1. トップ
  2. 暮らし
  3. 帰省中、片側3車線の高速で前方事故を避けて停車→追突されたAさんが「言葉を失った」事態の全容

帰省中、片側3車線の高速で前方事故を避けて停車→追突されたAさんが「言葉を失った」事態の全容

  • 2026.7.25
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

夏の連休は、帰省や旅行で長距離を高速道路で走る機会も増えるシーズンです。

一方で、高速道路の本線上での停車は原則として禁止されています。では、もし他の事故の影響でやむを得ず本線上に停まり、そこを後続車に追突されたら、過失割合はどうなるのでしょうか。

今回は私が実際に担当した追突事故事案を元に、その結果と理由をお伝えします。

高速道路の本線上で停止した“しばらく後”の追突

当事者は、私が担当した契約者のAさん(20代・男性)。帰省のため、片側3車線の高速道路を走行していました。

そのAさんの数十メートル先で、2台の車が接触します。接触した車は、勢いを残したまましばらく流れるように動き、やがて第1車線と第2車線をまたぐ形で停まりました。Aさんはとっさにブレーキを踏み、一番左の第1車線で自車を停めます。

幸い、前の事故への接触は避けられました。Aさんは冷静に車外へ出て、後方に停止表示器材を設置し、後続車へ危険を知らせる処置を実施。そして車内へ戻り、警察や保険会社への連絡をしながら、その場で待機していました。

「自分はぶつからずに停まれた。やるべきこともやった」

後から話を伺うと、Aさんは当時そう考えていたそうです。ところが、それからしばらく後。後続を走ってきたBさん(20代・男性)の車が、Aさんの車の後部に追突したのです。

一見すると「前の事故を避けて停まっていたAさんに非はなく、追突したBさんが100%悪い」と思える状況。Aさん自身も、当初は「これは完全な追突被害事故だ」と信じて疑わなかったといいます。

確かに、結果だけを見れば「停まっていた車に追突された事故」です。一般道路上であれば、0:10(Aさん:Bさん)となる可能性が高いでしょう。

しかし、高速道路上においては、そう単純な話ではありませんでした。

追突されたAさんにも「2割」の過失

結論からお伝えすると、この事故は最終的に2:8(Aさん:Bさん)で決着しました。

理由は、「Aさんが走行車線に停車したまま、路肩へ寄せていなかった」こと。この一点で、Aさんにも過失が生じたのです。

「あれだけきちんと対応したのに、2割も付くんですか」

高速道路上の過失の考え方を説明すると、Aさんは戸惑いを隠せない様子でした。無理もありません。ぶつからずに停まり、器材も出し、通報もした。それでも、高速道路という場所は、そのわずかな“余地”を過失として見ます。

では、その“余地”とは何なのか。高速道路上での過失の考え方を整理します。

過失は「2つの段階」で検討される

原則として、高速道路の本線上での停車は認められていません。そのため過失割合は、大きく2つの段階で検討されることになります。

第一に、「なぜ停まったのか」です。

ガス欠や整備不良など、事前の点検で避けられたはずの事情で停まった場合は「落ち度のある停車」とされ、停まっていた側にも4割程度の過失が付くことがあります。一方、先行事故や渋滞などによるやむを得ない停車であれば、停車の事由そのものに落ち度はないと判断されます。

第二に、「停まった後に適切な対応をしたか」です。

やむを得ない停車であっても、路肩などへ退避できたのにしなかった場合や、停止表示器材を設置できたのに怠った場合には、停車側に2割程度の過失が認められることがあります。高速道路上に停車する場合は、事故防止の処置までがドライバーの責任です。

Aさんの停車は第一の段階では落ち度がなく、器材の設置も適切でした。過失が生じたのは第二の段階、「退避できたのに走行車線に留まり続けた」点だったわけです。

もし停車の原因がガス欠や点検不足による故障であれば、基本の過失割合は4:6(Aさん:Bさん)からスタートしていたでしょう。

このように高速道路上は危険なエリアだからこそ、ドライバーとして果たす責任も重く、かつそれを完璧に遂行しなければ、たとえ追突された事故でも過失を問われることがあるのです。

対策1:そもそも「停まる事態」を作らない

高速道路上の故障原因で最も多いのはタイヤのトラブルで、バッテリー上がり、オーバーヒート、燃料切れと続きます。その多くは、出発前の点検や早めの給油で防げるものです。

長距離を走る前には、タイヤの空気圧や残り溝、燃料の残量を確認する習慣をつけてください。あわせて、停止表示器材(三角表示板など)を積んでいるかも確認しておきましょう。器材設置は法律上の義務である一方、標準装備されていない車も多いためです。

対策2:もし停まってしまったら、後続車に「存在」を知らせる

自分の車が事故や故障を起こした場合に限らず、Aさんのように、前方の事故で停まらざるを得なくなった場合も器材設置義務は変わりません。

後続車から見えるのは、「本線上に停まっている車」という事実だけ。停まった理由がどうであれ、追突される危険は同じです。

大切なのは、自車の存在をいち早く知らせること、そして人が車から離れること。この2つです。次の順序で行動してください。

  1. ハザードランプを点灯し、急ブレーキを避けて、できる限り路肩や非常駐車帯へ車を寄せる
  2. 同乗者を先に、ガードレールの外側など安全な場所へ避難させる
  3. 後続車に十分注意しながら、発炎筒や停止表示器材を車の後方(50メートル以上が目安)に設置する
  4. 運転者も速やかにガードレールの外側などへ避難する
  5. 非常電話や道路緊急ダイヤル(#9910)、110番で通報する

補足したいのが、停止表示器材の設置です。これは道路交通法で定められた義務であり、自分に原因がない停車(前方の事故を避けるためやむを得ず停まった場合など)でも対象となります。怠れば「故障車両表示義務違反」として反則金や違反点数の対象となるうえ、過失割合の面でも不利に働くことがあります。「自分は悪くない停まり方だから関係ない」とはならない点に、注意が必要です。

ただし、法律上の義務であっても、命より優先されるものではありません。後続車が迫っているなど、設置作業そのものが危険な状況であれば、無理をせず避難を最優先してください。

そして、決して車内や車のそばに留まってはいけません。実は、処置を終えたAさんが車内へ戻って待機していたことも、安全面では避けたい行動でした。高速道路の死亡事故では、停止車両の中や周辺にいた人が後続車に追突され、命を落とすケースが後を絶ちません。過失割合も気になるかもしれませんが、まず命を守る行動が最優先です。

「被害者のはず」だった人ほど、問われている

高速道路で停車中の車が追突されたとき、問われるのは「停まっていたかどうか」ではありません。

「なぜ停まったのか」「その後どう行動したのか」この2つです。

私はこれまで、Aさんのように「自分は被害者だ」と信じて疑わなかった人が、思わぬ過失を告げられて言葉を失う場面を、何度も見てきました。その多くに共通しているのは「決して不注意な人ではなかった」ということです。

見落としていたのは、たった一つ。高速道路の本線上に留まること自体がリスクだ、という“前提”でした。

目の前の事態の対応に気を取られ、自身の安全を確保するという判断が疎かになってしまうことは、高速道路上では特に危険です。

長距離移動の前のひと手間の点検はもちろん、いざというときに「車から離れる」という基本的な判断を忘れないようにしましょう。

高速道路では、車に乗る前の事前準備と停まった後の判断が、自分の命も事故の責任も左右します。

参考:高速道路上での事故時の対応(NEXCO東日本)


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ