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「根性のない奴は本気を出せ」と煽った俺→水泳大会で教え子の泳ぎを見届けて、頭を上げられなくなった

  • 2026.5.30
ハウコレ

俺は小学校で体育を担当している教師です。学生時代から運動部漬けで、できない奴は努力していないだけ、と思っていました。けれど、5年生のクラスにいた一人の男子の水泳大会での泳ぎを見たとき、その考えに少しずつ疑問が生まれていったのです。

できない子には根性論をぶつけてきた

俺は中学・高校とずっと運動部で、努力すれば結果は出ると信じてきました。だから体育の授業で、走るのが遅い、跳び箱が飛べない、ボールが捕れない子たちには「気合いだ」「根性で乗り越えろ」と発破をかけるのが俺の指導でした。

5年生のクラスに、特に運動が苦手な男子がいました。徒競走はいつも最後尾、跳び箱は1段目から怖がる、ボール運動では避けてばかり。何度も呼びつけて言ってきました。「体育ができない子は根性がない」と。本人のためを思って言っていたつもりです。あいつのように泣きそうになる子は、「打たれ弱いだけだ」と切り捨てていました。

大会の朝、いつもの調子で煽った

7月の水泳大会の朝、俺は生徒たちの前に立ってマイクを持ちました。「根性のない奴は本気を出せ」。いつもの口癖でした。保護者の前でも、そう言うのが俺の流儀だったのです。

25メートル自由形で、例のあいつはやはり後ろから2番目の順位でした。「ほら、見ろよ」と内心で笑っていました。

ところが、続く「持久泳」。ゆっくりでもいいから泳ぎ続ける種目で、あいつだけが他の子とは違うリズムで、淡々と泳ぎ続けているのです。フォームにも息継ぎにも無理がない。「これは普通の子の泳ぎじゃない」と、プールサイドにいた俺の目は、あいつの動きから離れなくなっていきました。

泳ぎ続ける教え子の前で

15分、20分、25分。プールから子どもたちが次々に上がる中、あいつは止まりませんでした。観客席がざわめき始め、保護者たちもプールに視線を集めていました。

俺は計測のためプールサイドに立っていましたが、その場から動けませんでした。あいつの母親が観客席で、両手を胸の前で組んで息子だけを見つめていました。普段「根性がない」と俺が言ってきた、あの子の母親です。その横顔を見たとき、自分が何を見ていなかったのかを、嫌でも理解しました。

速さで測ることしかしてこなかった俺の評価軸では、この泳ぎを正しく測れない。「気合い」も「根性」も、本当はあいつの中に積み重なっていた。俺がそれを違う形でしか見ようとしていなかったのです。

そして…

あいつは学校創立以来の最長記録を打ち立てて、プールから上がりました。生徒たちの拍手の中、あいつは恥ずかしそうに、けれど確かに胸を張っていました。

閉会式のあと、俺はあいつの母親の前まで歩いていきました。何から謝るべきか分からず、出た言葉は「お母さん、すみませんでした」でした。お母さんは少し驚いた顔をして、それから小さく頭を下げ返してくれました。

職員室に戻って、自分のロッカーに貼ってあった「気合い」と書かれたペナントを外しました。明日からの体育で、あいつにかける言葉は、まだ見つけられていません。けれど、見つけるところから始めるしかない。それくらいは、ようやく自分に課せるようになったのです。

(30代男性・小学校教諭)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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