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隣人「前より部屋が暗くなった」1 台約30万円の“設置工事”で、30代夫婦が気づかなかったこと【一級建築士は見た】

  • 2026.7.17
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「車の乗り降りを楽にしたくて、カーポートを後付けしたんです。そうしたら、お隣から『前より部屋が暗くなった』と。お隣の窓に影を落としていたとは。」

そう話すのは、郊外の戸建て(築8年)で暮らすHさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。子どもが生まれ、雨の日の乗り降りを楽にしたいと、敷地の境界沿いに1台用のカーポート(約30万円)を後付けしました。ところが、その屋根と柱が、ちょうどお隣の1階の窓の前に。

「カーポートに、そんな影響があるとは思っていませんでした」とHさんは振り返ります。

カーポートは、思った以上に「隣の日当たり」に関わる

カーポートが隣の家の日当たりに関わるのには、理由があります。カーポートが、思った以上に「大きな建物」だからです。

意外に思われるかもしれませんが、屋根と柱があるカーポートは、建築基準法では建築物にあたります。車1台分でも、屋根は幅2.5メートル・奥行き5メートルほど、柱の高さは2メートル前後。これが境界沿いに建つと、お隣の窓の前に、それなりの大きさの「面」と「柱」が現れることになります。

その結果、お隣の窓に影がかかって部屋が暗くなったり、窓からの眺めに屋根や柱が入って圧迫感が出たりします。とくに冬は、太陽が低い位置を通るため、影が長く伸びて、日当たりへの影響が大きくなりがちです。

「境界から離す」だけでは、足りないことも

「境界から離せば大丈夫」と思われがちですが、それだけでは足りないことがあります。

建築物は、民法で、隣地の境界線から50センチメートル以上離すことが原則とされています。カーポートも建築物なので、この距離が目安になります。ただ、この50センチメートルは、あくまで建物どうしの最低限の間隔を定めたもので、お隣の日当たりまで守ってくれるわけではありません。

つまり、ルールの距離を空けていても、屋根の大きさや向き、柱の位置しだいで、お隣の窓に影がかかることはあります。大切なのは、距離だけでなく、「お隣の窓から見て、どう映るか」を考えることなのです。

Hさん夫婦はどう対応したのか

お隣に影を落としていると気づいたHさん夫婦は、すぐにお隣へ出向いて事情を話し、気づかずに付けてしまったことをおわびしました。

そのうえで、できる改善策を探しました。一度建てたカーポートは、位置や向きを簡単には変えられません。ただ、屋根のパネルは、柱や骨組みを残したまま、あとから張り替えることができます。

Hさんのカーポートの屋根は、熱をさえぎり、光を通しにくいタイプのパネルでした。これを、光をよく通す透明タイプに張り替えたのです。1台分で数万円からの工事で、屋根の形は変わらなくても、お隣の窓に届く光は増えます。

夏の車内は少し暑くなりやすいものの(透明タイプでも、車の色あせのもとになる紫外線はほとんどカットされます)、「お隣の毎日の明るさのほうが大事だと思いました」とHさん。後日、お隣から「前より明るくなりました」と声をかけてもらえたそうです。

「付ける前にひと言、相談しておけばよかった。でも、あとからでも、できることはありました」とHさんは振り返ります。

カーポートを付けるときは「隣への影」も考えて

カーポートは、雨の日の乗り降りや、車を守るうえで、とても頼りになる設備です。一方で、屋根と柱のある建築物として、お隣の日当たりや見え方に関わることもあります。付けるときは、自分の使い勝手だけでなく、以下の点もあわせて考えておくと安心です。

・お隣の窓やベランダの前に、屋根や柱が来ていないか(とくに南側)
・屋根材を、光を通すタイプ(ポリカーボネートなど)にできるか
・柱の位置や本数、屋根の向きで、影を減らせないか
・付ける前に、お隣にひとこと相談できているか

大切なのは、「自分のためのカーポート」が「お隣の窓をふさぐ屋根」にもなりうると知っておくこと。そのうえで、屋根材や配置を工夫し、ひとこと相談を添えれば、車の便利さと、ご近所との良い関係は、両立しやすくなるでしょう。

参考:
建築基準法(e-Gov法令検索)
民法(e-Gov法令検索)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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