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「ホームでぐったりしている人がいます」猛暑日の駅で救護活動をした元駅員。数年後に振り返って思わずゾッとしたワケ

  • 2026.7.11
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に体験した「お客さまの誤算」をご紹介します。ある暑い夏のお客さま対応と、それを振り返ってぞっとした気づきです。

朝のラッシュ時間に急病人発生!

2026年は久々にはっきりとした梅雨を迎えたように感じます。

体感ではここ2年ほど空梅雨が続いており、厳しい冬から短い春を挟んですぐに記録的に暑く長い夏へ突入していたので、夏前に気温を下げてくれる梅雨前線のありがたみを感じます。

さて、梅雨のありがたさはともかく、夏の暑さが厳しさを増していることについては、体感だけでなく、日々目にするニュースからも明らかなのではないでしょうか。

ある暑い朝、ラッシュのため混雑する改札口で、1人のお客さまから申告がありました。

いま列車から降りてきたんですけど、2番ホームのベンチでぐったりしている人がいます。念のため、声をかけてもらえませんか」

それを聞いた私は、まず詳しいベンチの位置とお客さまの性別・服装を確認しました。

それから改札口を別の社員に任せ、すぐに無線機と車いすを持って2番ホームへ急行します。確かにその場所に、頭を抱えてうなだれているようなお客さまがいました。

この暑さ、やはり…

「お客さま、失礼いたします。体調がよくないようですが、涼しいところで休まれませんか?」

持ってきた車いすにブレーキをかけ、お客さまを見下ろさないようにしゃがんで声をかけます。

お客さまは力なくうなずきました。意識はあるようですが、やはり疑うべきは熱中症です。

無線機で駅事務室に救護室の準備を依頼し、折りたたんでいた車いすを広げてベンチの隣にセットしました。お客さまはなんとか自力で車いすに乗ることができました。

一部の駅員が持つ資格に「サービス介助士」があるのですが、これは主に足や目などが不自由なお客さまのサポートスキルを修得するものです。

私が勤めていた会社でもサービス介助士の資格取得が推奨されており、私自身も資格所有者のひとりです。急病人対応とはいえ、身につけたスキルを実践で活用できたのは、印象深い経験でした。

お客さまの誤算

「車いすのスピードはこのくらいで大丈夫ですか?」

「吐き気などはありませんか?」

運の悪いことに、お客さまがいたベンチからエレベーターまで、長いホームをほぼ端から端まで移動しなければいけません。お客さまの体調を確認しつつ、できるだけ安全で振動がなく、しかもエレベーターまで早く着けそうなルートを選びます。

エレベーターの中は比較的涼しく、汗っかきな私も一息つくことができました。すると、ここでお客さまが初めて私に話しかけてきました。

列車の中なら涼しかろうと思ったんですが、あまりにも人が多くて具合が悪くなってしまいました。迷惑をかけてすみません

「い、いえいえ」

こちらが頭を下げることは数あれど、お客さまに謝られるなど通常はありえないことです。

「この場合、返事は何が正解なんだ? お客さまの具合が悪くなっているのに『ありがとうございます』は変だし、『どういたしまして』も絶対違うよな…」と焦った結果、私はほとんど何も返せませんでした。

弱冷房車は連結されていなかったのに

このお客さまが利用した列車に、弱冷房車は連結されていません。

どの車両に乗っても冷房の強さは大きく変わらないはずです。きっとドアの近くに立っていて、停車するたびに外の熱気を浴び、徐々に混雑する車内で息苦しくなり、ついにこの駅で耐えられなくなって列車を下りたのでしょう。

私は医者ではないのであまり確定的なことは言えませんが、炎天下のホームで立って列に並び続け、さらに列車の中でも立つとなると、体力はかなり消費するのではないかと思います。

夏に移動するときは、座れる場所でこまめに休憩をとり、水分補給のための飲み物を持ち歩くことが、必須になってくるのかもしれません。

あれから数年

この記事を書くにあたり、当時を振り返って気になった点があります。

私は「ぐったりしている人を見かけて、心配だから声をかけてほしい」と別のお客さまに言われて、初めてこのお客さまの存在を把握しました。もしも、どなたからも改札口の私たちに連絡していただけなければ、どうなっていたのでしょうか。

あの朝は、自宅から駅まで歩くだけでも不快な汗が止まらなくなるほど暑かったのを覚えています。

ラッシュ時で乗降の多い列車のドア開閉と安全確認を行う乗務員に、列車のドア付近から少し離れたベンチのお客さまの状態まで見る余裕はないでしょう。私たち駅員も、常に駅全体に目を光らせることができるわけではなく、どうしても見落としたり、しばらく誰も見ていない場所ができたりしてしまいます。

改札口での申告がなければ、長時間にわたって体調不良のお客さまが炎天下の屋外に取り残されていたかもしれない。そう考えると、もう何年も前のことながらぞっとします。

鉄道利用中でもそうでなくても、気分が悪くなったときはできるだけ早く誰かに異常を伝えたほうがいい、と感じさせられる出来事です。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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