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80代男性「つまづいて転んだだけ」駆けつけた救急隊員が“隠れた異変”を把握することができたワケ

  • 2026.7.17
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。ライターのとしです。

高齢者の転倒による救急要請は、決して珍しいものではありません。

段差につまずいた、足がもつれた、立ち上がった際にバランスを崩したなど、理由もさまざまです。

ただ、現場で話を聞いていると、本当に「転んだだけ」で片づけてよいのか迷うことがあります。

今回は、本人の説明と妻の話に少しずつ食い違いが見えてきた、80代男性の事案をご紹介します。

「つまずいただけ」と話す男性

救急要請の内容は、80代男性が自宅内で転倒したというものでした。

現場に到着すると、男性は意識があり、受け答えもできていました。

目立った出血はなく、本人は「ちょっとつまずいて転んだだけだよ」と繰り返しました。

高齢の方であれば、足元が不安定になり、わずかな段差で転ぶこともあります。

一見すると、今回もよくある転倒のように思えました。

しかし、転んだ時の状況を詳しく尋ねると、男性の説明は少し曖昧でした。

どこに足を引っかけたのか。

転倒する直前に何をしていたのか。

質問するたびに答えが変わり、本人もはっきり思い出せない様子だったのです。

妻が話した「倒れる前の様子」

そこで、そばにいた妻にも話を聞きました。

妻によると、男性は単につまずいたというより、急に力が抜けて倒れたように見えたとのこと。

一瞬、意識を失っていたようにも感じたそうです。

さらに話を聞くと、最近は歩いている時に足元がおぼつかない場面が増えていたことも分かりました。

ただ、妻がそのことを本人に伝えると、「年寄り扱いするな」と怒鳴られてしまうことがあり、普段から言い出しにくかったそうです。

男性にも、自分の衰えを認めたくない気持ちがあったのかもしれません。

家族だからこそ気づける変化がある一方で、近い関係だからこそ伝えづらいこともあります。

妻は責めるような口調ではなく、心配そうに男性の様子を話していました。

転倒のけがだけでは説明できない違和感

救急隊は、転倒によるけがだけでなく、その前に何が起きたのかを慎重に確認しました。

意識を失ったことで倒れた可能性や、脳卒中などによって足に力が入りにくくなっていた可能性も考えられます。

もちろん、その場で原因を断定することはできません。

それでも、本人の「つまずいただけ」という言葉だけで判断してしまえば、背景にある異変を見落とすおそれがあります。

救急隊は、意識状態や手足の動き、話し方、血圧などを確認し、妻から聞いた転倒前後の様子も医療機関へ伝えました。

男性は当初、搬送にあまり乗り気ではありませんでした。

しかし、妻の心配する様子もあり、最終的には医療機関で詳しく診てもらうことになったのです。

高齢者の転倒では周囲の情報も大切

高齢者の転倒は、床の段差や足のもつれが原因とは限りません。

意識消失や脳卒中、体調不良などが先に起こり、その結果として倒れている場合もあります。

本人が転倒前後を覚えていなかったり、説明が曖昧だったりする時は、家族や目撃者の話が大きな手がかりになります。

また、本人が怒るのではないかと心配し、家族が普段の変化を言い出せないこともあるでしょう。

それでも、「いつもと違う」と感じたことは、救急隊や医療機関に伝えてほしい情報です。

今回の事案では、妻が勇気を出して話してくれたことで、単なる転倒ではない可能性まで考えることができました。

転んだことだけを見るのではなく、転ぶ前に何が起きていたのか。

その視点が、隠れた異変に気づくきっかけになることがあります。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。


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