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こんなおじいちゃん、おばあちゃんはイヤだ!『ヴィジット』に『WEAPONS/ウェポンズ』、『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』まで狂気の“お年寄りホラー”たち

  • 2026.6.14

ホラー映画の世界ではジャンルの細分化が進行中。オカルトやモンスター、スラッシャーにスプラッター、さらに最近ではボディホラーというサブジャンルが幅を利かせている。そんな現状のなかで、『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』(公開中)をどう表現するべきか?これはもう“お年寄りホラー”と呼ぶしかない。世間から憐みと同情の目で見られている老人が、実はとんでもなく恐ろしいヤツだった!本作は、まさにそういう内容だ。

【写真を見る】アカデミー賞受賞も納得!エイミー・マディガンの怪演が強烈だった『WEAPONS/ウェポンズ』

“ジェニー・ペン”と名付けた人形を手にした冷酷なデイヴ(『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』) [c]2024 Hyenas Rule Ltd
“ジェニー・ペン”と名付けた人形を手にした冷酷なデイヴ(『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』) [c]2024 Hyenas Rule Ltd

お年寄りホラーと呼んではみたが、これは決して新しいサブジャンルではなく、そう呼びたい作品はこれまでも存在していた。『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』を紹介する前に、気づけば増え続けていたお年寄りホラーの世界を振り返ってみよう。

後世のホラーに影響を与えた古典的名作『何がジェーンに起ったか?』

まずは古典的な作品をピックアップ。『何がジェーンに起ったか?』(62)は、現在も多くのホラーに影響を与え続けている傑作だ。芸能界で生きてきた姉妹の壮絶な葛藤を描いた物語。名子役であった妹は、名女優となっていった姉への嫉妬心を抱き続け、老境に差しかかった時、復讐を実行に移す。事故により身体の自由を失った姉を支配し、精神的に追い詰めていく妹。その恐ろしさは、妹を演じたベティ・デイヴィス、姉役のジョーン・クローフォードという2大女優の怪演により、鮮烈な恐怖を観る者に植えつけた。

身体の自由を失った姉を妹が支配し続ける『何がジェーンに起ったか?』 [c]Everett Collection/AFLO
身体の自由を失った姉を妹が支配し続ける『何がジェーンに起ったか?』 [c]Everett Collection/AFLO

孫視点で描く祖父母の恐怖に、最凶の戦闘マシーンおじいちゃん

近年のお年寄りホラーに目を移してみよう。異才M.ナイト・シャマランが手掛けた『ヴィジット』(15)では、15歳の姉と13歳の弟が、祖父母の家で恐ろしい体験をすることになる。昼間こそ祖父母は優しいが、夜になると不審な行動を取り始める。最初は老人だからしかたないと思っていたが、共に過ごすうちに状況はそんなに単純ではないことがわかってくるのだ。孫視点で描かれる、老人たちの衝撃の真実はトラウマ級の衝撃を投げかけるだろう。

孫視点で描かれる老人たちの衝撃の真実がトラウマ級(『ヴィジット』) [c]2016 Universal Studios. All Rights Reserved.
孫視点で描かれる老人たちの衝撃の真実がトラウマ級(『ヴィジット』) [c]2016 Universal Studios. All Rights Reserved.

『ドント・ブリーズ』(16)に登場する老人は、目の不自由な、独り暮らしの退役軍人。深夜にこの老人の家に盗みに入った若者3人組の視点で物語は展開していく。相手は目の見えない老人だし、窃盗も楽勝だろうと思ったのが運の尽き。戦闘能力に長けるうえに、不自由な視覚ゆえに敏感になった聴覚は、暗闇のなかでは老人の大きな武器となる。かくして若者たちは恐怖の一夜を過ごすことになるのだ。老人とはいえ、決してナメてはいけないという教訓を与えてくれる!?続編『ドント・ブリーズ2』(21)ともども必見!

盲目ながら最強の戦闘力を持った老人による恐怖を描く『ドント・ブリーズ』 [c]Everett Collection/AFLO
盲目ながら最強の戦闘力を持った老人による恐怖を描く『ドント・ブリーズ』 [c]Everett Collection/AFLO

エッジの効いた演出で話題を集めた近年の大ヒット“お年寄りホラー”

『X エックス』(22)に登場するハワードとパールは後期高齢者に属する老夫婦だが、こちらもナメると痛い目に遭う…どころか、命さえなくしてしまう。ポルノ映画の撮影隊が人里離れた農場にやって来るが、農場の持ち主がこのハワードとパールだった。前者は心臓を患い、後者はヨボヨボだが、彼らは隙を突いて撮影隊の面々を次々と殺害していく。その背景にある彼らの秘密は、映画を観て驚いてほしいので伏せるが、生臭いほどの恐怖に戦慄するに違いない。主人公のマキシーンとパールをミア・ゴスが一人二役で演じたことも話題に。老夫婦がなぜそうなったのかを描く前日談『Pearl パール』(22)、マキシーンの後日談の『MaXXXine マキシーン』(24)と併せて、ゾクゾクしてほしい。

主人公のマキシーンと老夫婦の妻パールをミア・ゴスが一人二役で演じた(『X エックス』) [c]Everett Collection/AFLO
主人公のマキシーンと老夫婦の妻パールをミア・ゴスが一人二役で演じた(『X エックス』) [c]Everett Collection/AFLO

最も最近の作品では、『WEAPONS/ウェポンズ』(25)がとどめを刺す。米ペンシルベニア州の田舎町で、ある日の“深夜2時17分”に、小学校の同じクラスの生徒17人が一斉に失踪するという怪事件が発生。担任教師や保護者が独自の調査に乗りだした結果、行き着いた怪しい老女の正体とは!?こちらもネタバレにつながるので詳細は省くが、『スペル』(09)や『ヘレディタリー/継承』(18)に通じる、凄まじいオカルトワールドに引き込まれるだろう。老女を怪演したエイミー・マディガンが第98回アカデミー賞助演女優賞を受賞したのも衝撃だった。

【写真を見る】アカデミー賞受賞も納得!エイミー・マディガンの怪演が強烈だった『WEAPONS/ウェポンズ』 [c]Everett Collection/AFLO
【写真を見る】アカデミー賞受賞も納得!エイミー・マディガンの怪演が強烈だった『WEAPONS/ウェポンズ』 [c]Everett Collection/AFLO

安心できるケアハウスが地獄と化す『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』

さて、注目の『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』。主人公は脳卒中に倒れて車椅子での生活を余儀なくされ、郊外のケアハウスに入居することになったプライドの高い老判事。老人たちが静かに暮らしていると思いきや、そこには身体の自由を失った老人をいたぶる恐ろしい入居者がいた!この老人は“ジェニー・ペン”と名付けたハンドパペットと会話しながら、入居者たちをいじめ、時には命を奪うことさえあるのだ。主人公は、この悪魔のような入居者を告発しようとするが、認知に問題が生じている老人の言うことを、介護人たちは信じようとしない。かくして、ケアハウスは戦場と化す…。

安心できるはずのケアハウスが地獄と化す(『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』) [c]2024 Hyenas Rule Ltd
安心できるはずのケアハウスが地獄と化す(『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』) [c]2024 Hyenas Rule Ltd

小学校ならいざ知らず、老人ホームにもいじめがあったとは、思いもよらぬ展開だが、支配する者とされる者の構図も『何がジェーンに起ったか?』的。さらに限定空間で展開されるサバイバルストーリーは、ブラックユーモアと相まって観る者の目を釘づけにする。いまや世界トップクラスの高齢化社会となった日本において、この物語が他人事であると言えるだろうか?『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』は現代を鋭く見据えた、まさに最新鋭の“お年寄りホラー”なのだ!

ジェニー・ペンという名のドールセラピー用の人形を肌身離さない(『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』) [c]2024 Hyenas Rule Ltd
ジェニー・ペンという名のドールセラピー用の人形を肌身離さない(『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』) [c]2024 Hyenas Rule Ltd

文/相馬学

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