1. トップ
  2. ヘルスケア
  3. 『文字が見えにくい…』“ただの老眼”と放置した50代男性→後日、宣告された“恐ろしい病名”に「もっと早く受診していれば…」

『文字が見えにくい…』“ただの老眼”と放置した50代男性→後日、宣告された“恐ろしい病名”に「もっと早く受診していれば…」

  • 2026.7.18
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさまこんにちは。周術期管理において、あらゆる病気をお持ちの患者様を日々安全にお守りしている麻酔科専門医の松岡雄治です。

「最近、スマホやカレンダーの文字が見えにくいけれど、まあ老眼だろう。こないだ買った目に良いサプリでも飲んでおくか」。大好きな趣味や仕事に忙しいFさん(50代男性)は、家族の「一度、眼科で診てもらったら?」という心配を笑い飛ばしていました。

しかし、その「見えにくさ」は老眼ではなく、目の奥を蝕む「新生血管型加齢黄斑変性(AMD)」という病気だったのです。現在は眼球への注射治療により失明の危機は脱しましたが、一度ダメージを受けた網膜は完全には元に戻らず、「あの時、ただの老眼だと油断せず、もっと早く受診していれば…」と、歪んで見えるカレンダーを見るたびに深い後悔を口にしています。

加齢黄斑変性は網膜の中心部を襲う「もろい血管の暴走」

なぜ「ただの老眼」と放置することが、失明リスクを招くほど致命的なのでしょうか。黄斑というのは、網膜の中心とも言える部分で、視力に大きく関与しています。かつては欧米に比べ我が国では少なかったのですが、高齢化や生活習慣の変化により増加しており、今では成人の失明原因の第4位です。50歳以上によく見られます。

この病気は、以下のように進行します。

【中心視界が破壊されるフロー】

  1. 老廃物の蓄積と異常:加齢などの影響で、網膜の下に老廃物が溜まる、あるいは血管などが発達した層が分厚くなるなどの機能異常が生じます。
  2. 異常な血管の発生:傷ついた組織を補おうとして、網膜の下から「新生血管」という、非常に脆くて破れやすい異常な血管が伸びてきます。
  3. 出血とむくみの発生:新生血管から水分が漏れ出したり、血管が破れて出血を起こしたりすることで、網膜に急激なむくみや腫れが生じます。
  4. 中心視界の破壊:むくみや出血が、カメラのフィルムの中心にあたる「黄斑」の細胞を物理的に破壊し、不可逆的な視力低下を引き起こします。

「予防サプリ」と手遅れな「新生血管」の危険な境界線

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「ちょっと目がかすむくらいで眼科に行くのは面倒だ」「ネットで評判のルテインを飲んでおけばそのうち良くなるだろう」。忙しい日々の中でご自身の小さな不調をやり過ごしてしまうのは、無理もありません。

目の健康維持に役立つとされるルテインなどの抗酸化サプリメントは、病気の「発症前」に進行を予防する目的であれば、確かに科学的根拠が認められています(※喫煙歴のある方は一部の成分選びに注意が必要です)。

しかし、すでに異常な血管が生えてしまっている「発症後」の段階に入ると、サプリメントだけで病気の進行や出血を止めることはもはや難しくなってしまっています。

さらに近年、日本人には欧米人のように老廃物が溜まらなくても、突然この病気を発症するケースが半数近くに上ることがわかっています。つまり、「健康診断で眼底の異常を指摘されていないから大丈夫」という思い込みは通用しないのです。

重症化する前に、確認すべき3つのサイン

老眼の「ピントが合わない」というかすみと、視細胞が破壊されて元に戻らなくなる加齢黄斑変性を見分けるために、以下の3つのサインを「片目ずつ」確認してください。

人間は両目で見ていると、片方の目の視野が欠けたり歪んだりしていても、もう片方の健康な目と脳がその欠陥を自動的に「補正」してしまうため、病気に気づきにくいという恐ろしい特徴があります。このメカニズムを1行加えることで、セルフチェックの実行率が劇的に上がります。

1. カレンダーや障子の「直線が波打つように歪んで見える」

網膜の中心がむくみや出血で凸凹に変形している証拠です。本来まっすぐなはずの線が歪んだり曲がったりして見える症状です(変視症)。

2. 本を読むとき「見ようとする中心だけが暗く欠ける」

視野の周囲は見えるのに、文字を読もうと注視したその中心の1点だけが黒く塗りつぶされたように見えなくなる症状です(中心暗点)。

3. 視力が急激に低下し「サプリを飲んでも全く改善しない」

老眼は年単位で緩やかに進みますが、異常な血管からの出血が起きると、数日から数週間の単位で一気に視力が落ちてしまうケースがあります。

見え方に違和感を覚えたらお早めの受診を

「目が少し見えにくいくらいで眼科を受診するのは気が引ける」。そうやって受診を後回しにしてしまうのは実際にはよくあることです。

特に、「急に線が歪んで見えるようになった」「数日で視界の中心が暗くなった」という場合は、一刻を争うサインです。その場合、週明けを待たずに、できるだけ早く眼科を受診してください。

現在では、この病気が進行してしまった場合でも、異常な血管の成長を抑えるお薬を直接眼球に注射する「抗VEGF薬硝子体内注射」という治療が確立されています。あなたの大切な日常と、大切な人の笑顔を鮮やかに見つめ続けるために、限界まで我慢せず、早めに専門医を頼ってください。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ