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【ルームツアー】風土に寄り添ったチュニス郊外の暮らし

  • 2026.7.8
Nicolas Matheus

チュニジア・チュニスの近郊、モルナグの丘に立つ別荘を建築家のセンダ・ベン・ジャーファルが、伝統的な技法と自然の素材を用いてモダンに再解釈。風土に応じたヴァナキュラー建築の理想形を提示した。『エル・デコ』6月号より。

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パティオで食後酒を楽しむ昼下がり

チュニジアの首都チュニスから車で約30分。モルナグの丘陵地帯に広がるオリーブやアーモンドの畑に囲まれた3.5ヘクタールの敷地にこの屋敷「ダール・ピシュ」は佇む。レッサス山とブクルニーヌ山に挟まれたこの地において、建築は風景に抗うことなく、むしろ同質化するように計画された。設計を手掛けたのはチュニジア人の建築家、センダ・ベン・ジャーファル。天然の素材と伝統的な施工技術をベースに、ヴァナキュラーな建築を現代的に再解釈したプロジェクトを主導した。

<写真>半屋外のダイニングは魅力的なパティオへと通じている。造作されたベンチの前に「ナマステ・ホーム・デザイン」のクロシェ編みのプフが並ぶ。ベンチに置かれたクッションの生地は「アテッザ」の“ヴィクトリアン”。テーブルの上のガラス器は、「ムーブル・サンク・エトワール」のアイテム。上階から鉢植えのサボテンがゲストを見下ろす。

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陽光を享受する半屋外のダイニング

施主であるソニアは、「簡潔さ、明快なライン、そしてこの土地への敬意を併せ持つ、彼のアプローチに惹かれました」と振り返る。室内の設計過程で重視されたのは「自然光の最大化」「ボリュームの精緻な構成」「明快な動線計画」の3点。建物は地形に寄り添うように配置され、中央の大きなパティオを核に、木とアシで覆われたテラス、庭、プールへと連続的に広がる構成をとる。

<写真>半屋外のダイニングを囲む壁には、鳥をモチーフにしたセラミックのウォールランプが連なる。竹やアシで仕立てたひさしの下にはダイニングテーブルが置かれ、「ラ・メゾン・デュ・ロタン」のアームチェアと「ハビビ・デコ」と「レ・ザフェール・エトランジェール」によるヤシ材のスツールが添えられている。緑のコンポートは「エル・ハヌート」。

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マテリアルがリズムを奏でる白いリビング

建築を特徴づけたのは、何より素材の扱い方である。壁は地域の石積みや“リカ・アルビ”と呼ばれる土と石灰をベースとした伝統的な左官仕上げが採用され、床には石灰系のワックスによる仕上げ“パステロン”が用いられている。こうしたローカルな技術の採用は、単なる意匠ではなく、気候に適応した合理的な選択でもあるのだ。

<写真>リビングの一角。正面の木炭画はヘラ・アンマールの作品。インテリアデザイナーのハレド・トゥルキは、リネンで仕立てたソファに、「ジナ」のクッションを合わせ、「ハビビ・デコ」と「レ・ザフェール・エトランジェール」の特注のアームチェア、「エリティス」のラグ“ホリデー”、ディゼーニョ&コー・レ・アトリエによるローテーブルを合わせた。

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クラフト感が漂う素朴に仕上げたダイニング

インテリアはデコレーターのカディジャ・ハレド・トゥルキが参画。ユネスコの無形文化遺産にも指定されているセジナの陶器やマクラメ、織物などのクラフトが随所に配された。ソニアは語る。「オリーブ材やトラバーチン、リネンや天然繊維などを組み合わせ、地元の職人による特注の家具を数多く取り入れました」

<写真>「ソニア・ケミール・スモン」のマクラメ編みのペンダントライトが圧倒的な存在感を放つダイニング。チェアの張り地は「カサマンス」の“ダル”と“メロディ”をセレクト。ハレド・トゥルキは、ケディジャ・ネッファティと協働し、「ハビビ・デコ」のためにチェアとテーブルウェアをデザインしている。花器はファトマ・トゥルキの作品。

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暖炉で仕切られた表情豊かなリビング

リビングは、石と漆し っくい喰でつくられた暖炉によって緩やかに分節。床に仕込まれた小さなステップによって、壁を設けることなく巧みにゾーニングされている。一方、レンガ造りのヴォールト天井と大開口が印象的なキッチンは、造作の収納や左官仕上げの照明によって、機能と意匠が静かに結びつけられている。

<写真>広いリビングは緩やかにつながる2つのラウンジ空間で構成されている。中央の石と漆喰で仕上げた暖炉は、彫刻家のジン・ディフェによるもの。タペストリーはチュニジアのテキスタイル作家、リマ・ブキールによる作品。2台のソファは共に「Kデコ」。モザイク天板を備えた大理石のサイドテーブルはイメン・ブーデンの作品。

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遥かな山並みを望むパーゴラ付きのテラス

屋外空間も、この家の大切な要素だ。オリーブの木陰に設けられたダイニングや、プールサイドのデイベッド、ユーカリの枝で組まれたパーゴラのあるテラスなど、外部は単なる付帯的な場所ではなく、生活の中心として位置づけられている。

<写真>主寝室前のテラス。木とユーカリの枝でつくられたパーゴラの下では美しい夕暮れが楽しめる。「コントワール・ナショナル・チュニジアン」のローテーブルに合わせたのは「ガーデン・スクエア」のチーク材とコード編みのチェア。旅先で見つけたクッションで彩りを添えた。テーブルの上のカラフェは「エル・ハヌート」、陶磁器のボウルは「ハビビ・デコ」のアイテム。

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ダイニングのあるテラスから青空とつながる水辺へ

特に庭は、日陰と水が味方となる貴重なオアシスとして機能し、気候と密接に結びついた暮らしを支えている。

<写真>ゼラニウムやオリーブの木々が風にそよぐプールの周囲は石のような色合いの滑らかなセメント仕上げ。リポリ・プランツがランドスケープを担当した庭の景観になじんでいる。鉄製フレームのデイベッドは「ハビビ・デコ」で製作。「ラ・ヴィランダ」のパレオや、ホームリネンブランドの「ハオミー」のクッションが心地よさを添える。

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造作のステージが静かな眠りへといざなう

家族や友人を迎えるための別荘として設計されたこの住まい。そのスケールと構成は小規模なリゾートのような開放的な特性を備えている。

<写真>ベッドは2段のステップを備えた造作のプラットフォームの上に設置した。正面にはマリー=ガブリエル・ジュヌヴォワによる作品が掛かっている。エクリュのスローは「オー・フィル・ドゥ・ラール」、チェック柄は「ザラホーム」。ヘッドボードには「ジナ」による石と貝をあしらった装飾が施されている。ペンダントライトは「ノマド」で選んだ。

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風景と素材、そして職人技が有機的に結びついた「ダール・ピシュ」は、土地に根ざした建築の理想的な在り方を示す一例といえるだろう。

<写真>1階のバスルームの1つは、床を掘り込んだかのような埋め込み形のバスタブを採用。コンクリートで成形した後に石灰をベースにしたワックスを用いる技法、パステロンで仕上げた。洗面台や床と同じ質感で製作されている。水回りの施工を担当したのは、左官仕上げを得意とする地元の工房、ディゼーニョ&コー・レ・アトリエ。

Realization:LAURENCE DOUGIER Photo:NICOLAS MATHEUS

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『エル・デコ』2026年6月号

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