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35年前、3年越しに受け渡された続編映画の主題歌 沖縄の無人島で見た夢に重ねられた7日間

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B.B.クィーンズ-1990年8月撮影(C)SANKEI

イントロが鳴り始めた瞬間、美しいコーラスワークで肩のあたりの空気がふっと開く。ギターが軽く跳ねて、リズム隊が陽射しの強い表へ歩き出していき声が乗る。低めの音域から芯のある歌声が押し出されてきて、耳がほどける。

B.B.クィーンズ『ぼくらの七日間戦争〜Seven Days Dream〜』(作詞:長戸大幸/作曲:織田哲郎)ーー1991年6月5日発売

3枚目のシングルとして、映画『ぼくらの七日間戦争2』の主題歌として書かれた一曲である。サビへ駆け上がる坪倉唯子の喉が、夏の入り口の空気を一気に押し開けていく。

茶の間で覚えた顔とは別の喉

このユニットの名を聞いて多くの人がまず思い浮かべるのは、前年の春に世に出た『おどるポンポコリン』だろう。アニメ番組のエンディングテーマとして子どもから大人までを巻き込み、社会現象級の大ヒットとなった。明るく弾むメロディ、ユーモアでくるんだ歌詞。陽気な像が、そのまま彼らの顔として定着していった。

ところがこの曲で耳に届く歌声は、その像から大きく踏み出している。坪倉唯子のメインボーカルは、低めの音域でも芯が太く、サビへ向かって張り上げても声が割れない。次の一節を歌い出すたびに、押し出される空気の量が一段ずつ増えていくような感触がある。

そこへ近藤房之助のしわがれた低音が脇から差し込まれ、サビの後半でブルース仕込みのシャウトが点火する。役割の違う二人の声が、低音域の補強と熱の点火を同時に発生させる仕組みになっている。

織田哲郎の手腕が発揮されたポップソング

Aメロは音数を抑え、坪倉の声が真ん中に置かれる。Bメロで伴奏がじわりと前へ出てきて、サビでバンドサウンドが一斉に解放される。歌い出した瞬間に「ここから上がっていく」と耳が予感し、サビの頂点でその予感がきれいに回収される。

聴きどころは、サビ後半で近藤房之助のシャウトが差し込まれる瞬間だ。坪倉の歌声が最高点に届いた直後、下から低い喉が一発、熱を点火するように噛み込んでくる。曲の体温が、その一声でもう一段押し上がる。二度目のサビで同じ場所に同じ差し込みが来るので、聴き手は二度、その熱の点火に立ち会わされる。

一度聴けば口ずさめるところまで開かれた旋律は、口に乗りやすい母音と無理のない音域に支えられている。決して凝った仕掛けではない。だからこそ、何度聴いても飽きない強度が宿る。作曲を手がけた織田哲郎は、売れ線の作家として一気に名を上げていくが、その量産期へ進む直前の手つきが、この一曲にすでに姿を見せている。

続編映画の看板として手渡されたもの

3年前の1988年夏、映画『ぼくらの七日間戦争』の1作目が公開され、TM NETWORK(現・TMNETWORK)の『SEVEN DAYS WAR』が劇場の余韻にまで響いていた。美しいメロディが、大人の管理から逃げ出していく中学生たちの叫びを増幅する一曲だった。続編の主題歌の座に置かれたのが、本曲である。

続編は、東京の中学生たちが沖縄の無人島でリゾート開発に抵抗するという筋立てに変わり、配給会社も替わった。中学生役の主要キャストも入れ替えられ、シリーズとしての顔は大きく塗り替えられている。1作目の主題歌タイトル『SEVEN DAYS WAR』に対し、続編タイトルに添えられた副題は『Seven Days Dream』。大人の世界へ反旗を翻した1作目の曲名に対し、続編の副題は夢だ。逃げ出した先で何を見つけるのか、というやわらかな方向へ視線が動いている。

ピアノを前面に立てたバラードから、ギターとリズム隊が厚く鳴る歌い上げの王道ポップスへ。曲としての性格が、まるごと組み替えられている。重い看板を受け取りながら、坪倉と近藤はそれを軽く跳ね返さず、まっすぐに歌うほうを選んだ。

1991年の夏の入り口に置かれた一曲

シングルが店頭に並んだのは6月初頭、映画の公開はその一か月後だった。梅雨入り前後の、まだ夏になりきらない空気の中で先にラジオから流れ、夏休みの直前に映画館の予告編へつながっていく。曲の温度と季節の温度が、ちょうど重なって動き出す配置になっている。

『おどるポンポコリン』の社会現象から1年あまり、ふざけた仮面で覚えられた集団が、夏のはじまりの空気に、もう一つの顔をそっと並べておいた。3枚目のシングルという地味な配置のなかに、本気のポップスを差し出してきたのである。

サビの後半、坪倉唯子の声が一段押し出され、近藤房之助の低音が下から噛み込んでくるあの瞬間に、メンバーたちがひとつの場所で全力を出し合っていた短い時期の手応えが残されている。

副題に添えられた『Seven Days Dream』の文字を、夏の終わりの匂いとして読みたくなる。映画の中の中学生たちが無人島で見た夢のように、B.B.クィーンズという集団もまた、数年だけ続いた束の間の夢だった。のちに復活してこの曲は歌い継がれていくことになるが、最初のテイクには、その後では出ない温度がある。耳をすませば、その手応えが今もそのままの体温で立ち上がってくる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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