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7月号表紙に登場!尾上椿さん・琴也さんが考える「和室のマナー」とは?

  • 2026.6.29
撮影=笹口悦民(シグノ)

若き表現者たちに受け継がれる美意識と所作

ここは東京・銀座にある日本舞踊の流派「尾上(おのえ)流」の座敷。床の間の前に座るのは、尾上流四代家元・三代目尾上菊之丞さんの長女である尾上椿さんと、長男の尾上琴也さん。芸名を許される「名取式」が行われ、大事なお客さまをお迎えする空間。「ここに居ると、自然と背筋が伸びます」とふたりは話す。 撮影=笹口悦民(シグノ)

光の加減で移ろいゆく畳の表情、静寂のなかに漂う清らかな空気。和室という空間には、日本人が古来大切にしてきた精神性が息づいています。その美しい空間に幼いころから親しみ、日常のなかで自然と所作を磨き上げてきたのが、長女で15歳の尾上椿さんと9歳の長男・尾上琴也さんです。日本舞踊・尾上流の四代家元である三代目尾上菊之丞さんを父にもち、自らも日本舞踊や歌舞伎の舞台に立つ若き表現者であるおふたりは、わずか2、3歳のころからお稽古場に足を踏み入れました。ご挨拶から始まり、立ち座りや扇子の扱いといった基本の作法を、一つひとつ体に染み込ませてきたといいます。

洋室での暮らしが中心となった現代において、和室には独特の緊張感とルールが存在します。
「和室はふだん過ごしている洋風の部屋とは違って、気をつけなければならない作法がいろいろあります。例えば、畳のへりを踏まないようにすることや、壁にもたれかからないこと、障子を破らないように気を配ることなど、和室のほうが使い方が難しいなと思います」と椿さん。

幼いころから和の空間に身を置くことで培われた知識は、意外な場面でも役立ったという椿さん。「学校の家庭科の授業で和室についてのテストがあったとき、お稽古で学んできたことが多くて、勉強しやすかったです。お友達は和室に馴染みがない人も多いので、知っていてよかったなと思いました」

大切な行事も楽器のお稽古も行う、馴染み深い部屋です──椿さん

撮影=笹口悦民(シグノ)

和室での作法を身につける過程では、身体的な修練も伴います。その代表ともいえるのが「正座」です。最初はほんの数分で足が痺れ、痛みに限界を感じていたというおふたりですが、長年のお稽古を経て、いまでは30分以上続く太鼓や鼓のお稽古でも、凛とした姿勢を崩すことはありません。

和室という空間そのものが、おふたりの心に特別な作用をもたらしています。琴也さんは、その感覚を次のように語ります。「和室はとても整っていてきれいな場所。だから入るときは、人に見られているという意識を持つようになって、自然と姿勢をよくしようと思います。お稽古場も同じで、階段を降りたところに初代の写真が飾られているのですが、それを見ると見守ってもらっているという感じがして、心が引き締まって『さあ、お稽古だ』という気持ちになります」

お稽古を続けたら、長く正座していても大丈夫になりました──琴也さん

撮影=笹口悦民(シグノ)

無駄を削ぎ落とした清廉な和室は、ただそこにあるだけで人の心を整え、背筋を伸ばしてくれる力を持っています。尾上椿さんと琴也さんの言葉からは、伝統的な作法が単なる決まりごとではなく、空間や先達への敬意から生まれていることが伝わってきます。指先まで神経の行き届いた所作や、静かに前を見据える眼差し。みずみずしくも端正なおふたりの姿から、日本が誇る美意識が生命力を伴って確かに未来へと受け継がれているように感じられます。

おのえつばき◯2011年生まれ。尾上菊之丞の長女。6歳で初舞台。2026年1月、名取として尾上椿の名を許される。日々研鑽を積み、気品あるみずみずしい舞で、流派の未来を担う舞踊家として期待されている。

おのえことや◯2016年生まれ。尾上菊之丞の長男。6歳で初舞台。2026年1月「琴也」を名披露目。同年4月、歌舞伎座「裏表先代萩」の鶴千代役で歌舞伎座本公演デビュー。澄んだ声と美しい所作が注目を集める。

撮影=笹口悦民(シグノ) ヘア&メイク=高橋亜季 着付け=奥泉智恵
編集・文=柏木敦子、平田剛三、本田リサ(すべて婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年7月号より

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