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「荷物、ここに預けていこう」と彼が私のトートだけをロッカーに入れて心細くなった話

  • 2026.6.25
ハウコレ

改札を出てすぐ、彼がコインロッカーの前で足を止めました。私のトートバッグを手に取ると、そのまま空いた扉の中へ入れてしまいます。自分のリュックは背負ったままです。同じように荷物を預けるのだと思っていたのに、扉に入れたのは私のバッグだけでした。

私の荷物だけが、ロッカーの中へ

「荷物、ここに預けていこう」

彼はそう言って、私のトートを奥へ押し込みました。「私のだけ?」と聞き返すと、彼は「うん、そのほうがいいから」とだけ答えて、もう歩き出しています。

理由は教えてくれません。空になった私の手と、ふくらんだままの彼のリュックを見比べて、置いていかれたような心地になりました。

はぐれないように歩く彼の、半歩先

長い坂を登る間、彼は半歩先を歩きました。振り返ってこちらを確かめるのに、何を考えているのかは言いません。雑貨店をのぞいても、私の手元ばかりを気にしている様子です。

荷物を持たされるのが嫌だったのか、それとも私の物がそんなに邪魔だったのか。聞きたいのに、機嫌をうかがう自分が情けなくて、私は当たり障りのない相づちを続けました。

リュックから出てきた、もう一つのバッグ

街を見下ろせるベンチに座ると、彼はリュックから布の包みを取り出しました。中から出てきたのは、軽いショルダーバッグです。「これ、使ってみて」。戸惑う私に、彼は続けました。「肩、痛いって言ってたから」。数日前に「この紐、肩に食い込んで痛いんだよね」とこぼしたのを、彼は覚えていました。重いトートを先に預けたのは、このためだったのです。

そして...

ロッカーに戻り新しいバッグに荷物を移すと、肩はずいぶん楽になりました。気遣いはうれしかったです。それでも、ロッカーの前で覚えた心細さは、すぐには消えてくれません。ひとこと、肩が楽になるようにと言ってくれていたら、私はあんなふうにうつむかずにすんだのにと思います。

(20代女性・会社員)

本人記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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