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憧れのフェラーリを紐解く、キーワード「エンジン音」。乾いた音とハーモニー、音楽家をも魅了する音色

  • 2026.6.1
サクソフォン奏者・上野耕平

小学生の頃、8歳でサクソフォンに出会い、10歳でクルマ好きを自認。中学生になるとテレビで見た「Enzo Ferrari」に一目惚れ。その後、フェラーリ熱はさらに高まり、中学生ながら、フェラーリの排気音が収録されたCDを爆音で聴きまくる、耳で楽しむタイプの熱烈なフェラーリファンになった上野耕平さん。

「フェラーリのエンジン音はほかのどのクルマとも違った独特のサウンド。あえて言葉で表現するなら“乾いた音”。そして、この特徴的な音は、特定のモデルに限ったものではなく、ブランドの全モデルにわたる共通点だと思います。2021年にデビューしたプラグインハイブリッドモデル『296 GTB』にさえ、そのサウンドは確認できましたから」

さらに魅力を加速させているのが、それらの音同士が奏でるハーモニーだ。

「エンジンは、新鮮な空気を取り込んでガソリンと混ぜて爆発させ、ピストンを動かします。12気筒のエンジンなら、2回転ごとに爆発音が12回鳴ります。耳を澄ませると聞こえるのが、音の粒一つ一つが滑らかかつ、均一に響き合って生まれる音色。爆発の過程で発生する吸気音やメカニカルノイズを含めて、チューニングされたような音を奏でています。

例えば二輪車に多く使われる2気筒エンジンなら2つの爆発が交互に起こるので、“ドッドッドッ”と規則的な重低音を響かせます。対して、12気筒のフェラーリのエンジン音は音が鳴る間隔が短いため、高速になるほど、“パー”という滑らかで乾いた音が立ち上がる。高音でクリアな、空に向かって突き抜けるような快音を響かせます。これがいい!」

上野さんは今も、街でフェラーリを見かければエンジン音に集中。F1を観戦する時も同様だ。レーシングカーがとどろかせる、性能を追求したサウンドに聴き入るという独自の楽しみ方をしている。

上野耕平さんの私物のサイン入りフェラーリキャップ
私物のフェラーリキャップ。レーシングドライバーのシャルル・ルクレールとセバスチャン・ベッテルのサイン入り。2019年に入手。

世界三大テノールで言えばパヴァロッティの歌声のよう

さらに、世界三大テノール歌手を引き合いに、フェラーリのエンジン音の魅力と特徴をこう解説する。

「たとえるなら、スペイン・バルセロナ出身のホセ・カレーラスでも、マドリード出身のプラシド・ドミンゴでもなく、フェラーリの創業者、エンツォ・フェラーリと同じイタリア・モデナ生まれのルチアーノ・パヴァロッティ。カレーラスのように艶や潤いがあり、優しく寄り添う声とは違って、パヴァロッティは乾いて澄んだ、“カーン”と天まで突き進んでいくような歌声。フェラーリのエンジン音はそっちに近いと思います。そして、パヴァロッティは、『F40』を所有していたそうです」

現在、複数のクルマを所有する上野さんがドライブに出かけたくなるシチュエーションが、コンサートを終えて自宅に帰る時。終演後、ホールを出ると、高揚感やひと仕事終えた安堵感に包まれて、体がいつもと異なるリズムを刻み、ふらっとクルマで出かけたくなるという。

ドライブ中のこだわりは、音楽をかけないこと。もちろん、運転しながらエンジン音を楽しむためだ。時には、音がより聞こえやすいように、窓を少し開けて走ることもあるとか。

「フェラーリは芸術品。エンツォ・フェラーリから続くヒストリーがあり、現代のエンジニアやデザイナーの思いがあり、様々な才能が集結して造り上げられた一台のクルマであり作品です。そんな背景に思いを巡らせながら音に耳を傾けて運転すると、フェラーリとセッションしているかのような感覚に陥ります。だから、音楽をかける必要がないのです」

最後に、フェラーリのエンジン音を楽しむ理想的なシーンを尋ねると、「心地いいのはビルや建物に反響する音ですね。トンネルもいいですが、トンネルだと音が乱反射してしまいます。道幅が広すぎるとあまり反響しないので、建物が立ち並ぶ1車線の道路が最適です。フェラーリらしい、抜け感のある音色が心地よく響きます」と教えてくれた。

今でもやっぱり、「フェラーリのエンジン音が一番ぐっとくる」という上野さん。少年時代から音のプロをとりこにし続ける唯一無二のフェラーリサウンドに、ぜひ耳を傾けてもらいたい。

profile

上野耕平(サクソフォン奏者)

うえの・こうへい/1992年茨城県生まれ。小学2年生でサクソフォンを始め、その後、東京藝術大学器楽科卒業。在学中にデビューし、国内外のコンクールで入賞多数。クルマと鉄道を愛し特に音を楽しむ。

 

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