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坂本龍一が生前に力を注いだMRプロジェクト『KAGAMI』がついに日本初上演

  • 2026.6.26
『KAGAMI+』の会場の様子

「日本人は久しぶりにサカモトのライブを目撃することになる」

「『KAGAMI』を体験した観客は、非常にエモーショナルなリアクションをとる。彼のファンだけでなく、この作品で初めて坂本龍一の存在を知ったという人でも涙を流すことが多い。人々の心の中に深く刻み込まれる要素があるのだと思います」

そう語るのは、坂本とともにプロジェクトを制作したプロデューサーのトッド・エッカート。

トッド・エッカートアメリカのディレクター、プロデューサー。2016年にMR作品を制作するスタジオ〈Tin Drum〉を設立。制作を手がけた『The Life』は、世界初の大規模なMRパフォーマンス作品として話題を集めた。

『KAGAMI』は、生前に収録されたグランドピアノを演奏する坂本龍一の姿を、MR(複合現実)空間に3D映像として再現する作品だ。鍵盤を時に繊細に、時に激しく叩く指先、強くペダルを踏み込む足元、演奏しながら揺れる髪先まで。特殊なヘッドセットを装着した観客は、演奏に全身全霊を懸ける坂本のパフォーマンスを手が触れるほどの近さで体験することができる。

2023年、ニューヨークの文化施設〈ザ・シェッド〉での初演以来、ロンドン、マンチェスター、台北、シンガポール、メルボルン、イタリア、香港など世界各地で上演されてきた『KAGAMI』だが、この6月からついに日本での上演が実現。会場は、建築家・安藤忠雄が設計監修を務めた大阪の文化装置〈VS.(ヴイエス)〉だ。

「世界で一番好きな建築家が安藤忠雄です。『KAGAMI』はデザインも重要な要素なのですが、大規模な会場というのは実際に訪れると建築そのものにはがっかりさせられてしまうことも多い。これまでは〈ザ・シェッド〉やマンチェスターの〈ラウンドハウス〉など自分たちとつながりのある会場で上演してきました。日本でのプレミアを安藤が造ったスペースでできるのは素晴らしいことです。安藤の建築は都会的かつアーシーで、そこは坂本龍一の作品とも強く通じていると感じます」

『KAGAMI』のヘッドセット(簡易版)。装着すれば目の前にエモーショナルなライブが出現。

10代の頃に坂本の作品に出会い、多大な影響を受けてきたというトッド。19年に坂本に本プロジェクトを提案し、以降は互いにアイデアを交換しながら制作を進めたが、制作途中で坂本のがん再発が発覚する。

「それでも彼は作品のサウンドやオーディエンスの話になると、とても興奮して話してくれました。誰かとコラボレーションして作品を作り出すということは、彼の人生にとってそれくらい欠かせないことでした」

23年に他界した坂本だが、最後の十数年は日本国内でのライブ演奏は限られた機会しか実現しなかった。

「音楽というものの核は、何といっても演奏であり、パフォーマンス。彼の様々な活動の核にあったのも、ピアノとの関係性だったと思うのです。彼の演奏法はほかの誰とも比べられない。パワフルで、時にはものすごくデリケートで。私たちが収録した映像素材を観返したときに、撮影のミスかと勘違いしてしまったくらいペダルをガンガン踏んでいた。そうした彼の演奏を間近で観られるチャンスが『KAGAMI』です。日本の皆さんにとっても、久しぶりに彼の演奏を体験できる機会になると思います」

坂本が亡くなって3年以上が経つが、その意志を受け継ぐ様々なプロジェクトが現在も生き生きと継続している。『KAGAMI』は、その象徴と言える作品だ。

「ほとんどのアーティストが、新しいことへの挑戦よりも成功したことの繰り返しを選ぶ。しかし、リュウイチは好奇心に突き動かされていた。常にサウンドが持つ可能性に興奮していて、同じことをほとんど繰り返さなかった。『KAGAMI』はこれまで誰もやろうとしなかった試みです。それは、坂本龍一が世界やアートというものへ向けていた視点そのものでもあるのです」

Information

『KAGAMI+』

大阪の〈VS.〉にて6月27日から10月12日まで開催。

住所:大阪府大阪市北区大深町6−86 グラングリーン大阪 うめきた公園 ノースパーク VS.|地図
営:10時〜20時
休:月曜(祝日、連休の場合は祝日明け平日休)
料金:一般4,500円〜
HP:sakamoto-kagami.com

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