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増田美加さんが漢方医に聞く、女性のための健康リテラシーの高め方

  • 2026.6.15
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リシェス世代が、今後の健康を考える上で避けて通れないさまざまな課題への取り組み方について、女性医療ジャーナリストの増田美加さんが、更年期世代以降の女性の健康にも強みをもつ漢方医に取材。ロンジェビティ(健康長寿)を目指すヒントとなる、医師自らの養生法なども教えていただきます。

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<Profile>
増田美加(ますだみか)/女性医療ジャーナリスト

女性の医療、ヘルスケアを専門に執筆・講演活動を行う。乳がん経験者として乳がんや乳がん検診の啓発活動にも積極的に関わる。小社刊の女性誌『婦人画報』で医療連載を約15年にわたり継続。主な著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』(講談社)ほか。

人生100年時代、女性医療とうまく付き合うには?

KENICHI YOSHIDA

日本人女性の平均寿命と健康寿命との差は約12年。現状では健康でイキイキと自分らしく生きられるのは75歳まで。健康寿命を延ばすには、更年期世代にその分かれ目があり、病気を予防し、早期発見することが健康長寿への近道です。最先端、最新、高額な医療が必ずしもエビデンスの高い優れた治療とは限らないところが選択の難しさ。紹介する更年期以降の女性の医療に日々立ち向かっている医師からの言葉で、ヘルスリテラシーを高めていただけたらと思います。

【伊藤隆医師】「気血」の充実を図ること。「動」と「静」の養生も取り入れて

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<Profile>
伊藤隆(いとうたかし)/証クリニック 総院長

医学博士。千葉大学医学部卒業。東京女子医科大学東洋医学研究所教授を経て、現職。漢方医学中心の診療を行う。鉄欠乏症、呼吸器領域を診る機会が多く、西洋医学の視点も大切にする。日本東洋医学会元会長・専門医・指導医。日本東洋医学サミット会議名誉議長。

ロンジェビティに東洋医学が貢献できるところは“気血(きけつ)”の充実を図ること」と話す伊藤医師。「気」とは生命活動を営む根源的エネルギーのことで、「血(けつ)」は血液だけでなく栄養も含みます。更年期は社会でも家庭でもストレスが多く、閉経を迎え、体の変化と衰えが始まる時期。30代までは不要だった、生活や食事、栄養でのケアが重要となる年代です。この世代の女性にとって最大の問題は、閉経前後の「血虚(けっきょ)」だといいます。血虚とは体内の血液、栄養ともに乏しくなる状態。「日本は欧米などの、いわゆる先進国の中では最も貧血の多い国です。鉄欠乏症は貧血のない症例を含めると、生理のある女性の3分の1を占めています。閉経前後には月経が不安定になり、人によっては月経過多の時期もあり、鉄の管理が重要。漢方医学では“血虚”として治療し、鉄剤を併用する場合もあります。また、さまざまなストレスにより、胃腸の弱い人は食欲・食事摂取低下、全身倦怠感、やる気低下などに陥る場合があり、漢方医学では“気虚(ききょ)”として治療します」。漢方には「気血」を補う薬があります。また、東洋医学では養生の考え方が2000年以上前からあります。養生には「動」と「静」があり、前者は運動、後者は心身の安静と呼吸を正すこと。「リシェス世代は“気虚”“血虚”の症状を知り、漢方治療と、運動、呼吸による養生を試すことを提案します」

「患者さんには、健やかで自立した生活習慣を育んでいただけるように、薬剤はできるだけ少なく、適切な期間での治療を心掛けています」という伊藤医師。上の写真は診察室内にある生薬瓶。「私の養生法は、玄米菜食中心の食(写真下は、伊藤医師のある日の昼食)と、果物、生野菜、乳製品、砂糖など、体を冷やす食品を減らすことです。週1~2回、約4kmを自分のペースで走っています」 Hearst Owned

【今津嘉宏医師】未病対策に役立つ漢方医学。衣食住の養生生活と、両輪で!

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<Profile>
今津嘉宏(いまづよしひろ)/芝大門 いまづ クリニック 院長

藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学漢方医学センターほかを経て、現職。藤田医科大学医学部客員講師。日本外科学会認定医・専門医、日本消化器病学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医。西洋医学と東洋医学に精通し、科学的見地に立った漢方診療を行う。

「漢方医学が強みをもつ未病対策は、ロンジェビティ実現に役立つ知恵となるでしょう。未病対策のための漢方医学的な養生生活は、衣食住から入ると分かりやすいです」と今津医師。衣は、温度調整が大切。体を冷やさず、直射日光を避ける衣服を選びます。食は、栄養を取るだけでなく消化管粘膜を活性化する食物繊維が大切。いまや全身に影響することが分かってきた口腔内常在菌をコントロールするための歯磨きやうがいは重要です。舌の表面は胃粘膜の状態と連動するので、毎日観察しましょう。腸の働きは、排便状態から知ることができます。住は、良い睡眠を心掛けること。睡眠は長さよりも質を重視します。また、「40歳以降の筋肉は年齢とともに衰えるため、体を動かす必要があります。50歳すぎからは、血の巡りを良くすることを忘れずに。60歳を迎えると親の介護や孫の世話など肉体的負荷だけでなく、精神的負担や経済的問題も重なります。うまく息抜きしながら、ごきげんに生きる気持ちも大切です」。さらに今津医師は、「未病対策を後押しするために漢方薬は役立つ」といいます。個別の診断をした上でよく使われるのは、40代は「気」を補う漢方薬で「人参湯」「六君子湯」など。50代は「血」を補う漢方薬で「当帰芍薬散」「温経湯」など。60代になると「気」と「血」を補う漢方薬が必要になり、「十全大補湯」「人参養栄湯」などがよく使われます。

『がん漢方』(南山堂)などの著書が多数あり、がんによる症状や治療に伴う副作用・後遺症に関する悩みに、漢方薬で応える治療を保険診療で行っている今津医師。がん拠点病院と必要な検査や各領域の専門医への相談などの連携を行っており、乳がん、子宮がんなどの女性のがん患者の相談にも応じています。また、外科、消化器(胃、大腸)の医師でもあり、胃の内視鏡検査も行います。 Hearst Owned

【木村容子医師】老化速度は養生で変わる。ポジティブ・エイジングが近道に

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木村容子(きむらようこ)/東京女子医科大学附属東洋医学研究所 所長・教授

医学博士。お茶の水女子大学卒業後、中央官庁入省(国家公務員Ⅰ種)。オックスフォード大学大学院留学中に漢方に出合う。帰国後退職し、東海大学医学部学士入学。日本内科学会認定内科医。日本東洋医学会認定漢方専門医・指導医。女性の心身の不調に豊富な治療実績をもつ。

「年齢を重ねることで体は変化します。加齢は止められませんが、加齢に伴う老化の速度はセルフケア、すなわち養生次第で変化します」。木村医師は、その多くの著書でも、東洋医学の知恵を活用して老化の速度を緩やかにし、前向きに年を重ねていく“ポジティブ・エイジング”の養生を以前より推奨しています。「それがロンジェビティの近道になると思います。ポジティブ・エイジングを目指すには、自分の体からのサインを受け取り、その時々の自分に合った養生を取り入れることが大事です」とのこと。「更年期世代の女性の症状や生活環境は皆さん、異なります。一人一人に合わせた漢方治療と養生のアドバイスを心掛けています。診察室にいらっしゃる更年期世代の女性には、エネルギーボール・セオリーについて説明します。更年期では、ホルモンバランスを整えるために、余分なエネルギーを必要とするので、使えるエネルギー(気)が少なくなります。これまでと同じことをしても疲れやすくなるのです。何事も頑張るのではなく、優先順位をつけて、力を抜くように、とお話ししています」。木村医師自身は、コロナ禍で運動を控えたことから、肩凝りや疲れやすさが出たため、毎日曜の朝、1時間のパーソナルトレーニングを行っているそう。「マシーンの筋トレ後にサーキット運動を行うことで、体が軽くなるのを感じます」

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【渡辺賢治医師】「漢方未病ドック」で未病の可視化を行い、弱点から対策を打つ

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渡辺賢治(わたなべけんじ)/修琴堂大塚医院 院長

医学博士。慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部内科学教室、米国スタンフォード大学遺伝学教室、慶應義塾大学医学部漢方医学センター・センター長、慶應義塾大学環境情報学部教授・医学部兼担教授などを経て、現職。横浜薬科大学学長補佐・特別招聘教授。

病気は突然、起こるものではなく、体内深くで潜行し、ある日、目に見える形で現れます。体内で進行する未病の状態は、目に見えないため放置しがちに。そこで、渡辺医師は「漢方未病ドック」で現在の未病の状態の可視化を始めました。具体的には、血管、筋肉、骨、脳、ホルモンの老化度を判定します。「これらが均等に老化していることはありません。『漢方未病ドック』で最も大切な点は、自分の弱点を知り、その対策を行うことです」と話します。将来的ながん、脳梗塞、心筋梗塞、認知症などのリスクを「未病度」と「未病危険度」で見える化して評価します。渡辺医師自身も「自分の体を客観的に測定することで、次の目標ができると感じています。具体的には体組成を毎日測定し、スマートウォッチで歩数、睡眠、心拍数などをモニター。運動は朝夕のストレッチ、ウォーキング、週1回の筋トレ。食事は規則正しく、旬のものを中心に食べる。忙しくても睡眠時間は削らない」を心掛けているそう。更年期世代は、人生の折り返し地点の踊り場。過去の自分の健康を振り返り、将来の自分の健康を考える良い時期です。「漢方治療では、不調に至った原因を、過去にさかぼりながら考え、漢方薬で治療します。30年先も元気で活躍できるように、今から未来に向けてやるべきことを考えることが良いでしょう」

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初出:リシェスNo.55 2026年3月27日発売
TEXT:MIKA MASUDA
EDITING:MIHO KASHIWABARA

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