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タダで借りた代車で100%過失の事故、300万円超の賠償も…20代男性の保険に付いていた"切り札"

  • 2026.7.23
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

夏休みやお盆など、長距離の移動が増える時期には、レンタカーや代車といった「自分の車ではない車」を運転する機会も増えます。

そこで意外と見落とされがちなのが、「借りた車で事故を起こしたら、補償はどうなるのか?」という問題です。たとえ借りた車であっても、事故は事故。賠償額が数百万円にのぼることも珍しくありません。

今回は、私が損害保険会社の事案担当者として実際に対応した、サービス代車での事故事例をご紹介します。

無償で借りた代車で、300万円超の事故

私が担当した契約者のAさん(20代・男性)は、自身の車を修理に出している間、修理工場の好意で、無償の代車(コンパクトカー)を借りていました。

借りる期間は14日〜18日間程度の予定。ところが、Aさんはその代車で追突事故を起こしてしまいます。Aさんに100%の過失がある、複数台が絡む大きな事故で、相手方の損害額は概算300万円をゆうに超えていました。

もちろん、修理工場側も代車用の自動車保険を用意していましたが、代車の事故で工場側の保険を使えば、工場の次年度以降の保険料に影響が出る可能性があります。

Aさんは「普段からお世話になっている工場に、これ以上迷惑はかけられない」と、自身の自動車保険で対応することを選びました。

ここで活躍したのが、Aさんの自動車保険に付いていた「他車運転特約」でした。
この特約は、他人から臨時に借りた自家用8車種(乗用車や軽自動車、小型トラックなど、一般的な車の区分)を運転中に起こした事故について、自分の契約内容で補償できるものです。この特約により300万円を超える賠償にも対応でき、事故は無事解決に至りました。

ただし、他車運転特約の使用には注意点もあります。借りた車自体の損害を補償するには、ご自身の保険に「車両保険」が付帯されている必要があります。また、他車運転特約で下がるのは、車の持ち主ではなく、運転していた自分自身の契約の等級です。自分の車で事故を起こした場合と同じく事故有係数も適用されるため、翌年度以降の保険料は数年にわたって上がります。

「借りた車での事故だから、自分の等級には影響しない」というわけではありません。私は対応開始前に、Aさんにその旨を伝えました。

「それでも他車運転特約を使います。事故も自分が悪いですし、修理工場さんの信頼も裏切りたくないので」

Aさんの選択は、最後まで変わりませんでした。

借りた車で事故を起こす前に、確認しておきたい2つのこと

この事例からは2つのことが学べます。

1つ目は、車を借りるとき、その車にどんな補償が付いているかを確認することの重要性です。

代車なら借りる際に工場へ、レンタカーなら貸出時に店舗へ、補償の内容と自己負担の有無を聞いておきましょう。代車やレンタカーには補償が最低限しか付いていない場合もあり、損害額が補償の上限を超えると、超過分は自己負担になりかねません。

2つ目は、自分の自動車保険に他車運転特約が付いているか、補償の範囲を把握しておくことの重要性です。

個人契約の自動車保険には自動セットされていることが多い一方、付帯されていないケースや、内容を知らないまま契約している方も少なくありません。保険証券やマイページで確認するか、代理店・保険会社に問い合わせれば教えてもらえます。

この2つの確認は、自分の財布を守るだけでなく、車を貸してくれた相手との関係を守ることにもつながるのです。

レンタカーでも使える。ただし「対象外」に注意

他車運転特約が対象とするのは、代車だけではありません。レンタカーはもちろん、友人や知人の車、自治会などで共同利用している車も、「他人から臨時に借りた自家用8車種」であれば対象になり得ます。

ただし、対象外のケースには注意しましょう。自分や配偶者、同居の家族が所有する車、日常的に使っている車は「臨時に借りた他人の車」にあたらず対象外です。勤務先(会社)が所有する車を、その会社の業務のために運転していた場合も補償されません。

また車種の条件もあり、対象は自家用8車種のみで、2トンを超えるトラックや事業用(緑ナンバー)の車は対象外です。このほか、契約の運転者限定・年齢条件から外れる人が運転した場合や、持ち主に無断で借りていた場合も対象外となります。

もう一つ大切なのが、借りる期間です。他車運転特約で「臨時の借用」と認められる期間は保険会社によって異なります。今回のAさんのように長めに借りるときは、事前に自分の保険会社へ確認しておくと安心です。

なお、レンタカーの場合は通常、レンタカー会社側の補償を使うのが基本となります。他車運転特約は、それでも足りない場合の補完的な備えと位置づけると良いでしょう。

借りた車でも、責任は自分に

借りた車であっても、事故を起こせば運転者としての責任が生じます。「自分の車ではないから関係ない」では済まされません。

そして、車の貸し借りの背景には、お金では量れない信頼関係があります。事故の賠償に相手側の保険を使えば、貸してくれた相手の保険料にまで影響が及ぶかもしれません。他車運転特約は、自分の保険で賠償に対応することで、その信頼関係を守れる特約なのです。

Aさんが他車運転特約を使って守ったのは、お世話になっている修理工場との信頼そのものでした。

自分の保険がどこまで守ってくれるのかを、借りる前に知っておくこと。それが、いざというときの分かれ道になります。遠出が増えるシーズン。今一度、自分が加入する保険の内容を確認しておくことが大切です。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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