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32年前、弱った心に沁みた"応援ソング" 今こそ聴きたい“生まれつきの笑顔”の歌

  • 2026.7.4
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※ChatGPTにて作成(イメージ)

無理に作る笑顔と、生まれつきの笑顔は別物だ。前者は鏡の前で頬を持ち上げる作業で、後者はただ思い出すだけで戻ってくる体温だ。SMAPに差し出された応援歌は、そのふたつのちがいを最初から正面に置いていた。

夏の入り口、テレビをつければ栄養ドリンクのCMから木村拓哉の顔が飛び出してきた1994年。サビだけが流れる短い15秒、その続きを聴きたいと思った人が、雑誌やラジオに問い合わせを送った。CD化の予定は無く、タイトルすら付いていない曲だった。それがファンの声に押し出されるようにして、13枚目のシングルになった。

SMAP『オリジナル スマイル』(作詞:森浩美/作曲:MARK DAVIS)ーー1994年6月6日発売

無理に笑わなくていい、もとから持っている笑顔に戻ればいい。そう肩を叩いてくる温度の歌だ。応援歌でありながら押し付けがましさが無い。それは外から「もっと聴かせてくれ」と引き出された曲だという出自と、不思議に重なって響いてくる。

横に座って肩に手を置く温度

SMAPは1991年に『Can't Stop!! -LOVING-』でCDデビュー。1994年といえば、ランキング上位の常連になりつつあった時期で、国民的なグループになる手前の地点にいた。前年の11thシングル『君色思い』、その後の12thシングル『Hey Hey おおきに毎度あり』と並ぶ、上り坂の中盤あたり。テレビのバラエティではすでに見ない日が無い顔ぶれだったけれど、楽曲として「これがSMAPだ」と国全体に届く代表曲は、まだこの先に控えていた。

そんな時期に差し出されたのが『オリジナル スマイル』だった。作詞の森浩美は、その後も『青いイナズマ』などSMAPの節目に詞を書いていく人。作曲のMARK DAVISは馬飼野康二の別名義で、男性アイドルのメロディを骨の髄まで知っているベテラン作曲家。編曲のCHOKKAKUは『SHAKE』や『夜空ノムコウ』など、SMAPの代表曲を数々手掛けるアレンジャーだ。

この三人が組んだ結果として出てきたのが、派手に煽らない応援歌だった。聴き手と並走するくらいの温度でメッセージを差し込んでくる。当時のSMAPに必要だったのは、背中をどんと押す歌ではなく、横に座って肩に手を置いてくれる歌だった。森浩美はそれをわかっていた人だと思う。

もう持っている顔に戻って

歌詞の核ははっきりしている。「生まれつきの笑顔に戻れ!」とサビで言ってくれる。ここで歌われているのが「もっと笑え」でも「無理にでも笑え」でもないところがいい。生まれつき、つまり最初から自分の中にあったはずの笑顔を思い出せ、と言っている。新しく作れと命じているんじゃなくて、もう持っているものを取り戻せと言っている。応援歌の言葉づかいとして、これはずいぶん優しい。

「笑顔抱きしめ ココロに活力(ちから)」というフレーズも効いている。笑顔を作るんじゃなく、笑顔を抱きしめる。すでにそこにあるものを、両手でつかみ直す動作だ。元気が無いとき、人は「笑え」と言われると余計につらくなる。けれど「もとからあるその顔に戻ろう」と言われると、肩の力が抜ける。森浩美が書きたかった反骨というのは、こういう優しさの裏にある粘り強さのことだったんじゃないか。

歌い手がSMAPだったことも大きい。完璧な存在として上から手を差し伸べる位置ではなく、自分たちも上り坂の途中にいる若い男たちが、同じ目線でメッセージを差し出してくる。歌詞の温度とグループの位置が、自然にぴたりと合っていた。

聴き手の両手が割って取り出した歌

この曲は最初、大塚製薬オロナミンCドリンクのCMでサビだけが流れていた短い音源だった。木村拓哉が出演した15秒の中で、サビの一節だけの楽曲だった。

ところが、その15秒を聴いた人たちが動いた。雑誌やラジオに「あのCMの曲を全部聴きたい」「タイトルを教えてほしい」という問い合わせが続々と寄せられた。そして実際にシングルとして世に出ることになる。SMAPの側が「出したい」と動いた曲ではなく、聴き手の側が「聴かせてほしい」と引っ張り出した一曲。それが13枚目のシングルとして店頭に並んだ。

ここが歌詞のメッセージとも見事に重なる。「生まれつきの笑顔に戻れ!」と歌うこの曲は、自分から押し出されたのではなく、外から引き出された。押し付けがましくない応援歌の温度と、押し付けでなく引き出された出自が、出来すぎなくらいに響き合っている。CMの15秒という小さな器を、聴き手の側が両手で割って、中の歌を取り出してくれた格好だ。

流行ったからではなく弱った日に呼ばれて伸びる距離

シングルとしての売り上げは累計40万枚を超え、SMAPのキャリアの中ではスマッシュ規模に位置する。けれどこの曲の本当の強さは、その後の長い距離にある。発売から長い時間が経った後、コンサートでメンバーがイントロを鳴らすと、客席が湧く。1994年のCMから引き出されたあのサビが、いつのまにか会場いっぱいの生まれつきの笑顔にあふれていた。書いた森浩美にとっても、これは予想を越えた景色だったはずだ。

15秒のCMから、ファンの問い合わせでシングルになり、ひとりひとりの日常のプレイリストへ。この曲が届く距離は、年を追うごとに静かに伸びてきた。困った日、頑張れない日、無理に笑えない日。SMAPが残してくれた応援歌は、いまも変わらずその隣にいる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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