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石油とサステナブルに付き合う。eriさんに学ぶ、クローゼットから始める“小さな革命”とは?

  • 2026.7.8
IG @e_r_i_e_r_i

ペットボトルから洋服まで、私たちの暮らしは石油に囲まれている。その事実を突きつけたホルムズ海峡の供給停止は、ファッションの未来を考え直すきっかけでもある。アクティビストでありデザイナーのeriさんに、石油製品とのしなやかな付き合い方、そしてクローゼットから始められる“小さな革命”を聞いた。

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eri(エリ)/1983年、NY生まれ東京育ち。デザイナー、アクティビスト。10代からファッションに携わり、現在は持続可能なものづくりや暮らしの価値観をSNS・実店舗から発信し、国内外で支持を集める。また、気候危機や政治などの社会課題に対し、市民が声をあげる場を作る「WE WANT OUR FUTURE」の運営にも携わりつつ、さまざまな市民運動アクションやデモを企画している。 Instagram: @e_r_i_e_r_i

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NurPhoto / Getty Images

私たちは、これほどまでに石油に頼っていた

ペットボトルやプラスチック製品といった生活用品の原料である石油は、ナイロンやポリエステルなどの衣類の原料でもあり、私たちのファッションライフにも密接した存在だ。

軽くて持ち運びやすいうえ、強度が高く、さまざまに形を変えられる安価で便利な資源として便利なだけに、世界中で重宝されている。その一方で、現在は地球温暖化や戦争といった、生命を揺るがす社会問題の原因となってしまっているという事実がある。

Majid Saeedi / Getty Images

今年4月18日以降、ホルムズ海峡が事実上の閉鎖になったことで石油の供給が枯渇したことから、私たちの生活がいかに石油製品の上に成り立っているのかを知った方も多いのではないだろうか。しかし、今回の石油問題から気付くべきことはそれだけではない、とアクティビストでありデザイナーのeriさんは警鐘を鳴らす。

「こういった奪い合いがいろんな場面で多発しているのを見ると、自分さえ良ければいい、という利己的な形に思考が変えられてしまっていると感じます。共存や共生といった、本来あるべき人間の営みや人間性までもが破壊されている。それに人間が自覚できていないことは、すごく怖いことだなと思っています」(eriさん/以下同)

picture alliance / Getty Images

ルールと意識は、世の中の“当たり前”を変えられる

サステナビリティを推進しているヨーロッパでは、温室効果ガスや汚染物質の排出低減につなげるために、何がどこで作られたかの透明性を明らかにするルールや、売れ残りの廃棄禁止といったさまざまな法改正が順次進められている。しかし、日本ではそういったシステム上の後れを取っている。環境改善のための個人や企業の努力に依存するような形のままでは、その問題の大きさに人々は落胆してしまいかねない。

「90年代までは飛行機や屋内での喫煙が当たり前だったけれど、いつの間にか分煙が当然になっていたように、社会のルールと人の努力は、世の中の当たり前をいとも簡単に変えることができて、それを私たちはすでに知っているんです。あとは、考え続け、行動し続けることが大切なのです」

「責任」よりも「かわいい」から選べる時代へ

eriさんinstagramより。植物で作られたヨガマットホルダーがインテリアに心地良くなじんでいる。 IG @e_r_i_e_r_i

昨今、リサイクル素材が当たり前の選択肢になりつつある。最も新しく素晴らしい変化は、責任からではなく、かわいさや高揚感を最優先した上で選べるアイテムがかなり増えてきていること。これからの未来にとって、今すでにある素材を循環させていくための技術や取り組み、人々の意識には、人間らしい創造性があり、未来への可能性を感じさせてくれる。

「“かわいい!”が先に来るようになってきたことは、すごく大きな変化だと思っています。拙著『暮らしの中の小さな革命』(光文社)でも紹介しているのですが、私自身もいろいろとお気に入りのすてきなアイテムを見つけて愛用しています」

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eriさんお気に入り、心ときめくリサイクル素材アイテム3選


【1】「プラスティシティ(PLASTICITY)」のビニール傘をアップサイクルしたバッグ

ビニール傘のビニール部分を何層にも重ねて圧着することで、独自の素材に生まれ変わらせたアップサイクルブランド「プラスティシティ(PLASTICITY)」のバッグ。 IG @e_r_i_e_r_i

「毎年8000万本廃棄されるというビニール傘は、日本独特の文化。問題提起をしながら光を当て、さらに石油製品の便利な特性を生かしたデザイン性が素晴らしい。話のきっかけにもなるので、持っていることが自信にもつながります」

【2】「オッフェン(Öffen)」のリサイクル素材を使用したフラットシューズ

リサイクル素材を使用した「オッフェン(Öffen)」のシューズは、本体もインソールも丸洗いできるのだそう。 IG @e_r_i_e_r_i

「ペットボトルのリサイクル糸でアッパー部分が作られている靴。ユニセックスなデザインが多いのもうれしいですが、リペアサービスやアフターケアも充実しています。靴ってどうしても消耗品になってしまうので、長く愛せる選択肢として『オッフェン(Öffen)』があることがとても頼もしいです」

【3】「スピード・ブレス(Speedo breath)」のスイムウェア

eriさんも注目する「スピード・ブレス(Speedo breath)」は、リゾートからタウンまで幅広く活躍する大人のためのリラックススイムウェアカテゴリ。 Hearst Owned

「リサイクル素材のスイムウェア。タウンウェアとしても着られるデザインなのが助かります。一見、水着とわからないし、ロゴが派手に入っているわけでもない。最近買って良かったと思えるブランドのひとつです」

着心地だけで選んで大丈夫? 循環できる生地の条件

Pete Starman / Getty Images

リサイクル素材が主流になる一方で、混紡素材はリサイクル自体が難しいことも課題だ。

「例えばコットン50%、ポリエステル50%というのはよくある混率ですが、混ざっていると、実はコットンにもポリエステルにも戻らないんですよね。これには、製造・販売する企業が販売後にまで責任感を持つことや、単一素材のメリットをしっかり考えることが解決につながると思います」

しかし、着心地やデザイン性を優先するとき、素材の選択肢が狭まることはデザイナーにとってリスクにもなりかねない。

「天然素材と合成繊維を掛け合わせることで、私たちが服に求める作用が大きくなることをデザイナーは知っているし、動きやデザイン性を考えたときに素材を組み合わせたくなるのはわかるんです。でも、単一素材にするとこんなことができるよ、もしくはそうじゃないとこういう問題があるんだな、ということの認知の促進も同時に行われてほしいなとは思います」

ullstein bild / Getty Images

環境負荷の高いファッション業界と呼ばれて久しいが、作り手から生活者まで一人ひとりが考えることが、現在の業界全体のミッションであることは揺るぎない事実だ。加速し続けてきた社会の中で、本来の人間らしさや豊かさを取り戻し、時代とともに、地球と共存していくために私たちにできることは、まず、身の回りの意識と行動を変えていくこと。eriさんのクローゼットを占める洋服がどのように選ばれ、ケアされているのかのヒントを得ながら、石油に頼らないための選択について考えていきたい。

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eriさんが実践する、石油製品と上手に付き合う6つの方法

eriさんの冬の定番アウターであるライダースジャケットは、お父さまから譲り受けたもの。 IG @e_r_i_e_r_i

【1】「長く着られる」自分のものさしを手に入れる

合成繊維・天然繊維に限らず最も大切なことは、自分が何が好きで、何が自分に合うのかを自覚すること。長く着ることを前提とするために、必ず持っておくべきものさしであり、自分のスタイルを持つという側面からもとても重要な作業だ。

【2】欲しいものはセカンドハンドで似たモノを探す

「欲しい」と思うものを新品で見つけたときに、フリマアプリやリサイクルショップを活用して、粘り強く似たアイテムを探すこと。より自分に合ったものを見つけることで、自己肯定感を得られたり、安価で環境負荷を下げられたりすることが多い。シングルユースを避けるための習慣としてぜひ取り入れたい。

12~3年着ているという「ジェイクルー(J.CREW)」の90’sのウール100%ニット。 IG @e_r_i_e_r_i

【3】必ずタグをチェックし、素材をパトロール

好きな服を見つけたら、すぐに品質表示をチェック。自らがシングルユースを避けるために、リサイクル素材を選んだり、自分が着たあとに、確実にリサイクルができるように、コットン100%、ウール100%、リサイクルポリエステル100%など、単一素材でできているものをチョイスすること。確実に次につなげられるようにお買い物をする。服が何からできているのかを知ることは面白いし、何が好きなのかを知ることは、自分を知ることにもつながる。

【4】素材選びの優先順位を持つ

選ぶべきは、合成繊維よりも天然繊維。天然繊維の中でも植物性を優先し、生育過程における環境負荷が低いものを選ぶ。例えばコットンとリネン(亜麻)なら、農薬を使わずに育てられ、水の使用量も少ないリネンを優先的に。動物性のウールは、ミュールジングなど生育環境がわかる認証付きのものをチョイス。合成繊維の場合は単一素材を優先する。eriさんは、キュプラやレーヨンなどは薬剤の有害性が懸念され、またリサイクル率も低いといったことから避けているそう。

eriさんもお気に入りの「フェール・シュヴァル」の衣類の染み抜き用マルセイユソープ。こちらは100%天然由来な上、同ブランドのすべての洗剤製品が99%以上自然由来成分を使用し、一部の製品はエコサートの認証を受けながらも、プロがお掃除したような効果を実感できる。 IG @feracheval.japan

【5】洗濯スキルを上げる

洗濯による環境負荷を避けるために、合成繊維のものを洗うときは、マイクロプラスチックを流出させない洗濯ネットを使用する。また、石油を使うドライクリーニングに頼らなくてもいいように、さまざまなケアを工夫している。ウールのコートなどは、洋服ブラシでブラッシングするだけで驚くほどきれいになる。毛玉取りもブラシがおすすめ。あまり着用しなかったものは、スチームを当てて除菌・消臭するだけでケアできる。部分洗いには、「フェール・シュヴァル」の固形せっけんがおすすめ。海外の液体洗剤は、輸送時の環境コストが高いため、シート状の洗剤もよく購入しているそう。

【6】責任を持って引き受け、責任を持って手放す

自分が買うものには責任が伴っているという自覚を持ち、そのものを引き受けるという気概で購入し、手放すときまでしっかりと責任を持つこと。それは、これからのファッションラバーが持つべき基本の価値観だ。回収した衣類を仕分け・洗浄・リサイクルする「PASSTO」というサービスでは、回収ボックスだけでなく、自宅に回収に来てもらうこともできる。衣類だけでなく、おもちゃなど多様なグッズを受け付けている。

その値段は、“本当の値段”ですか?

土を触る陶芸の時間が大事だというeriさん。写真は最近作った小さなつぼ。 IG @e_r_i_e_r_i

デザイナーやアクティビストとして精力的に活動を続けるeriさんにとって、地方や海外を旅して伝統的なものづくりの手法を学ぶことも、ライフワークのひとつだ。地球上できちんと人間らしく生きていくための整合性のとれた生き方は何なのか。その答えを模索するうちに、江戸や縄文といった昔の日本人が行っていた暮らしや営みにたどりついた。それは石油製品を取り巻く現代社会のスピードとは真逆であり、そういった文化や芸術に触れると、なぜそれを選択すべきなのかの理由がクリアになるという。

「わたしは、新しい技術やカッティングエッジなものにも関心があるし、人間の英知は素晴らしいなと思っています。それと同時に、江戸時代や縄文時代には、無駄がなく、自然や環境を壊さない暮らしがあり、知恵と技術があった。当時の人間の営みに、今の社会へのヒントがあるんじゃないかなと思っているんです。

例えばコットンという繊維ひとつとっても、行われていることは農業なんです。種が発芽するまで見守って、芽が出て、手塩にかけられて花になる。やっとできた植物を丁寧に収穫して、長い時間をかけて糸になり、織られて布になって、そこから縫製され服になる。本当に多くの人の時間と労力がかけられているし、多くの資源が消費されています。

『ザ・トゥルー・コスト』という映画にあるように、石油製品であろうと天然繊維であろうと、その生産背景には環境汚染や人権侵害だったりと、さまざまな問題をはらんでいます。作られた服がすごく安く売られていることの背景には、みんなが安く買って捨てやすい状況を作っているということでもあり、さらにその捨てた先にまた環境の問題があり、人権の問題がある。

その背景にあること全部を含めたら、その安く買っている値段って本当に正しい値段ですか? という問いかけに尽きるなと思っていて。私たちは今何を着ているのか、この背景に何があるのかということを、もっと知らなきゃいけないですよね」

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eriさん新著『暮らしの中の小さな革命』(光文社)もチェック!

古着店を営む両親のもとで、日常的に審美眼を育んできたeriさん。世界に触れ、アクティビストとしての使命に向き合いながら、いち生活者として本質的な豊かさを追求するなかで出合い、選び抜いてきた美しいモノや在り方を紹介する一冊。モノを通して文化や作り手とつながる彼女の視座が、偏った価値観への危機感を静かに促してくれる。


text: YUKA SONE SATO

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