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「本当に、もう限界なんです」役職を押し付け合う集落で泣きそうな女性。だが、移住したばかりの私が見た男気とは

  • 2026.6.19

移住8ヶ月、初めて出た会合

田舎暮らしに憧れて、この集落に越してきた。移って八ヶ月、初めて自治会の会合に顔を出した日のことだ。

公民館の畳に十数人が車座になっていた。議題が神社の行事を決める役職の交代に移った途端、空気が重くなった。

長年その役を務めてきた六十代の女性が、顔を真っ赤にして口を開いた。

「もう私、何年もやってきました。今年こそ、どなたか代わってもらえませんか」

声が震えていた。今にも泣きそうな顔だった。

「行事の段取りも、隣の集落との調整も、全部一人で抱えてきたんです。本当に、もう限界なんです」

誰も目を合わせない。天井を見つめる人、お茶をすする人。重い沈黙だけが部屋に居座っていた。

誰も手を挙げない沈黙

司会役の男性が、困り顔で場を見回した。

「どなたか、いかがでしょう。順番ということもありますし」

「うちは共働きで、とても」

「私も足が悪くて、神社の掃除はちょっと」

口々に言い訳が漏れる。誰一人、引き受けようとはしない。いわゆる、面倒な役の押し付け合いだった。

女性はうつむき、手を握りしめている。私はよそ者として隅に座ったまま、内心でため息をついていた。

(嫌な集落に来てしまったな。これからやっていけるんだろうか)

気まずさが、首筋にまとわりつくようだった。三十分が過ぎても、沈黙は溶けなかった。

一人の男気で空気が変わった

そのときだった。窓際にいた六十代後半の、日に焼けた男性がゆっくり手を挙げた。

「誰もやらんなら、わしがやるわ」

あっさりとした口調だった。気負いも、恩着せがましさもない。

「あんたももう十分やった。次はわしの番でええ」

部屋の空気が、音を立てて変わった。女性が顔を上げ、その目にみるみる涙が盛り上がる。

「……ありがとうございます。本当に、ありがとうございます」

深々と頭を下げる彼女に、男性は照れたように手を振った。重かった畳の上に、ほっとした笑いがこぼれる。私は、その背中から目が離せなかった。誰も損をしたがらない場で、一人だけ平然と手を挙げた人。よそ者の私が抱いていた集落の印象が、その瞬間に裏返った。

気づけば、私は自分から声を出していた。

「あの、私も手伝います。越してきたばかりですが、力仕事ならやれますので」

男性が振り向き、にっと笑った。

「お、新顔さんか。ええなあ、頼むわ」

嫌な集落だと思っていた。けれど本当に嫌なのは、誰も動かない空気のほうだった。一人が動けば、それは変わる。そう教えてくれた、移住して一番忘れられない夜になった。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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