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「これ、掛けなおしておくね」そう言って別れた俺が、コートのポケットにこっそり忍ばせた最後の言葉

  • 2026.6.29
ハウコレ

本当の理由は、最後まで口にできませんでした。掛け直したコートのポケットに、伝えられなかった言葉をひとつだけ残したのです。

彼女に送ったメッセージは、たったひとことでした。「今夜、少し話せるかな」送信ボタンを押すまでに、何度も指を止めました。決めたはずなのに、まだ迷っている自分がいました。

別れを決めたのは、俺からだった

彼女が来春から別の街で働くと聞いたとき、嬉しさより先に、自分の情けなさが顔を出しました。離れた場所で彼女を繋ぎ止める自信が、俺にはなかったのです。それでも、俺に気をつかって話を進められずにいる彼女を見て、それだけは避けたいと思いました。だから「もう、別れよう」と先に口にしたのは、俺のほうでした。

本当の理由は、言えなかった

理由を聞かれても、俺は本当のことを言えませんでした。代わりに「向こうで、頑張ってきてほしい」とだけ伝えました。応援している、その気持ちに嘘はありません。ただ、引き止めたい本音まで一緒に飲み込んだことは、今も彼女に申し訳なく思っています。

コートだけは、掛け直したかった

あの日、コートを掛けなおしながら、ポケットに小さく折った紙を滑り込ませました。本当のことは言えないぶん、せめて書いた言葉だけは渡したかったのです。口にできたのは「これ、掛けなおしておくね」、ただそれだけでした。

そして...

あの紙に書いたのは「向こうで、無理だけはしないで」という、ありふれた一文です。彼女が見つけたかどうかは、今も分かりません。それでも、コートのポケットだけは、俺が彼女のそばにいられる最後の場所だと思ったのです。届いていますように。別れを選んだ俺に言える言葉は、たぶんそれだけです。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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