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訪問看護で「シャワー浴びました」確認すると浴室はカラカラ…訪問看護師が気づいた違和感と、患者が隠した本音

  • 2026.7.10
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。現役看護師ライターのこてゆきです。

訪問看護では、利用者さんから体調や生活の様子を直接伺うことが多くあります。

「ご飯は食べています」
「薬は飲めています」
「お風呂も入っています」

こうした言葉を聞くと、つい安心してしまいそうになります。しかし実際には、その一言だけでは見えてこないことも少なくありません。

今回は、訪問看護で関わっていた統合失調症の利用者さんとの出来事です。
「シャワー浴びました」という返事の裏にあった、本当のしんどさについてお話ししたいと思います。

「今日はシャワー浴びました」いつもと同じ返答

Aさんは中年の男性で、統合失調症のため訪問看護を利用していました。服薬管理や生活状況の確認を目的に、週に数回訪問を実施していました。

夏真っ盛りのある日。玄関を開けると、蒸し暑い空気が流れていました。

「こんにちは。暑いですね」

そう声をかけると、Aさんは笑って答えました。

「ほんま暑いですね」

体調を確認しながら、いつものように生活の様子を聞きました。

「ご飯は食べられてますか?」

「食べてます」

「夜は眠れました?」

「まあまあですね」

そして最後に聞きました。

「今日はシャワー浴びました?」

Aさんはすぐに頷きました。

「はい。朝入りました」

返事は自然でした。会話にも特に違和感はありませんでした。以前なら、そのまま「良かったですね」で終わっていたかもしれません。

「何かがおかしい」という小さな違和感

その日、私は小さな違和感を覚えていました。

髪はどこかぺたっとしていて、乾いたばかりには見えませんでした。首元や額には皮脂が目立ち、Tシャツには汗染みがありました。部屋の中には洗剤の匂いも、シャンプーの香りもしませんでした。

もちろん、それだけで「入っていない」と決めつけることはできません。

人それぞれですし、その日の体調もあります。しかし、これまでAさんと関わってきた経験から、

「今日はいつもと少し違う」

そんな感覚がありました。

処置を終えたあと、

「タオル掛けてもいいですか?」

と浴室の近くへ行くと、さらに違和感は大きくなりました。

浴室の床は乾いたまま。バスマットもきれいに整ったままでした。濡れたタオルも見当たりませんでした。

「朝入った」という生活の痕跡が、どこにもありませんでした。

「最近、お風呂しんどいですか?」

それでも私は、

「本当は入ってないですよね?」

とは聞きませんでした。

責められているように感じれば、本音は話しづらくなってしまいます。私は椅子に座り直して、少しだけ話題を変えました。

「Aさん」

「はい?」

「最近、お風呂しんどいですか?」

その瞬間でした。Aさんの表情が止まりました。しばらく沈黙が続きました。

時計の秒針の音だけが聞こえていました。そして、小さな声で言いました。

「…しんどいです」

私は黙って続きを待ちました。

「服を脱ぐところまではできるんです」

「でも、そのあと動けなくなるんですよ」

「シャワー出そうと思っても、もうええかってなって」

さらに続けました。

「途中で全部面倒になってしまうんです。結局、そのまま部屋へ戻ることもあります」

私は静かに聞いていました。

Aさんは少し笑いながら言いました。

「だから、入ったって言いました。」

その笑顔は、どこか申し訳なさそうでした。

「できていない」のではなく、「できない理由」があった

統合失調症では、幻覚や妄想だけでなく、意欲の低下や生活行動が難しくなる陰性症状が現れることがあります。

本人も「やらなければ」と思っています。

けれど、身体が動かない。気力が続かない。それは怠けているわけでも、やる気がないわけでもありません。症状によって、日常生活そのものが難しくなっている状態です。

もしあの日、

「嘘ついてましたよね?」

と指摘していたら、Aさんはきっと心を閉ざしていたでしょう。

「最近は週に何回くらいなら入れそうですか?」
「一緒に続けられる方法を考えませんか?」

そんな話をすると、Aさんは少し安心したように頷きました。

「そうですね…まずはそこから。それならできるかもしれません」

訪問看護では、「できていますか?」と確認する場面がたくさんあります。

でも、本当に大切なのは、できているか、できていないかだけではありません。

「なぜできないのか」

その背景にある苦しさや症状を知ることが、支援の第一歩なのだと思います。あの日、Aさんの「シャワー浴びました」という言葉の裏には、責められたくない気持ちと、本当はできるようになりたいという思いが隠れていました。

それ以来、私は利用者さんの「できています」という言葉を、そのまま鵜呑みにするのではなく、生活の様子や表情、小さな変化にも目を向けるようになりました。

言葉だけでは見えないことがある。そして、その先には必ずその人なりの理由がある。

あの日の出来事は、私にそんなことを教えてくれました。



ライター:こてゆき

精神科病院で6年勤務。現在は訪問看護師として高齢の方から小児の医療に従事。精神科で身につけたコミュニケーション力で、患者さんとその家族への説明や指導が得意。看護師としてのモットーは「その人に寄り添ったケアを」。


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