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「ちゃんと並んで」通勤ラッシュの割り込みが招く“たった15秒のロス”…10駅積み重なると起きる"想定外の連鎖"

  • 2026.7.24
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

皆さま、こんにちは。現役鉄道会社社員の福本明文です。

駅のホームで電車を待っているとき、「整列乗車にご協力をお願いします」というアナウンスを耳にしたことはないでしょうか。あまりにも日常的な風景に溶け込んでいるため、聞き流してしまう人も少なくないかもしれません。しかし、駅の現場で対応している私たちからすると、この何気ないアナウンスにはとても重要な意味が込められています。

今回は、誰もが経験したことのある「整列乗車」にまつわるトラブルと、その裏側についてご紹介します。

ホームで起こる「割り込み」

ある朝の通勤ラッシュ時のこと。ホームの乗車位置には、電車を待つビジネスマンたちが列を作っていました。電車が到着し、ドアが開いて乗り込もうとしたその瞬間、列の横からスッと若者が割り込んできたのです。

「ちょっと、ちゃんと並んでくださいよ」

ビジネスマンが注意すると、若者はムッとした表情で言い返します。

「いや、自分もここで並んで待っていたんです」

一触即発の空気が漂いましたが、周囲の冷ややかな視線に気づいたのか、若者はバツが悪そうに別のドアへと移動していきました。

駅で勤務していると、このような割り込みに関する小競り合いは日常茶飯事です。私たち駅員も、混雑状況を見ながら「2列に並んでお待ちください」「足元のマークに合わせてお並びください」と声をかけて回りますが、広大なホームのすべてのドアを網羅し、トラブルを未然に防ぎきることは非常に難しいのが実情です。

トラブルが起きやすい行動

整列乗車が乱れる原因の一つに、鉄道特有のドア位置の違いがあります。路線によっては、車両の長さやドアの数(3扉や4扉など)が異なる電車が混在して走っています。そのため、自分が乗る電車のドア位置とは違うマークで待ってしまった人が、電車が到着してから慌てて正しい乗り口へ移動し、結果的に「割り込み」のような形になってしまうケースが多発します。

実は、割り込みには悪気がないパターンがほとんどなのですが、一方で、意図的な行動も見受けられます。「どうしても座りたい」という思いから、あえて本来の列から少し外れた位置や柱の陰など、並んでいるのかいないのかわかりにくい位置に立ち、ドアが開いた瞬間に列の先頭に滑り込もうとするケースです。これは周囲のお客様の強い不満を招き、大きな口論やトラブルに発展しやすいため、絶対にやめていただきたい行動の一つです。

整列の乱れが遅延を生む

単なるマナーの問題と思われがちな整列乗車ですが、実は電車の定刻運行にも繋がっています。

整列乗車が守られず、人々がドアの前に扇状に群がってしまうとどうなるでしょうか。まず、電車から降りようとする人がスムーズに降りられなくなります。降りる人と乗る人の動線がぶつかり合い、ドア付近で渋滞が発生するのです。

スムーズに乗り降りができれば15秒で済むところが、列が乱れることで30秒かかってしまいます。たった「15秒のロス」と思うかもしれませんが、これが各駅で積み重なるとどうなるでしょう。10駅進めば約2分半の遅れになります。過密ダイヤで運行される都市部の路線において、前の電車が2分半遅れれば、後ろの電車も次々と遅れ、結果として路線全体に波及する遅延へと発展してしまうのです。

そもそも、運行ダイヤは乗客のスムーズな乗降にかかる時間を前提に組まれているため、その前提が崩れてしまうと、たちまち定刻運行が難しくなってしまうのです。

鉄道会社の工夫と乗客との「共作」

こうした事態を防ぐため、鉄道会社も様々な努力をしています。駅のホームの足元を見ると、「赤い丸印」「青い三角印」など、乗車位置や並び位置がカラフルかつ視覚的にわかりやすく表記されているのに気づくはずです。これは、列車の種類によって待つべき位置を明確にし、お客様同士の不要なトラブルを防ぐための工夫です。また、駅員のアナウンスでも「次の急行は赤い丸印でお待ちください」と、色や形で具体的に誘導するようにしています。

「日本の鉄道は世界一時間に正確だ」とよく言われますが、それは決して最新のシステムや鉄道員だけの力で成し遂げているわけではありません。ルールを守り、スムーズに乗降してくださるお客様一人ひとりの協力があってこそ実現しているものです。

朝の忙しい時間帯は誰しも心に余裕がなくなりがちですが、どうかトラブルになる前に、足元のマークを確認し、整列乗車へのご協力をよろしくお願いいたします。


参考:
西武鉄道からのお願い(西武鉄道)
混雑時のお願い(相模鉄道)


ライター:福本明文
大学卒業後、鉄道会社に総合職として入社し、同業界に15年以上従事。鉄道部門だけでなく、タクシーやバス、小売りといった関連事業にも幅広く携わる。現在はWebライターとしても、広報を担当した経験を活かし、コラム記事の執筆からSNSへのコンテンツ提供まで多岐にわたって活動中。


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