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個展「杉本博司 絶滅写真」が、東京国立近代美術館にて開催

  • 2026.6.19
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現代美術作家の杉本博司さんの個展「杉本博司 絶滅写真」が、東京国立近代美術館にて開催。1970年代後半から現在までに制作された銀塩写真、約60点を公開されています。デジタル写真が普及する現代において、「絶滅が危惧される」ともいわれる伝統的な技法に光を当て、銀塩写真という表現の本質に迫る注目の展覧会です。

深い哲学が込められた作品群から銀塩写真の真髄に迫る個展「杉本博司 絶滅写真」とは?

杉本博司《ポコット族》 2025年 (C)Hiroshi Sugimoto、Courtesy of Gallery Koyanagi

銀塩写真というメディアの終焉と、作家自身の活動の終幕を見据え、“絶滅”という言葉を冠した杉本博司さんの個展「杉本博司 絶滅写真」。3章構成で全13シリーズが発表される同展では、杉本さんの作品を時系列に辿ります。初期の代表作シリーズとして知られる「ジオラマ」「海景」、そして「スタイアライズド・スカルプチャー」「Opticks」では未発表の作品が公開に。

杉本さんの世界観の出発点を紐解く第1章「時間・光・記憶」

杉本博司《アビシニアコロブス》 1980 年 (C)Hiroshi Sugimoto、Courtesy of Gallery Koyanagi

第1章では1970〜80年代に制作された初期作品であり、杉本さんの評価を確立した「ジオラマ」「劇場」「海景」の3つのシリーズを中心に展開。

アメリカ自然史博物館のジオラマ展示を大判カメラで撮影した、杉本さんのデビュー作「ジオラマ」。本来は動くものを静止して捉える写真が、ここでは動かない剥製の姿をあたかも命ある動物の一瞬のように見せる装置として機能しています。「どんな虚像でも、一度写真に撮ってしまえば、実像になるのだ」という作家の言葉が、このシリーズの核心を端的に表しています。今回は新作を加えた構成により、1975年に始まってから密かに構想されてきたという人類史を巡る深淵なストーリーが、半世紀を超えてついに結実しました。

杉本博司《 U.A. プレイハウス、ニューヨーク》1978 年 (C)Hiroshi Sugimoto、Courtesy of Gallery Koyanagi

「劇場」では、映画1本を始まりから終わりまで長時間露光で撮影することで、物語を真っ白に輝く四角い光へと還元しています。映画の黄金時代に建てられた劇場を舞台に、かつての繁栄を伝える豪華な装飾が光の中に浮かび上がります。

杉本博司《カリブ海、ジャマイカ》 1980 年 (C)Hiroshi Sugimoto、Courtesy of Gallery Koyanagi

「海景」は、水平線だけを画面に収め、それ以外の要素を一切排除した作品群です。「原始人の見ていた風景を、現代人も同じように見ることは可能か」という問いを出発点に、1980年の第一作以降、世界各地の海で同じ構図を撮り続けています。

作品世界が深化していくプロセスを紹介する第2章「観念の形」

杉本博司《サヴォア邸》1998年 (C)Hiroshi Sugimoto、Courtesy of Gallery Koyanagi

1990年代末以降に発表されたシリーズを紹介する第2章は、人間の知性や想像力がつくりだしたさまざまな“かたち”が主題になっています。

「建築」では、カメラの焦点距離を“無限の倍”に設定し、20世紀のモダニズム建築を意図的にぼかして撮影。「建築が建つ前の、建築家の脳内ヴィジョンが再現できるのでは」という発想から生まれた手法により、装飾をそぎ落としたモダニズム建築の本質的な“かたち”が浮かび上がります。

「スタイアライズド・スカルプチャー」ではディオールにフィーチャー

杉本博司《スタイアライズド・スカルプチャー 120[クリスチャン・ディオール、Bar、1947]》 2025 年 (C)Hiroshi Sugimoto、Object(C)Christian Dior Couture collection, Paris

「スタイアライズド・スカルプチャー」は、ファッションを「人体とそれを包む人工皮膚を近代彫刻としてみる」という視点で捉えたシリーズ。身体を保護するための毛皮に始まった衣服の歴史は、素材やかたちを多様化させながら、やがて装うこと自体を目的として変貌を遂げてきました。身体という最も身近な自然と、頭の中からつくり出された衣服という人工物が一体化した、ハイブリッドな存在としての人間像を写し出しています。

ここでは、これまで未公開だったディオールの「バー」ジャケットと「ソワレ」ドレス、2枚の写真を展示。これらは1947年春夏 コレクションにて発表されたクリエイションで、クリスチャン・ディオールの最初のコレクションであり、象徴的な「ニュールック」の成功を収めたことで知られるショーで披露されたものです。杉本さんは、光と影の繊細な相互作用によって形づくられる彫刻としてのファッションにアプローチしています。

杉本博司《観念の形 0003 ディニ曲面:擬球をねじって得られる負の定曲率曲面》2004年 (C)Hiroshi Sugimoto、Courtesy of Gallery Koyanagi

デザイナーになる以前にギャラリストであり、アートコレクターでもあった創設者クリスチャン・ディオールと、コンセプチュアルな厳格さと徹底した精度を追求する写真家の杉本博司さん、それぞれの分野におけるふたりの巨匠が、異なる時代と文化に属しながらもフォルムの普遍性を追求するという対話を生み出します。

“絶滅”のヴィジョンを追求する第3章「絶滅写真」

杉本博司《フォトジェニック・ドローイング017 屋根の輪郭線 レイコック・アビー 1835–1839 年頃》 2008年 (C)Hiroshi Sugimoto、Courtesy of Gallery Koyanagi

第3章では、銀塩写真の始原と終焉を巡る近作と新作を含めた作品を、6つのシリーズで紹介。

「フォトジェニック・ドローイング」では、写真術の祖タルボットが残した陰画から、タルボット自身も目にしなかった陽画をつくることを試みます。「銀塩写真の終焉そのものを看取るべく、自ら買って出た葬儀委員長として、写真術の始祖タルボットの陰画を焼くべく、焼き場(暗室)で薬物の匂いを香の薫りと思いなして作業に励んでいる」と語る杉本さんの姿勢が、同展のタイトル“絶滅写真”の意味を象徴的に伝えます。

杉本博司《ダイアナ、プリンセス・オブ・ウェールズ》 1999年 (C)Hiroshi Sugimoto、Courtesy of Gallery Koyanagi

ロンドンのマダム・タッソー蝋人形館などで撮影した「肖像」。生身の人間から容貌を映し取る蝋人形の技法は、レンズの前の存在をイメージとして定着させる写真と本質的に重なるものがあり、「ジオラマ」の系譜を受け継ぎながら写真の始原へと遡ります。

杉本博司《Opticks 087》 2025年 (C)Hiroshi Sugimoto、Courtesy of Gallery Koyanagi

ニュートンのプリズム実験を再現して光の色彩を観測した「Opticks」では、ポラロイドフィルムとデジタルプロセスを組み合わせた杉本さんにとって異例の手法を採用。「光を絵の具として使った新しい絵(ペインティング)を描くことができたように思える」という杉本さんの言葉通り、銀塩写真の枠を超えた表現が提示されています。

未公開資料「スギモトノート」が初公開

所蔵品ギャラリー3階では、サテライト展示「劇場・海景・スギモトノート」も同時開催。館所蔵の「劇場」「海景」シリーズ全13点に加え、1970年代半ばから記録が始まる未公開資料「スギモトノート」が初めて公開されます。撮影時および暗室での作業工程の覚書を綴ったこのノートは、杉本さんの職人的な側面を伝える貴重な資料です。実物の展示のほか、来場者が実際にページをめくりながら閲覧できるレプリカも用意されるそうです。

「杉本博司 絶滅写真」は6月16日(火)から開催

“絶滅”という主題のもと、杉本博司さんの作品世界を辿る個展「杉本博司 絶滅写真」は、本日6月16日(火)から9月13日(日)まで開催。「写真というメディアがデジタルへと移行するとき、何が変容し何が失われようとしているのか?」銀塩写真の絶滅を見据えながら、人類史的なスケールへと展開する杉本さんの問いを感じ取ってみてください。

【杉本博司 絶滅写真】
日時/2026年6月16日(火)~9月13日(日)
時間/10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
※金曜・土曜は10:00~20:00
休館日/月曜日、7月21日
※7月20日(祝・月)はオープン
会場/東京国立近代美術館1階 企画展ギャラリー
所在地/東京都千代田区北の丸公園3-1
主催/東京国立近代美術館、日本経済新聞社
特別協賛/DIOR
協賛/セイコーグループ、サンエムカラー
特別協力/公益財団法人小田原文化財団、ギャラリー小柳
観覧料/一般¥2,300(¥2,100)、大学生¥1,200(¥1,000)、高校生¥700(¥500)
※( )内は20名以上の団体料金、および前売券料金
※前売券販売期間/~2026年6月15日(月)23:59まで
※中学生以下、障害者手帳を提示の方とその付添者(1名)は無料
※入館当日に限り、同観覧料で所蔵作品展「MOMATコレクション」(2~4階)も観覧可能
TEL/050-5541-8600(ハローダイヤル)
URL/art.nikkei.com/sugimoto

【開催記念特別講演会「絶滅について」】

日時/2026年6月20日(土)14:00~15:30
登壇者:杉本博司、浅田彰(京都芸術大学教授・批評家)、増田玲(当館 主任研究員)
会場/東京国立近代美術館 地下1階講堂

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