサイクルポリエステルの使用や無縫製ニットといった素材・製造方法はもちろん、従業員の働きやすさなど、会社経営自体がサステナビリティを前提としている。2022年には、日本のアパレルブランドとして初めて国際認証「B Corp」を取得。シンプルだが華のあるデザインは、設立6年目にして日本のみならず世界から高い評価を得ている。2025年には回収・再販プログラム「NEXT LOOP」を始めるなど、”服を売った後の出口"まで考える取り組みにも積極的で、まさに次世代をリードする存在だと思う」。(ファッションジャーナリスト、『WWDJAPAN』サステナ ビリティ・ディレクター/向千鶴)

ボーディ(BODE)

デッドストックの生地とリボンをリメイクして作られた一点もののブラトップ ¥97,900<strong> BODE </strong> TOM SCANLAN

アンティークテキスタイルを再利用した唯一無二の服作りで注目を集める、ニューヨーク発のブランド。ローカル生産とハンドメイドにこだわり、一着一着を熟練したテイラーが丁寧に仕立てているのが特徴。こうした生産背景には、失われつつある職人技術の継承に加え、サンプル修正への迅速な対応や輸送コストの削減にもつながっている。CFDAの「エマージング・デザイナー・オブ・ザ・イヤー」受賞を機に世界的な評価を高め、クラフトマンシップとサステナビリティを体現するブランドとして存在感を放っている。

1920年代のビーズを用いた刺しゅうをあしらったドレス ¥410,300<strong> BODE</strong> TOM SCANLAN

「アンティークテキスタイルやヴィンテージ素材を活用し、その背景にある物語まで含めて服として表現している点が印象的。単に素材を再利用するだけでなく、継承の危機にある職人技や文化的価値を現代のファッションとして再解釈し、次の世代へと受け継いでいるところにも魅力を感じます。服を消費の対象としてではなく、歴史や記憶をつなぐ媒体として捉える姿勢から、サステナブルの新たな可能性を感じさせられます」。(スタイリスト/辻ゆず夏)

セッチュウ(SETCHU)

セッチュウ 2026-27年秋冬コレクションより。 Courtesy of SETCHU

東洋と西洋の美意識を融合し、機能性と普遍性を兼ね備えたデザインを提案するセッチュウ。日本の「もったいない」の精神を背景にクラフトマンシップを重視し、素材選びから生産工程まで無駄を抑えた長く愛用できるものづくりを追求している。2026年秋冬コレクションでは、折り紙の技法から着想を得たデザインを展開。山折りや谷折りが生み出す立体感を取り入れ、ジャケットやドレス、コートを彫刻作品のような構築的シルエットへと昇華させた。

「イタリアを拠点に活動する日本人デザイナーによるブランドで、欧州の厳しい法規制をクリアしながらラグジュアリーなものづくりを実現。印象的なのはサステナビリティを過度に打ち出すのではなく、それを日々の判断基準として当たり前に実践していること。“価格や品質に大きな差がなければ、よりサステナブルな生地を選ぶ”、“オリジナルで生産したものは責任を持って使い切る”といった基本姿勢から、誠実なものづくりへの考え方が伝わってきます」。(ファッション ジャーナリスト、『WWDJAPAN』サステナビリティ・ディレクター/向千鶴)

セシリエ・テレ(CECILIE TELLE)

Courtesy of Cecilie Telle

ノルウェー出身のデザイナー、セシリエ・テレによるブランド。天然ウールを用いた手仕事を軸に、タイムレスなアイテムを展開している。シグネチャーであるフェルトウールのハンドメイドバッグは、やわらかなフォルムと豊かな素材感が魅力。一点一点を丁寧に仕立て、長く愛用できるものづくりを追求しながら、伝統技術やクラフト文化を未来へつなぐサステナブルな姿勢を大切にしている。

すべて手作業で作られているフェルトバッグ Courtesy of Cecilie Telle

「大量生産ではなく、一つひとつの手仕事から生まれる温かさを大切にしているブランドで、伝統的なニットやフェルトの技術を現代的なデザインへ落とし込みながら、長く使い続けられるものづくりを行っています。サステナビリティは新しい素材や仕組みだけでなく、“丁寧につくられたものを長く愛用すること”からも生まれると感じており、手仕事の価値や技術継承を未来へつなぐ姿勢に魅力を感じます」。(スタイリスト/辻ゆず夏)

フィキ(FICHI)

Courtesy of FICHI

ハンニバル・レンブックとマルグレーテ・ヘイによって2023年にコペンハーゲンで設立。遊び心を添えたボクサーパンツを原点に、長く愛用できる日常着を提案している。ポルトガルを主な生産拠点とし、厳選素材と職人技による責任あるものづくりを実践。生産から包装まで環境への配慮を徹底し、製品は再利用可能なファブリックバッグで提供。プラスチック使用の削減にも取り組み、流行に左右されないタイムレスな価値を生み出している。

Courtesy of FICHI

「環境への配慮と洗練された美意識を両立する、今注目したいコペンハーゲン発のブランドです。ヨーロッパ各地のメーカーと協業し、リサイクル繊維やデッドストック生地、オーガニック素材などを採用。サステナビリティをブランドの根幹に据えたものづくりを行っています。色彩やテクスチャーへの繊細な感性と、地中海のリラックスしたムードから着想を得たデザインは、遊び心あふれる大人のエレガンスを感じさせます」。(ロンハーマン ウィメンズ・ディレクター/ 根岸由香里)

アズール(AZUL)

Courtesy of AZUL

アズールはリサ・ファヴローとリサ・ゲデルドルによって2019年にマルセイユで設立。植物染めとプリーツ加工を用いた独創的なテキスタイルを特徴とする。赤いドレスには、オーガニック栽培されたマダー(茜)の根を天然染料として使用し、植物由来ならではのニュアンスカラーが際立つ。マダーとは古くからシルクやコットンを染めるために用いられてきた植物で、収穫までに約2年を要し、繊細な根は一つひとつ手作業で掘り起こされる。こうした伝統的な天然染料と南仏の職人技を融合させることで、美しいシルエットと独自のテキスタイルを生み出している。

Courtesy of AZUL

「素材と向き合う丁寧なものづくりはもちろん、地域に根差した職人や生産者との協業を通じて、伝統技術を現代の感性でアップデートしている点に惹かれます。サステナビリティというと環境負荷の軽減に目が向きがちですが、その土地に根付く文化や技術を未来へ継承していくことも重要な要素のひとつ。アズールのものづくりからは、地域文化への敬意とクラフトマンシップの豊かさが感じられます」。(ロンハーマン ウィメンズ・ディレクター/根岸由香里)

【4】環境への配慮から生まれる、まだ見ぬファッションの楽しさ

ヒカリ ハヤシ(HIKARI HAYASHI)

Courtesy of Hikari Hayashi

昭和女子大学ファッションデザインマネジメントコース卒業後、ファッションスクール「ここの がっこう」で学ぶ。デザイナー育成プログラム「ファッション フロンティア プログラム2025」でグランプリを受賞。自身の制作では、既存のサイズや価値観に身体を合わせることへの違和感を起点に、子ども服や既存衣料を解体・再構築し、「誰の身体にも属さない服」の可能性を探求している。左のドレスは、編み地を手作業で分解する独自の手法「解す(ほぐす)」による作品で、柔らかな肌触りと独特の質感が特徴。右の最新作では、布を切断せず、布本来の構造を変化させることで衣服へと変換する試みに挑戦した。

Courtesy of Hikari Hayashi

「クリエイティビティとソーシャルレスポンシビリティを高いレベルで両立できるデザイナーです。服が大量に生産・消費される現状への違和感を自身のクリエイションに落とし込み、古いものと新しいもの、さらに独自の技法を組み合わせながら、美しい服づくりを実践しています。自身のクリエイションを軸に、デザイナーズブランドとのコラボレーションなど、さまざまな形で活動の幅を広げており、今後の活躍がとても楽しみです」。(一般社団法人unisteps共同代表理事/鎌田安里紗)

ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)

ユイマ ナカザト 2027-28年秋冬オートクチュールコレクションより。 Gianluca Carraro

オートクチュールの職人技と最先端テクノロジー、サステナビリティを融合する革新的なブランド。3Dプリンティングやアップサイクル素材、日本の伝統技術などを積極的に取り入れながら、環境問題や大量生産、大量消費社会への問いを投げかけたクリエーションを展開している。パリ・オートクチュール・ウィークの公式カレンダーで発表しており、「未来のラグジュアリー」を体現する存在として世界的な注目を集める。ブランドの哲学は「すべての人に一点ものの衣服を」。独自のアプローチで、ファッションの新たな可能性を追求する。

ユイマ ナカザト 2027-28年秋冬オートクチュールコレクションより。 Gianluca Carraro

「ユイマ ナカザトは、プロダクトとしての服の美しさだけでなく、着る人との関係性や、服が持つ物語性に着目しながら、素材や設計のあり方まで視野に入れたクリエーションを行っています。生産背景に配慮して作られた服であっても、着る人が愛着を持てなければ、けっきょく長く残り続けることはできない。人と服、そして服と社会との関係性の双方を見つめながら服づくりを行う姿勢に大きな魅力を感じます。また、Face to FaceやHarmonizeといった、オーダーメイドやセミオーダーメイドで参加できるアップサイクルサービスも実施しており、着る人が制作プロセスに関わることで服への愛着を育み、人と服との豊かな関係性を提案している点に強く共感しました」。(一般社団法人unisteps共同代表理事/鎌田安里紗)

ベルナデット(BERNADETTE)

Courtesy of Bernadette

母娘であるベルナデット・ド・ゲイターとシャーロット・ド・ゲイターが手がける、アントワープ発のファッションブランド。愛らしいボタニカルプリントや豊かな色使い、女性らしさを引き立てるエレガントなシルエットをシグネチャーとし、衣類やアクセサリー、ホームウェアまで幅広く展開する。2026年秋冬コレクションは、ブランド初のショートフィルム『The Hostess』とともに発表。アートや建築、ファッションを愛する女性たちの日常に着想を得ながら、世代を超えて受け継がれるタイムレスな美しさを表現した。

カーディガン BERNADETTE Hearst Owned

「ベルナデットは『100%サステナブル』を掲げるのではなく、今できる責任ある選択を 一つひとつ積み重ねる姿勢を大切にしているブランドです。トレンドに左右されないタイムレスなデザインやセールの抑制によって、服を長く愛用する価値を提案。適正な生産量の管理、余剰生地のアップサイクル、環境に配慮した梱包など、廃棄を減らす取り組みも行っています。また、ヨーロッパを中心とした生産体制や、天然素材・環境配慮型素材の採用など、クリエイションの美しさと責任あるものづくりを両立しています」。(ロンハーマン ウィメンズ・ディレクター/根岸由香里)

「共感」からはじまるブランドとの新たな関係

多くのブランドがサステナビリティを重要なテーマとして掲げるなかで、共通しているのは、それを「証明するもの」ではなく、「心地よい選択の積み重ね」と捉える姿勢だ。それは機能やスペック、正しさを一方的に伝えるのではなく、自分らしく共感できるブランドとの心地よい関係性なのかもしれない。『サステナブル疲れ』という言葉も聞かれるようになった今だからこそ、自分らしく続けられる選択がこれまで以上に大切になっていく。では、これからの時代、ブランドと消費者との向き合い方はどのように変わっていくのだろうか。

ミッタン(MITTAN)は、アイテムに合わせた修繕、染色サービスを提供。ブランドページとは別に、リペア専門ページを設け、これまで修復してきたアイテムを紹介している。 Hearst Owned

「正直なところ、疲れるほどサステナブルに取り組んでいる消費者は、ごくわずかだと思う。“サステナブル疲れ”という言葉は、“本物かどうか”を見極め続けることへの疲れや、一部のグリーン ウォッシュへの嫌悪感から出てきているのではないでしょうか。サステナブルの究極は、“自分自身を大切に、丁寧に扱うこと”。これからは一人ひとりが、自分を大切にする過程で、心と体を豊かにしてくれるように、地球や他者を傷つけないものを選んでいくことが大事。そうなると思うし、そうなってほしい。他人の視点による豊かさ(ブランドやステータス志向)ではなく、“自分自身を起点とした豊かさ”。それに気づかせ、サポートし、導いてくれるブランドがこれから支持されていくのではないでしょうか」。(ファッションジャーナリスト、『WWDJAPAN』サステ ナビリティ・ディレクター/向千鶴)

「“環境に配慮した行動を取りたい”という利他的な意識よりも“自分が違和感のある行動を取りたくない”という自らの納得感を重視する傾向が主流であると感じます。“正しい選択をしよう”と伝えると、消費者を疲れさせてしまうと思いますが、“納得感のある選択をしよう”というメッセージには共感する人が多いのでは」。(一般社団法人unisteps共同代表理事、エシカルファッション プランナー/鎌田安里紗)

そのうえで実現を阻む構造的な課題として、クリエイションと持続可能性の両立を目指す現場には、どのような葛藤が存在するのだろうか。また、これからのファッション業界にとって、本当に必要な“豊かさ”とは何だろうか。

ユイマ ナカザトのデザイナー、中里唯馬はアフリカ・ケニアに渡り、世界中から衣類をゴミとして押し付けられた現実を目の当たりにした後の制作とデザインプロセスを追ったドキュメンタリー映画『燃えるドレスを紡いで』を制作。2026年3月に公開。 Hearst Owned

「衣服は、私たちが日々の社会生活を送るうえで欠かせない存在です。その服がどのようにつくられているのかを知り、背景への理解を深めることで、より納得感を持って身にまとうことができる。これまで見えていなかったところに感心を持つことが、服との関係をより豊かなものにしてくれるはず」。(一般社団法人unisteps共同代表理事/鎌田安里紗)

「ファッション産業のサプライチェーンは細かく、スパンも長いので、そのすべてを作り手であるデザイナーが把握するのはとても難しいのが現実。環境配慮型の素材は選択肢が少なく、価格も従来品より高くなりがち。表現したいものと、使える素材との間にギャップが生まれることもある。いずれの課題も、克服には産業全体の底上げが欠かせない。そして、産業を動かすのは消費者の声。「知りたい」「どうなっているの?」といった問いを、ブランドにどんどん投げかけてほしい。今、サステナビリティの観点からも注目されているデザイナーたちの多くは、このある種の制約をクリエイションの原動力としていることも付け加えておきたい」。(ファッションジャー ナリスト、『WWDJAPAN』サステナビリティ・ディレクター/向千鶴)

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