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『退職金1,500万』を受け取った60代男性→「当面使う予定がないから」と投資に回すが…4年後に直撃した“想定外の事態”

  • 2026.7.17
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさま、こんにちは。元銀行員の金融ライター・池田です。

ある程度まとまった貯蓄がある人や、退職後も収入が見込まれる人は、「退職金を運用に回そう」と考えるケースも多いでしょう。

しかし、老後の支出は生活費のみではないため、手元資金の不足には注意が必要です。

今回は、「当面使う予定がない」と退職金1,500万円を全額運用に充てたものの、4年後に後悔することとなった男性の事例を紹介します。

退職金1,500万円を受け取った男性

60歳の男性・Aさん(仮名)は看護師として働いていた市民病院を退職し、退職金1,500万円を受け取りました。

Aさんは妻と二人暮らしであり、貯蓄は1,000万円ほど。

退職後は年金受給を開始する65歳までのつなぎとして、新しくオープンするナーシングホームで夜勤バイトをすることに決めていました。バイトの収入は毎月約9万円。夫婦二人の生活費には約15万円不足するため、その分は貯蓄で対応する予定でした。貯蓄を毎月15万円ずつ切り崩すと、5年間で900万円になる計算です。

「年金受給までの生活費は今の貯蓄1,000万円で足りそうだし、退職金は当面使う予定がないから投資に回そう」

そう考えたAさんは、NISA口座の年間投資枠(最大360万円)を使いつつ、残りの大部分は通常の課税口座(特定口座)に充てる形で、退職金の1,500万円全額を投資信託の購入に充てました。

その後、想定外の支出が続々と…

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

Aさんが退職して間もなく、自宅の屋根と外壁の修繕が必要になりました。

また、妻の病気が発覚し、入院・手術後はリハビリ通院を開始。さらに、車の故障により中古車も購入しました。

毎月生活費として貯蓄から取り崩す15万円に加え、その他の突発的な支出や医療費などを支払ったところ、退職から4年目には1,000万円あった貯蓄が底をついてしまったのです。

「年金受給までの5年間は大丈夫だと思っていたのに、残り1年はどうすれば…」

結局、Aさんは退職金で購入した投資信託を売却することを決意します。

売却時、投資信託は約13万円のマイナスに

Aさんが1年前に投資信託の運用状況を確認した際は、元本1,500万円に対して100万円ほどの利益が出ていました。

しかし、売却の手続き時点では約13万円のマイナスに。

「“もう少し待てば相場が回復するかもしれない”という思いもありました。しかし、手元現金がなくなってしまった焦りや、これ以上資金を減らしたくないという思いが強く、13万円程度の損失なら…と。結果としてマイナスになってしまいましたが、全額を売却することにしたんです」

Aさんは当時を振り返って、「生活費以外の支出を甘く見積もり、投資に回しすぎてしまったのが失敗でした。本来なら、足りない数百万円分だけを取り崩す(部分売却する)こともできたのですが、当時は手元資金が底を突いた焦りと、相場下落への恐怖でパニックになり、これ以上赤字を増やしたくない一心で全額を解約(狼狽売り)してしまったんです」と、知識不足と心理的な焦りが重なった後悔を口にしていました。

退職後のまとまった支出に注意

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

老後は医療費や介護費のほか、住宅の修繕やリフォームの費用、家電・車の買い替え費用などのまとまった支出が発生する可能性も。親や配偶者に万が一のことがあった場合は、葬儀代やお墓代も必要となります。

そのため、「退職金は今すぐ使わないから」と全額を運用してしまうと、Aさんのように手元資金が不足してしまう可能性も。

退職金の運用を検討する際は、あらかじめ一部を臨時の支出用に分けて貯蓄しておき、残りの金額の範囲で運用金額を設定するのも1つの方法です。また、円建ての定期預金や個人向け国債は中途解約により利息メリットは減少してしまうものの、基本的に元本割れのリスクはありません。(※個人向け国債の中途換金は購入後1年経過の条件あり)

投資信託は1円(1口)単位で切り崩し(部分売却)ができるため、Aさんのように生活費が不足したからといって、すべての資産を一度に売却する必要はありません。焦って一括売却してしまうと、将来的な相場回復のチャンスを完全に失ってしまいます。

また、NISA口座内で発生した損失は、通常の課税口座との「損益通算(利益と損失を相殺して税金を減らす仕組み)」ができません。 つまり、NISA口座でマイナスが出ている状態で売却してしまうと、税制上のメリットを活かせず、単純に損失だけが確定してしまうという大きなデメリットがあります。

退職金の運用を始める際は、「数年間は絶対に手をつけない資金」だけを投資に回し、日々の生活費や突発的な出費に備える「流動性資金」は必ず現金(普通預金等)で確保しておくことが、失敗を防ぐ最大の鉄則です。

運用商品を投資信託のみに絞らず、安全性・流動性の高い商品と組み合わせるのもよいでしょう。


監修・執筆:元銀行員・ikebu
元銀行員の金融・法律ライター。一種外務員資格(証券外務員一種)、行政書士資格を保有。大学では法学部・法律学科に在籍し、卒業後は地方銀行に入行。個人リテール業務において、投資信託・生命保険商品の販売を中心とする資産運用のサポートのほか、住宅ローンや相続などの幅広い業務に携わる。法人営業では、事業性融資や法人向けの運用商品販売を担当。現在は金融・法律ジャンルを中心にライターとして活動。銀行員時代の経験や保有資格を活かし、専門的な内容を分かりやすく丁寧に解説することを得意とする。

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