1. トップ
  2. エピソード
  3. 毎週来ているのに“残薬数”が合わない女性。薬剤師が話を聞くと、発覚した真相に「申し訳なくて言えなかった」

毎週来ているのに“残薬数”が合わない女性。薬剤師が話を聞くと、発覚した真相に「申し訳なくて言えなかった」

  • 2026.7.13
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

薬局の窓口では、患者さんが口にされない"言葉にならないサイン"に気づくことも大切な仕事です。

本記事では、毎週きちんと来局されているにもかかわらず、実は処方された薬をほとんど飲めていなかった40代女性のエピソードをご紹介します。

飲み忘れではなく、そこには本人も言い出せずにいた複雑な事情がありました。

「飲めない」を責めない対話が、どのように処方内容の見直しや信頼関係につながっていったのか。そして、同じように悩んでいる方に知っていただきたい「相談することの大切さ」についてお伝えします。

はじめに|"いつもと違う"に気づくのが薬剤師の仕事

窓口では毎日たくさんの患者さんとお会いしますが、そのなかで「あれ、いつもと少し違うな」と感じる瞬間があります。

小さなサインと、"詰問"ではなく"対話"であるべき理由

来局のタイミング、残薬の量、表情や声のトーン。ひとつひとつは些細な変化でも、重なっていくと「何かある」と感じることがあります。

こうした小さなサインを見逃さないことが、薬剤師にとって大切な力だと思っています。

「ちゃんと飲んでいますか?」と聞かれると、多くの方は反射的に「はい」と答えてしまいます。だからこそ、責めるのではなく、話しやすい雰囲気でお話を伺うことを心がけています。

違和感の始まり|「毎週来るのに、なぜか薬が余っている」

きっかけは、几帳面な印象の40代女性の来局パターンでした。

真面目な印象の女性と、合わなかった残薬の数

その方は毎週決まった曜日にきちんと来局され、処方箋も忘れず持参されていました。

会話も丁寧で、こちらから見れば「服薬もきっと問題なく続けておられるだろう」と思う方でした。

ところが、ある日ふとした会話の流れで残薬の話になったとき、日数の計算が合わないことに気づきました。真面目に通われているのに、薬が想定より多く残っている。薬が想定より多く残っている。この違和感が、その後の対話のきっかけになりました。

声をかけて見えてきた"飲みたくない理由"

「もしよろしければ、飲み方で困っていることはありませんか」と、雑談のような形でお声がけしました。

言い出せずにいた本音と、重なっていた複数の事情

しばらく黙ったあと、その方はぽつりと「実は……あまり飲めていないんです」と打ち明けてくださいました。飲み忘れではなく、飲みたくない気持ちがあったのだそうです。

薬を飲むと少しだるさを感じることがあり、それが仕事や家事に影響するのではと不安だったこと。家族に「まだ薬を飲んでいるの」と言われるのがつらかったこと。

理由はひとつではなく、いくつもの事情が重なっていました。

「先生にも薬剤師さんにも申し訳なくて言えなかった」とおっしゃっていたのが印象的でした。真面目な方ほど、こうした悩みを一人で抱え込んでしまう傾向があるように感じます。

薬剤師としてどう向き合ったか

打ち明けてくださったお気持ちを、まずはしっかりと受け止めました。そのうえで、次のステップを一緒に考えていきました。

処方内容の見直しと、信頼関係につながった小さな工夫

ご本人の同意をいただき、医師にも状況をお伝えしました。その結果、薬の種類や量が調整され、生活に取り入れやすい形に変更となりました。

服用のタイミングを朝から夜に変えたり、飲みにくいと感じていた剤形を変更したりと、小さな工夫の積み重ねで、その方の負担はぐっと軽くなったようでした。

それ以降、その方は困りごとを気軽に相談してくださるようになりました。責めない対話が、信頼関係の土台になるのだと改めて感じた出来事でした。

読者へのワンポイントアドバイス|薬との付き合い方を見直すヒント

もし今、薬のことで悩みや違和感を抱えている方がいらっしゃれば、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。

「飲めていない」は珍しくない──自己判断の前に相談を

処方どおりにきちんと飲み続けることは、実はとても難しいものです。

副作用への不安や生活の変化で服用が難しくなる方は、決して少数派ではありません。

自己判断で中止すると、症状が悪化することもあります。「やめたい」「減らしたい」と感じたときこそ、一度立ち止まってご相談ください。「こんなこと言ってもいいのかな」というためらいこそ、対話のはじまりです。かかりつけの薬局をひとつ決めておくと、些細な変化にも気づいてもらいやすくなります。薬剤師は、その言葉を受け止める準備をしています。


ライター:下田篤男

京都大学薬学部総合薬学科を卒業後、調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務してきました。総合病院の門前店舗では管理薬剤師を務め、たくさんの患者さんと向き合う日々の中で、「薬を渡す」だけではない、人と人との関わりの大切さを実感しています。現在は薬剤師として現場に立ちながら、医療記事の執筆・編集や薬局経営コンサルタントとしても活動中。読者の皆さまに、薬局がもっと身近で頼れる場所になるような情報をお届けしていきたいと思っています。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】


の記事をもっとみる