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「母が入院したのでお金を下ろして」窓口で訴える息子。銀行員が本人に確認すると“予想外の本音”に「トラブルになった可能性も」

  • 2026.7.17
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。くまえり銀行員です。
今日は、「親のためだから大丈夫」と言われたご家族とのやり取りで、私が今でも忘れられない出来事をお話しします。

銀行の窓口では、「家族なんだから手続きできるでしょう」「親に頼まれて来たんです」という言葉を耳にすることがよくあります。

高齢になった親御さんに代わって銀行へ来店されるご家族は決して珍しくありません。介護や入院、施設への入居など、さまざまな事情があり、ご家族が支えようとするお気持ちもよく分かります。

だからこそ、銀行が手続きをお断りしたり、何度も確認をお願いしたりすると、「そこまで厳しくしなくてもいいのでは」と不満に感じられることも少なくありません。

しかし、その確認には、お客様の大切な財産を守るための理由があります。

「親のためなんです」その言葉だけでは進められない理由

ある日、一人の男性が窓口へ来店されました。

「母が入院していて銀行へ来られません。入院費用が必要なので、この口座からお金を下ろしてください。」

通帳や届出印など必要なものはご持参になり、説明にも不自然な点はありませんでした。事情だけを聞けば、親思いの息子さんという印象です。

ところが、代理でのお手続きにはご本人の意思確認が必要であることをご説明すると、男性は少し困った表情でこう言いました。

「母は入院しているので電話にも出られません。だから本人確認はできません。」

実は、このようなお話は決して珍しくありません。

「施設に入っているから会えない」「体調が悪くて話せない」といった事情で、ご本人と連絡が取れないケースは、窓口でもたびたびあります。しかし、だからといって銀行がそのまま払い戻しに応じることはできません。

状況に合わせて、ご本人と直接お話しして意思を確認するなど、個々の事情に応じた対応を行う場合があります。

また、「入院費用の支払い」といった理由であれば、請求書や見積書など、資金の使い道が確認できる資料をご提示いただくようお願いすることもあります。

一見すると融通が利かない対応に思われるかもしれません。しかし、その一つひとつの確認や手続きが、お客様の大切な財産を守ることにつながっているのです。

確認を続けた先で分かった、本当の事実

その後、病院でご本人と直接お話しする機会を設けることができました。

実際にお話を伺うと、返ってきた答えは私たちの予想とはまったく違うものでした。
「私はまだ、そのお金を下ろすつもりはありません。」

さらに詳しくお聞きすると、入院費用はすでに別の預金で支払える状況であり、息子さんは「今のうちにまとめて出しておいたほうが安心だろう」と考え、善意で来店されていたことが分かりました。もちろん悪意があったわけではありません。

それでも、ご本人の意思とは異なる払い戻しが行われていれば、後になって「勝手にお金を引き出された」と大きな家族間トラブルへ発展していた可能性は十分にありました。

窓口では、ご家族同士の認識の違いや、「良かれと思って」の行動が思わぬ問題につながる場面を、私たちは何度も見てきています。

さらに、ご本人が認知症などにより意思確認そのものができない状態であることが明らかな場合には、銀行だけの判断で払い戻しを行うことはできません。その際には、ご本人に代わって財産を管理するため、家庭裁判所を通じた成年後見制度などの利用をご検討いただくようお願いする場合があります。

「家族だから大丈夫」というお気持ちは理解できます。しかし銀行がお守りしているのは、ご家族の意向ではなく、あくまでも預金者ご本人の権利と財産なのです。

読者のみなさんへ

高齢のご家族を支える中で、「親のためだから」と代理で動く場面は、これからますます増えていくかもしれません。
だからこそ、ご本人が元気なうちから、お金の管理方法や、いざという時に誰がどのような手続きを行うのかをご家族で話し合っておくことが大切です。

銀行で確認に時間がかかったり、必要書類の提出をお願いしたりすることがありますが、それは決してご家族を疑っているからではありません。

確認の一つひとつには、ご本人の財産を守り、ご家族同士の思わぬトラブルを防ぐという大切な役割があります。

窓口で「なぜここまで確認するのだろう」と感じたときは、その確認の一つひとつが、ご本人の大切な財産と安心を守るために行われていることを思い出していただければ幸いです。


ライター:くまえり銀行員
金融機関の窓口業務に携わり、日々さまざまなお客様対応を経験。忙しい日常の中で起こりがちな銀行手続きの行き違いやトラブルを、窓口の内側から見た視点で、読者に寄り添いながら伝えています。「知らなかった」が「なるほど」に変わる瞬間を大切に執筆中。


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