1. トップ
  2. ヘルスケア
  3. 医師から『心筋梗塞』と宣告された50代男性→数日前から、身体に起きていた“思わぬ異変”に「あの時、油断しなければ…」

医師から『心筋梗塞』と宣告された50代男性→数日前から、身体に起きていた“思わぬ異変”に「あの時、油断しなければ…」

  • 2026.7.8
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさまこんにちは。心臓手術にも日々向き合う麻酔科専門医の松岡です。

今回ご紹介するのは、肩こりや歯の痛みを放置して、心筋梗塞に至ったケースです。

「最近、肩こりがひどいし奥歯も痛む。仕事が忙しいから、週末はマッサージか歯医者、どちらかくらい行こうかな」。Aさん(50代男性)は、家族に「一度病院へ行ったら?」と勧められても、「そうだなあ」と生返事をしてやり過ごしていました。

しかし数日後、Aさん自宅で突然意識を失い救急搬送されます。診断は「心筋梗塞」。胸の痛みは全くなかったのに、心臓の血管は完全に詰まっていました。一命は取り留めたものの、心機能は低下し、一生続く薬の服用と再発の発作に怯える制限だらけの日常に。

「あの時、油断しなければ」と後悔しても、失われた健康は簡単には戻りません。一体何が起きていたのか解説しましょう。

痛い場所に原因がない?脳が騙される「配線トラブル」のメカニズム

なぜ「ただの肩こりや歯痛」という油断が、心停止という致命的な事態を招くのでしょうか。それは、心臓の悲鳴を脳が別の場所の痛みだと勘違いしてしまう「放散痛」という人体のエラーが起きているからです。

【放散痛が命の危機を見逃させるフロー】

  • 心臓からのSOS発生:心筋梗塞などで心臓の筋肉が酸欠になると、強い痛みの信号が発生します。
  • 脊髄での配線の混線:心臓の神経は、左肩や腕、顎や奥歯からくる神経と、脊髄の近い場所を通って脳へ向かいます。
  • 脳の勘違い:強い心臓の痛みの信号を受信した脳は、配線が近い「左肩や奥歯が痛い」と錯覚してしまいます。

「ただの肩こり・虫歯」と「心臓の悲鳴」の境界線

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「肩や歯が痛いなら、整形外科や歯医者に行くのが普通だ」「仕事で疲れているから、まずはマッサージで様子を見たい」。そう考えるのはごく自然な心理です。痛い場所に原因があると考えて、循環器内科を受診しないとしても、無理もありません。

しかし、 ぜひお伝えしたい事実があります。心筋梗塞や狭心症というと「胸をかきむしるような痛み」を想像しがちですが、実際には「のどやあご、左肩や左腕、背中、歯が痛む」といった非定型的な症状(放散痛)だけが現れるケースも少なくありません。特に高齢者や糖尿病の患者さんでは、神経の障害が起こるなどして、胸の痛みを感じにくいことがあると知られています。

ここで重要なのは、「ただの肩こりや虫歯」と「危険な放散痛」の境界線です。整形外科的な痛みは一般的に、「腕を回した時」に痛み、虫歯は「冷たいものを飲んだ時」に痛みます。しかし、心臓からくる放散痛は、階段を登った時や重い荷物を持った時など「心臓に負担がかかったタイミング」で肩や歯が痛み出し、休むとスッと引いていくのが特徴です。この違いを知っていれば、少しの工夫で健康な日常を守ることができたかもしれません。

重症化する前に、確認すべき3つのサイン

心筋梗塞に至る前に、ご自身の痛みのタイミングを振り返ってみてください。以下のサインがある場合、ただの疲れや虫歯ではなく、心臓の血管が詰まりかけている可能性があります。

1. 階段や早歩きで、左肩や奥歯、下あごが痛む

運動によって心臓の筋肉が酸欠状態になり、悲鳴を上げているサインかもしれません。

2. 休むと数分で痛みが消える

心臓への負担が減ると血流が一時的に回復するため、痛みが引くという危険な前兆のおそれがあります。

3. 胃の痛みや吐き気を伴う

心臓の虚血が、みぞおち・胃の痛みとして錯覚されている可能性があります。また、心臓の血流が途絶える事態に陥ると、自律神経が強く刺激されることで嘔気が出ることもあります。緊急性の高いサインの可能性があります。

肩や歯の痛みは要注意、違和感がある場合は循環器内科を

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「胸は痛くないから、心臓の病気ではないはず」と見て見ぬふりをしてしまうのは、無理もないことです。

しかし、 放散痛のサインを早期に発見できれば、心筋梗塞に至る前に治療し、致命的な事態を防ぐことができるかもしれません。「運動した時だけ、なぜか肩や奥歯が痛むな」と感じたら、マッサージや歯科に行くだけでなく、お近くの循環器内科にご相談ください。

大げさではないかと心配する必要はありません。不安を取り除き、安心して過ごせる健康な日常を守るためにもお気軽に受診してください。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

の記事をもっとみる