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子どもにまで嫉妬するモラハラかまって夫。妻への異常な執着から彼が少しずつ人間をやめていく様子を描いた狂気の物語【書評】

  • 2026.6.28

【漫画】本編を読む

結婚生活は愛さえあればうまくいくと思っていたはずなのに、いつの間にか「相手の機嫌を損ねないように生きる毎日」になっていた。『うずら男 モラハラかまって夫が人間をやめるまで』(前川さなえ/KADOKAWA LifeDesign)は、そんな息苦しい夫婦関係を、恐怖と奇妙なユーモアを交えながら描いた作品だ。

主人公・あすかは、ふたりの幼い息子を育てる専業主婦。夫の和史は一見すると普通の父親。だが実際は、異常に妻の関心を求める「かまって夫」だった。子どもよりも自分を優先してほしがり、疲れ切っているあすかにも自分ルールを押し付ける。思い通りにならなければ不機嫌になって怒りをぶつける。その姿はまさに「大人の体をした駄々っ子」。そして、物語の転機となるのは、夫が持ってきた「8個のうずらの卵」だ。自分に関心を向けさせたい一心での嫌がらせのつもりだったこの卵が、冷え切った夫婦関係を思わぬ方向へと動かしていく。

本作の読みどころは、和史の「壊れ方」だ。かまってもらえないという欲求不満が積み重なるにつれ、彼は成長したうずらと共に飼育ケースに入り、一緒にエサを食べるという、「人間をやめる」ような異常行動に出るようになる。

しかし、単なるモラハラ夫の異常行動を描くだけで終わらないのは、和史の言動の裏に、満たされなかった幼少期の影が見えるからだ。わかりやすい悪役として描くのではなく、その背景にある人間的な弱さにも目を向けているところも本作の重要なポイントだ。

一方のあすかは、怒りをぶつけるでも泣き崩れるでもなく、ただ「諦めている」。長年モラハラにさらされた人間が最終的に行き着く場所は、感情を封じ込め、波風を立てないことで自分を守るという状態だ。

表面上の優しさに隠された本性や、一度壊れた信頼関係が修復不可能なところまで落ちていく様子を、確かな重みをもって描き出す。最後にあすかと和史が辿り着く結末は、ぜひ本書を手にとって確かめてほしい。

文=つぼ子

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