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私の差し入れだけ名前を伏せて配る彼。「よかったら、どうぞ」と手渡されて気づいたこと

  • 2026.6.11
ハウコレ

オフィスの給湯室で、持ってきた焼き菓子の箱を開けました。みんなで食べてもらえたら、それでいいと思っていたお菓子です。配り役を引き受けてくれたのは、ひそかに想いを寄せる同僚の彼でした。ところが、その配り方に、私は小さな違和感を覚えはじめたのです。

想いを込めた差し入れ

ひそかに想いを寄せている同僚の彼に、少しでも喜んでほしくて、私はときどき手作りの焼き菓子を持っていきます。彼だけに渡すのは照れくさいので、職場のみんなで分けられるように多めに焼くのが、私なりのやり方でした。この日も給湯室で箱を開けていると、彼が通りかかり「配るの手伝うよ」と引き受けてくれました。彼が私のお菓子をみんなに手渡してくれる。それだけのことが、私にはちょっとした幸せだったのです。

名前を呼ばれない私

彼は一つずつお菓子を配りながら、「これ、先輩からの差し入れだよ」と、誰が持ってきたのかを添えて渡していきます。受け取った人が「ありがとう」と笑顔になるたびに、場の空気がやわらかくなっていきました。ところが、私の焼き菓子の番になったとき、彼は名前を口にしませんでした。「よかったら、どうぞ」。ただそれだけを言って、隣の席へ進んでいったのです。私は思わず彼の口元を見つめましたが、その後も、私の名前が出てくることはありませんでした。

うまく笑えなかった

お菓子はあっという間になくなり、何人かが「これ誰がくれたんだろう、おいしかった」と言い合っていました。私が作ったものだと、誰も知らないままです。私は「よかった」と相槌を打ちながら、うまく笑えていたか自信がありませんでした。私だけ名前を伏せられたのは、なぜなのだろう。彼にとって、私からの差し入れだと知られるのは、都合が悪いことなのかもしれない。そんな考えばかりが浮かんで、私はそっと空になった箱を片づけました。

そして...

本当は、その場で理由を聞けばよかったのだと思います。でも、「どうして私の名前だけ言わなかったの」と尋ねる勇気は、どうしても出てきませんでした。問い詰めて、面倒な子だと思われるのが怖かったのです。それでも私は、次もきっと焼き菓子を持っていくのだろうと思います。喜んでくれる顔が見たいという気持ちは、名前を呼ばれなかったくらいでは消えてくれませんでした。ただ、あのとき彼が何を考えていたのか。それだけは、今でも少し知りたいままでいます。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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