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みんなが書いてくれた誕生日の冊子で、彼のページだけ白紙に近かった話

  • 2026.7.1
ハウコレ

テーブルの上で表紙を開くと、見開きいっぱいに手書きの文字が並んでいました。誕生日にと、まわりの人たちが寄せてくれた言葉を、一冊にまとめたものです。色とりどりのペンの跡を、私は一枚ずつたどっていきました。ただ、最後の一枚をめくったとき、その流れがふっと途切れたのです。

旅行のことも、失敗談も、書いてあった

学生時代の友人は、二人で行った旅行の写真の話まで書き込んでいました。職場の先輩のページには、私が新人だったころの失敗が、笑い話として並んでいます。妹はわざわざ便箋を貼りつけて、字が小さくなるほど書いてくれていました。一枚めくるごとに、自分が忘れていた気持ちに触れるようで、表紙を持つ指に力が入りました。

彼のところだけ、白いままだった

最後に残っていたのが、付き合って三年になる彼のページでした。めくると、広い余白の真ん中に、一行だけ。「言葉にするの、苦手でごめん」。それだけでした。さっきまでの賑やかなページのあとでは、その白さがやけに目立ちました。みんなはこんなにも私のことを書いてくれたのに、いちばん近くにいる人は、一行で済ませたのです。

軽いふりをして、聞いてみた

彼と二人になったとき、私はできるだけ軽い調子で聞きました。ページを開いて見せながら、「これだけ?」と。彼は少し目をそらして、「そういうの、得意じゃないから」と答えました。それ以上のやりとりは、ありませんでした。責めたかったわけではないのに、うまく笑えませんでした。冊子を閉じて、私はその一行のことを、しばらく考えないようにしていました。

そして...

あれから、冊子は本棚の見えるところに置いています。みんなの言葉を読み返すたびに、最後の一枚の白さも一緒に目に入ります。気持ちが薄くなったのだろうか。それとも、私が多くを求めすぎているのか。答えの出ないまま、私はまだあのページを開いては閉じています。

(30代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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