1. トップ
  2. 「ミラノデザインウィーク2026」初参加エディターの現地取材レポート

「ミラノデザインウィーク2026」初参加エディターの現地取材レポート

  • 2026.6.15

毎年4月にイタリア・ミラノで開催される、デザインイベント「ミラノデザインウィーク」。ELLE DECORに加わって以来、ずっと訪れてみたかったこのイベントに、ついに今年、初めて参加することができました。今回は、実際に訪れて感じたことや、「ミラノサローネ」の会場、そしてミラノ市内で開催されたさまざまな展示を巡るなかで見つけた、気になるデザイントレンドをお届けします。

ミラノサローネ会場は、とにかく広い!16ホールの広大な敷地に、世界各国のさまざまなブランドがブースを出展。中東情勢などが不安視されたものの、今年は167カ国から316,342人が来場した。 Courtesy Salone del Mobile.Milano

「ミラノデザインウィーク」とは?

「ミラノデザインウィーク」とは、ロー・フィエラミラノという巨大なイベント会場で開催される家具の見本市「ミラノサローネ国際家具見本市」(通称:ミラノサローネ)と、同時期にミラノ市内各所で開催される展示やイベント「フォーリサローネ」を合わせた総称です。期間中は各国から家具ブランド関係者やデザイナー、バイヤー、ジャーナリストが集結。新作発表やイベントが数多く開催され、 インテリアとデザインの最前線を体感できる1週間となります。

ミラノ名物の路面電車にもサローネのラッピングが! Courtesy Salone del Mobile.Milano

コレクタブルな家具への熱い視線

サローネ・ラリタスの会場風景。 Saverio Lombardi Vallauri

まずは本会場となる「ミラノサローネ」のハイライトから。今年の大きな話題のひとつが「サローネ・ラリタス」でした。

ミラノサローネといえば、家具ブランドが新作をいち早くプレゼンするいわば家具の見本市として知られていますが、この「サローネ・ラリタス」はリミテッドエディションや希少なヴィンテージ、アート性の高いコレクタブルな家具を提案するという初の試みです。出展していたギャラリーはミラノの老舗ギャラリー「ニルファー」やロンドンの「マックス・ラドフォード・ギャラリー」など感度の高いラインナップ。これまでは一部のコレクターが視線を向けていたコレクタブルな家具がB2B市場に飛び込み、建築家やインテリアデザイナー、コントラクトの業界関係者など、国際的なサプライチェーンと対峙するという新しい構造が生まれていました。

会場のデザインはフォルマファンタズマが手掛けており、単なるブースではなくアートギャラリーのように鑑賞できたのも魅力の一つだったと感じます。ホテルなどの公共施設やレジデンスに、アートと同様にコレクタブルな家具を配するという、昨今の世界的な動向をいち早くキャッチした企画展でした。

ドバイのギャラリー「COLLECTIONAL」は、オランダを拠点に活動するデザイナーのサビーヌ・マルセリスとタッグを組み、限定作品を展示。 SAVERIO LOMBARDI VALLAURI

気になったのは、懐かしさを感じる光沢仕上げ

「ミノッティ」のチェア“ジュリエッタ”。 Hearst Owned
「タッキーニ」のチェア“ピグレコ” Hearst Owned

サローネ会場を巡り、ひときわ印象的だったのが、ラッカーや漆といった光沢感のある素材です。それも全面に光沢感を押し出すというよりも、家具の一部分に用いたり、木材やファブリックといった相反するテクスチャーと合わせてスタイリングするというパターンが目立っていました。

特に「ミノッティ」で発表されたイノダ+スバイエによるチェア“ジュリエッタ”や、「タッキーニ」のトビア・スカルパによる“ピグレコ”は、張り地にベロアを使用。クラシックでありながらも新しいムードをまとっていて、非常に目を惹きました。「タッキーニ」はラッカー仕上げだけで11色の新色を発表。光沢感のある仕上げにはますます注目が集まりそうです。

「B&B イタリア」より、マイケル・アナスタシアデスの“メトリック”。限界まで削り出した極細のフォルムが凛としていて惚れ惚れ。 Hearst Owned
英国発の「エスタブリッシュ・サンズ」の展示ブース。ロウエッジによる“スタック”には2色の新色が追加された。 Hearst Owned

久しぶりに「B&B イタリア」がサローネ会場に出展したことも大きな話題に。2019年に「Flos B&B Italia Group」の発表として参加したケースを除くと、単独でのサローネ会場への出展は25年ぶり。フォルマファンタズマが手掛けた展示空間は、重厚感があり展示空間というよりも建築的な印象を受けました。その中に各デザイナーの新作がシンプルに配され、ディテールにじっくり向き合うことができました。

もう一つ、サローネ会場で気になったブランドはイギリス発の「エスタブリッシュド&サンズ」。ロウエッジの収納“スタック”や、田村奈緒による照明“Tiki”など、アイキャッチーで今すぐ欲しい!というような購買欲が沸くようなプレイフルなデザインが多かったです。

“超・体験型”の展示

ARKET

ミラノ市内の各所の特別会場やフラッグシップストアで開催される「フォーリサローネ」では、多くのブランドが“体験”を重視した企画を打ち出していました。デザイン関係者だけでなく一般の方々も楽しめるような仕掛けが街には溢れていましたが、その代表例とも言えるのが、ファッションブランドのアーケットによる「メリーゴーランド」です。SNS上で瞬く間に拡散され、訪れてみると家族連れで賑わい、まるで昔からそこにあったかのように風景に溶け込んでいました。作品を手掛けたのは、ニューヨークを拠点に活動するアーティストのライラ・ゴハールで、来場者は実際に乗って作品を体験することができます。木馬の代わりに巨大な野菜や果物が並ぶユニークな回転木馬は、誰もが楽しめる“民主的なデザイン”の象徴。1700年代後半にドイツで製作されたアンティークを活用している点にも、このプロジェクトの奥行きが感じられました。

中庭ではスウェーデンのマーケットから着想を得た特別なマーケットが開催。イタリアのローカルなチーズなどが購入できました。 Courtesy of IKEA

毎年ミラノデザインウィークに参加している「イケア」の展示も、とてもユニークでした。“Food For Thought”というテーマで、来場者が体験を通して食とデザインが日常生活にどのような影響を与えているのかを探るインスタレーションです。ハイライトは気鋭のインテリアデザイナーとシェフがデュオを組み、5組に分かれて1つの部屋とメニューを共同でデザインし、来場者に体験してもらうというもの。ベッドルームで食事をしたり、コンパクトなキッチンで料理をしたりという、現代の多様な住環境における食と暮らしの関係を、軽やかに表現していたのが印象的でした。

イギリス出身のデザイナー、シャーロット・テイラーも参加。ベッドルームのスタイリングを披露した。 Courtesy of IKEA

EDIDA2026の受賞式も開催

今年のデザイナー・オブ・ザ・イヤーは、アルゼンチン出身のクリスチャン・モハデッドが受賞。 Hearst Owned

世界各国の『ELLE DECOR』の編集長が優れたデザインを選出する「エル・デコ インターナショナル デザイン アワード」(通称:EDIDA)の授賞式も開催されました。会場は安藤忠雄が手掛けた、アルマーニ / テアトロ。なかでも注目を集めた「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」には、アルゼンチン出身のクリスチャン・モハデッドが選出。モハデッドは、ロロ・ピアーナやルイ・ヴィトンなどとの協業で注目を浴び、今年はモルテーニから新作アームチェアを発表したりと、さらなる活躍が期待されています。

『ELLE DECOR』8月号では、デザインウィークのハイライトをフューチャー!

毎日の歩数計は2万歩超えで、とにかく動き回ったミラノデザインウィーク。それでも行けなかった展示や時間的に諦めたものも多く、改めてその圧倒的な規模を実感しました。今回紹介したのは、そのほんの一部。『ELLE DECOR』8月号(7月7日発売)では、ミラノデザインウィークの最新トレンドや注目の展示を、さらに詳しくお届けします。ぜひ併せて楽しんでください。

元記事で読む
の記事をもっとみる