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3億8500万年前の「世界最古の琥珀」を発見

  • 2026.7.17
※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

「琥珀(こはく)」と聞くと、恐竜時代の昆虫が閉じ込められた、黄金色の宝石を思い浮かべるかもしれません。

しかし今回見つかった琥珀は、恐竜が登場するよりも約1億5000万年も前につくられたものでした。

中国北西部の石炭層から、約3億8500万年前の中期デボン紀に形成された微小な琥珀が発見されたのです。

これは化学的に琥珀だと確認された標本としては世界最古であり、これまでの記録を約6500万年も更新します。

しかも当時は、植物を盛んに食べる昆虫がまだ陸上生態系の主要な存在になっていない時代でした。

それでは、当時の植物は何のために樹脂を生産していたのでしょうか?

研究の詳細は、中国科学アカデミー(CAS)により、2026年7月15日付で科学雑誌『Science Advances』に掲載されています。

目次

  • 世界最古の琥珀を偶然に発見
  • 何のために樹脂を分泌していたのか?

世界最古の琥珀を偶然に発見

研究チームは、最初から琥珀を探していたわけではありません。

研究者たちは、中期デボン紀の植物と生息環境を調べるため、中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区にあるホジェルサイト層から石炭を採取していました。

ところが石炭に紫外線を当てたところ、一部に鮮やかな青色の蛍光を発する粒子が見つかります。

これは琥珀などの化石樹脂に見られる特徴の1つです。

そしてチームが約10キログラムの石炭を詳しく調べた結果、合計241個の微小な粒子が回収されました。

発見された琥珀の実際の画像がこちら

粒子の大きさは約0.1~1.5ミリメートルで、その多くは0.5ミリメートルにも満たないものでした。

宝飾品に使われる琥珀のような大きな塊ではなく、注意して探さなければ見落としてしまうほど小さな破片だったのです。

ただし、紫外線で光ったからといって、それだけで琥珀だと断定することはできません。

石炭には、樹脂に似た蛍光を示す別の有機物も含まれているからです。

そこでチームは、赤外線の吸収パターンを調べる赤外分光法や、含まれる有機化合物を特定するガスクロマトグラフィー質量分析法などを用いて、粒子の化学組成を詳しく分析。

その結果、粒子からは化石樹脂に特徴的な化学的性質が確認され、チームは「本物の琥珀である」と結論づけました。

琥珀そのものを直接年代測定したわけではありませんが、琥珀が含まれていた石炭層は、地質学的証拠や化石胞子の研究から約3億8500万年前に形成されたと分かっています。

これまで化学的に確認されていた最古の琥珀は、約3億2000万年前の石炭紀後期のものでした。

今回の発見により、確実な琥珀の歴史は約6500万年も古くなったのです。

何のために樹脂を分泌していたのか?

化学分析では、今回の琥珀にセスキテルペノイドやジテルペノイドなどの物質が含まれていることが分かりました。

その組成は、現生の針葉樹がつくる樹脂に広く似ていました。

ただし、これは3億8500万年前に現在の針葉樹が生えていたという意味ではありません。

当時は、針葉樹を含む種子植物が本格的に出現して多様化するよりも前の時代です。

今回の樹脂をつくったのは、種子をつくらない初期の維管束植物だったと考えられます。

周辺から見つかっている植物化石を踏まえると、樹木状の小葉植物や前裸子植物などが候補になりますが、樹脂の生産者を特定できる直接的な証拠はありません。

それでも、種子植物以前の植物が、現生の針葉樹型樹脂に似た複雑な化合物を生産できたことは重要です。

微小な琥珀の画像がこちら

樹脂は一般に、植物が負った傷を素早くふさぎ、菌類や微生物の侵入を防ぎ、植物を食べる動物を遠ざける働きを持ちます。

しかし中期デボン紀には、節足動物が維管束植物を大規模に食べていたことを示す証拠は、まだ限られています。

そのため、チームは、初期の樹脂が主に植物食昆虫への防御として生まれたのではなく、山火事や物理的な損傷で生じた傷をふさぎ、寄生性の菌類や微生物から植物を守るために役立っていた可能性を指摘しています。

もちろん、今回の琥珀だけから樹脂の用途を直接証明することはできません。

それでも樹脂生産能力は、木材、大きな葉、深い根などの進化と並んで、初期の維管束植物が過酷な陸上環境へ分布を広げるうえで重要な武器になった可能性があります。

今回発見された琥珀は、目を引く宝石のような姿ではなく、石炭の中に埋もれた顕微鏡サイズの粒子でした。

しかしその小さな粒子は、植物が少なくとも3億8500万年前には、複雑な化学物質を使って傷や外敵から身を守っていたことを示しています。

さらに古い時代の石炭や堆積物にも、まだ琥珀だと気づかれていない微小な樹脂が眠っているかもしれません。

「世界最古」の記録は、今後さらに塗り替えられる可能性があるのです。

参考文献

Behold, The World’s Oldest Amber – a Record of a World 385 Million Years Ago
https://www.sciencealert.com/worlds-oldest-amber-comes-from-a-world-150-million-years-before-dinosaurs

A new record holder for the world’s oldest amber discovered in China
https://phys.org/news/2026-07-holder-world-oldest-amber-china.html

元論文

The earliest amber from the Middle Devonian of China
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aeh1266

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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