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第二子を死産したときにかけられた「早く忘れたほうがいい」の声。つらいときに届く励ましの言葉とどう対峙する?【心理士インタビュー】

  • 2026.6.19

【漫画】本編を読む

「赤ちゃんに無事に生まれてきてほしい」親なら誰もが願う当たり前の幸せが、これほどまでに遠く苦しいものになるなんて。『わたしが選んだ死産の話』(桜木きぬ:著、医療法人財団順和会山王病院長 藤井知行:監修/KADOKAWA)は、著者である桜木きぬさんの死産の体験を克明に描いた実録コミックだ。

待望の第二子を授かった著者を待ち受けていたのは、おなかの赤ちゃんの染色体異常「18トリソミー」の宣告だった。18トリソミーの胎児は治療が困難な重い心疾患により、自然流産となることが多い。また、たとえ生まれても生後1週間以内に約60%が死亡し、生後1年まで生存する子どもは10%未満、とも言われている。赤ちゃんを無事に産みたい願いと、過酷な未来への不安。引き裂かれるような思いの中で、著者が選んだのは「死産」という決断だった。

本作に基づき、過酷な現実に直面した当事者の心情や周囲とのかかわりについて、臨床心理士・白目みさえさんに話を聞いた。

※本記事には流産・死産に関する内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

――死産を経験した著者へ向けて「悲しい出来事は早く忘れたほうがいい」と周囲の方々が言葉をかけていました。周囲は著者を励ますために言っているようでしたが…このような声かけを、心理士としてどう感じましたか。

白目みさえさん(以下、白目):「早く忘れたほうがいい」というニュアンスを含む言葉は、言われた側にとっては今の自分を否定されたように感じられることがあると思います。忘れられない自分が悪いのではないか、苦しみをわかってもらえていないのではないか…そんな思いが湧き上がるのも自然なことです。作品を読んだ方の多くも、きぬさんの想いに共感されたと思います。

ただ、この言葉は必ずしも責める意図から出てくるものではない、とも感じます。

大切な人が苦しんでいる姿を見ると、まるで自分事のように苦しくなり、「早く楽になってほしい」と願います。その願いが、「早く忘れたほうがいい」のような言葉につながることもあるのだと思います。長く一緒に過ごす人だからこそ、そして大切だからこそ、解決を急いでしまう側面もあるのではないでしょうか。

――優しさからの言葉がうまく届かず、「なぜ早く忘れろと言うの?」と当事者が困惑してしまうこともあると思います。受け取り手はどう心の折り合いをつけていくといいでしょうか。

白目:大切なものを失った痛みを軽く扱われたように感じたのであれば、怒りが湧くのは当然です。それは自分の体験を守ろうとする心の防衛でもあります。

「折り合いをつける」というと、多くの人は「怒りを収めること」をゴールにしてしまいます。そして相手の気持ちを考えたり、自分の落ち度を探したりして、「怒り」を否定する方向へ向かおうとします。でもそれは逆効果です。

まずは「怒ってはいけない」と思わないでください。怒っていいのです。自分の体験を軽く扱われたのですから、まずは怒りましょう。そして、散々怒ったあと、少し落ち着いたところで、ようやく「相手の気持ち」の話になるのだと思います。

「もしかしたら、早く楽になってほしかったのかな」という視点は、一度きちんと怒り切らないと、なかなか受け入れられません。

相手の未熟さや不器用さを理解することと、自分の怒りをなかったことにすることは、まったく別です。相手に悪気はなかったかもしれない。でもそれはそれとして、自分は怒りを感じた。それでいいのです。その両方を抱えられるようになることが、「折り合いをつける」ということなのだと思います。

取材・文=あまみん

白目みさえ(しろめ・みさえ)

臨床心理士、公認心理師、漫画家。精神科での臨床業務に従事しながら、自身の育児や仕事の体験を独自の視点で切り取った漫画を執筆。主な著書は『白目むきながら心理カウンセラーやってます』(竹書房)、『子育てしたら白目になりました』『放置子の面倒を見るのは誰ですか?』(KADOKAWA)など。

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