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保険を使えば6年間で約20万円の負担増…40代女性が「えー!」と声を上げた、ミラー修理の誤算

  • 2026.7.25
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「車のミラーを壊してしまって。車両保険を使ったほうがいいでしょうか?」

ある夏の日、損害保険会社で事故対応をしていた私の元に、以前物損事故を担当した契約者のAさん(40代・女性)からこんな電話がかかってきました。

後日わかった修理費は、約1万円。一見すると、車両保険を使って直したほうが得に思えるかもしれません。しかし私はAさんに、今回は保険を使わない選択を勧めました。

理由は、修理費とは別に、保険を使うことで今後数年の保険料が合計で約20万円増える可能性があったからです。

ミラーカバーの破損。「お盆までに直したい」

Aさんに詳しく話を聞くと、自宅のガレージに駐車する際、左のミラーをぶつけてしまったとのこと。壊れたのはミラーカバーだけで、鏡面は割れておらず、ウインカーの点灯もミラーの開閉も問題ありませんでした。

「お盆には帰省で車を使うんです。ミラーが壊れたまま走って大丈夫なのかも分からなくて、早く直したくて。前回の事故の時も保険で助かったので、今回もそうしようかと」

「私、車に詳しくなくて、修理にいくらかかるのか見当もつかないんです」と、Aさんは言います。

ミラーカバーの交換なら、相場は2千円〜1万円ほど。また、Aさんの契約は車両保険に免責金額(保険を使う際の自己負担額)の設定がないタイプで、この程度の少額修理でも保険金の支払い対象になります。私はそれらを伝えたうえで、保険を使った場合の影響をAさんと一緒に確認することにしました。

「使うと、来年は約14万円になります」

実はAさんは、3ヶ月前の物損事故でも保険を使ったばかりでした。この時点で、次の更新での3等級ダウン(20等級から17等級)と、「事故有係数」の適用期間が3年加算されることが決まっています。

事故有係数とは、簡単に言うと「事故で等級が下がった人は、同じ等級でも割引率が低くなる」仕組みです。今回も保険を使えば、合わせて6等級下がり、この係数の適用期間はさらに加算され6年になります。

「Aさんの今の保険料は、年間約7万円ですよね。今回も保険を使うと、来年は約14万円。2倍近くになる計算です」

Aさんに伝えると、電話口から大きな声で「えー!」と返ってきました。

「そんなに差が出るものなんですか。驚きました」

加えて、Aさんの保険への影響は、1年では終わりません。等級は無事故でも1年に1つずつしか戻らないため、元の保険料水準に戻るまでの期間は最短でも6年です。しかもその間は事故有係数がついたままなので、等級が戻っていく途中も、無事故で同じ等級にいる人より割引率が低い状態が続きます。

Aさんの場合、使わなかった時と比べて、6年間の保険料の累計は約20万円多くなる計算でした。

もちろん、これはAさんの契約条件での試算であり、実際の金額は、保険会社や契約内容によって異なります。しかし、事故有係数や3等級ダウンの考え方は共通のもの。金額の違いはあれど、保険料に影響が出ると考えておくべきです。

修理費1万円と、負担増20万円

私はAさんに、まず修理工場で概算の見積もりを取り、その金額と比べてから決めるようアドバイスしました。後日取った見積もりは、約1万円。累計約20万円の負担増と比べれば、答えは明らかです。Aさんは保険を使わず、自己負担で修理することを選びました。

「見積もりを取って比べるなんて、考えたこともありませんでした」

そう話したAさんから、電話を切る前に、もうひとつ質問がありました。

「そういえば、修理までの間は、このまま乗っていても大丈夫なんでしょうか?」

最初の電話でも口にしていた、走行への懸念です。帰省の際の足として車を使う以上、当然の疑問でした。

「今回はカバーが割れただけで、鏡もウインカーも使えるので、当面は大丈夫です」

修理工場からも「カバーのみの損傷で、内部への影響はほぼないだろう」と言われていたため、Aさんはお盆が終わってからミラーを修理することにしました。

ただし、これはあくまで今回のケースの話です。鏡面が割れて後方の確認ができないような壊れ方であれば、整備不良として法令上、問題になる可能性があります。その場合、修理が終わるまで乗らないという判断も必要になるでしょう。

保険を使う前に、確認したい2つのこと

保険を使う前に、確認したいことが2つあります。

1つ目は、「修理費の見積もり」と「元の保険料に戻るまでの累計の負担増」を比べることです。

「保険を使った場合」と「使わなかった場合」の今後数年間の保険料を比較し、その差額と修理費を比べましょう。

修理費のほうが安ければ、自己負担のほうが総支出は小さくなります。ただし、手元の資金に余裕がない場合は、保険を使う判断も必要となります。

2つ目は、保険を使った場合の次年度の保険料を、保険会社や代理店に試算してもらうことです。相談をしただけでは等級は下がりませんので、その点は安心してください。

大切なのは、「今年の保険料」ではなく「今後数年の保険料」で考えることです。事故有係数は最大6年間続き、その間は等級が回復しても割引率が低いまま。保険料への影響は、翌年だけでなく数年単位で続きます。

帰省や旅行で運転の機会が増える夏は、駐車場などでの小さな接触も起こりやすい時期。保険は心強い味方ですが、使えば翌年以降の負担が増える仕組みがあります。いざという時は「保険料の上がり幅」と「割引率が下がる期間」を確認し、慎重に判断しましょう。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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