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「夏休みにまとめて修理します」冷却水の減りを放置…1か月後、40代男性が高速の渋滞で直面した"恐ろしい事態"

  • 2026.7.24
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「冷却水が少し減っているけど、継ぎ足せば問題ないだろう」

そう考えている方は少なくありません。しかし、その"少し減るだけ"という状態こそ、重大な故障の始まりである場合があります。

今回は、私が自動車整備に携わっていた頃に修理で来店されたお客様、Aさん(40代男性)の実例をもとに、夏場に起こりやすいオーバーヒートの恐ろしさについてお話しします。

「少し減るだけだから」と先送りした小さな異変

Aさんが来店されたのは、真夏を迎える少し前のことでした。

「最近、冷却水が少し減るんですよ」

エンジンルームを確認すると、リザーバータンクの冷却水はLOW付近まで下がっています。

「半年くらいで少し減るので、そのたびに補充しています」

そう話すAさん。私は詳しく状況を伺いました。

「地面に漏れた跡はありますか?」

「いえ、全然ありません」

「水温計は普段と変わりませんか?」

「普通です。警告灯も点いたことがないので、夏休みが終わったら修理しようと思っていました」

このようなケースは決して珍しくありません。

冷却水は密閉された冷却系統の中を循環しています。そのため、自然蒸発だけで目に見えて減ることは基本的にはありません。つまり、補充が必要になるほど減っている時点で、どこかから冷却水が漏れている可能性が高いのです。点検すると、ウォーターポンプのメカニカルシール付近に乾いた冷却水の跡が確認できました。

また、ラジエーターホースの接続部にも白い結晶が付着しており、ごくわずかな漏れが続いていたことが分かりました。早急な修理をお勧めしましたが、しかし当時は症状が軽く、Aさんも忙しかったため、

「夏休みにまとめて修理します」

ということで、いったん乗って帰られることになりました。

真夏の渋滞が一気に故障を進行させた

それから約1か月後。Aさんから慌てた様子で電話が入りました。

「高速道路の渋滞で急に水温計が上がって、ボンネットから白い煙みたいなものが出ました」

車はレッカーで入庫しました。原因は、以前確認していた冷却水漏れの悪化でした。冷却系統は内部を加圧することで、100℃を超える高温でも冷却水が沸騰しないよう設計されています。しかし、わずかな漏れでも圧力を維持できなくなると、本来の冷却性能を十分に発揮できません。

そこへ真夏特有の厳しい条件が重なります。外気温は35℃を超え、アスファルトの表面温度は60℃近くまで上昇します。さらにエアコンを使用するとコンプレッサーが作動し、エンジンへの負荷も増加します。そして渋滞では走行風がほとんど得られず、ラジエーターは電動ファンだけで冷却し続けなければなりません。冷却水も少しずつ減っていたため、ついに冷却能力が限界を迎えたのです。

「昨日までは普通だったのに」

Aさんはそう話されていましたが、実際には少しずつ進行していた不具合が、夏の厳しい環境によって一気に表面化したのでした。

小さな冷却水漏れが数十万円の修理につながることも

入庫後に詳しく点検すると、オーバーヒートの影響でシリンダーヘッドは熱変形を起こしていました。ヘッドガスケットも損傷し、冷却水が燃焼室へ流入。さらにエンジンオイルにも冷却水が混入しており、内部の損傷も確認されました。

修理にはエンジンの分解・オーバーホールが必要となり、部品代や工賃を含めると30万~50万円規模になるケースもあります。もちろん、車種や損傷の程度によって費用は大きく変動しますが、「冷却水を少し補充するだけ」で済んでいたはずの不具合が、高額修理へ発展してしまうことは決して珍しくありません。冷却水は「減るもの」と思われがちですが、密閉式の冷却系では目に見えて減ること自体が異常のサインです。継ぎ足して様子を見るのではなく、原因を特定することが大切です。

また、長距離ドライブや帰省前には、リザーバータンクの量だけでなく、ラジエーターホースの接続部やウォーターポンプ周辺に白い結晶や乾いた漏れ跡がないか確認すると、初期段階で異常を見つけやすくなります。さらに、一度でもオーバーヒート警告灯が点灯した場合は、「その後普通に走れたから問題ない」と自己判断しないことも重要です。高温にさらされたエンジンは、外見上は正常でも内部にダメージが残っている可能性があります。

・冷却水が少し減る
・甘い臭いがする
・以前より水温が高い気がする

こうした小さな違和感は、エンジンが発しているSOSかもしれません。車検まで待つのではなく、気付いた段階で整備工場に相談することが、愛車を長く安全に乗り続けるための最も確実な方法です。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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