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「朗読にふれて、絵と言葉の世界が一つにつながった」【求龍堂 制作部 深谷路子さん インタビュー】

  • 2026.7.1

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年7月号からの転載です。

◎今月の編集者 求龍堂 制作部 深谷路子さん

長田さんとの出会いは弊社刊行の美術書『大和し美し』を気に入ってくださったことがきっかけでした。ある日、突然ご本人からメールがきたんです。お会いすると、とにかくバイタリティに溢れた人でした。話好きで、人を引き込む力があり、なにより絵の力が圧倒的。一方で、物語には少し伝わりづらいところもあったんです。だから最初は「この絵の魅力がきちんと伝わる本を作りましょう」というところから始まりました。

ところが、その後コロナ禍で企画は一時中断し、1年以上間が空きました。そして久しぶりに再会した時「すごいものができたんです」と大量の原稿を持ってこられて。もともと32ページの絵本だったはずが、まったく別のものになっていて、正直驚きました(笑)。

大きかったのは、外部編集として入ってくださった盆子原明美さんの存在です。「本当は言いたいことがたくさんあるのに、絵本だからと削りすぎているのでは? 思いきって長編を書いてみたら」と長田さんへ助言されたそうで、それをきっかけに彼の中で何かが一気に弾けたのでしょうか。書き上げた原稿をその場で最後まで朗読してくれたのですが、これがとっても面白かった。絵と言葉の世界が一つにつながった気がしました。

そこからデザイナーの岩永和也さんが入り、文字組みやレイアウトも含めて作品はさらに膨らみました。最終的には420ページの大作に。原価や営業面ではもちろん大変でしたが、どこも落とせないピースだったんです。そこで部数を絞り、価格を上げ、限られた書店やイベントを軸にして届ける形を提案しました。長田さんのチームが短い映像作品も作ったので、朗読や映像も含め、本そのものを "体験”として届けていきたいです。

この仕事をとおして感じたのは、編集とは「見守る」なのかもしれないということ。作家の希望を聞きながら、現実的に本として成立する場所まで伴走する。その結果、絵本という枠を超えた一冊になったように思えます。

ふかや・みちこ●1995年求龍堂入社。美術部、編集部を経て制作部へ。『東山魁夷全作品集』、『田中一村 新たなる全貌』展図録等の美術書を担当する傍ら翻訳文芸書も担当、『十二番目の天使』や『青空のむこう』等がベストセラーとなる。

『影のような者たち』

(長田真作/求龍堂) 5280円(税込)

絵本作家・長田真作が9年の歳月をかけて描き上げた、420ページの長編絵本。“影のような者たち”が彷徨う世界をとおして孤独や痛み、生の衝動を濃密な言葉と絵で紡ぐ。読む者を深い夢の底へ引きずり込む一冊。

気になるポイント

読者に媚びないスタイルが放つ魅力

420ページもある“絵本”で、漢字だらけでルビもない。絵本コーナーで異彩を放っていて、だけどその異彩さに惹きつけられもした。

読者に対する媚がなく、作家の並々ならぬ熱量で成立しているかのような本だ。著者は海外で支持されているそうだが、それもうなずける。

商業性や読みやすさより先に、作家の頭の中そのものを差しだそうとしていて、そのパワーに圧倒される。

一見“売りづらそうな本”を、それでも出そうとした編集者は何を見て、何を信じたのだろう。

さどしま・ようへい●1979年生まれ。講談社勤務を経て、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。三田紀房、安野モヨコ、小山宙哉ら著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行う。

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