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メインストリームにも影響を与える、韓国の豊穣なインディーミュージック

  • 2026.5.29

今、韓国の音楽界は大いに揺れている。しかしながら、メインストリームのポップスとは別文脈の音楽たちにも目を向けると面白い。識者2人によるシーンの全体像から、2020年代に入って独自に進化を続ける伝統音楽の担い手たちまでを追いかける。

text & coordination: Daichi Yamamoto

メインストリームにも影響を与える、韓国の豊穣なインディーミュージック
BRUTUS

教えてくれた人

パク・ジョンヨン/박정용(〈Veloso〉オーナー)
ライブハウス運営のほかにもフェス、ラジオやプレイリストの選曲など、常に様々なプロジェクトに携わる。現在は『ASIAN POP FESTIVAL』(6月開催)や定期的に開催されるライブサーキット『LIVE CLUB DAY』などを企画。韓国大衆音楽賞選定委員でもある。

山本大地(音楽ジャーナリスト)
やまもと・だいち/ソウル在住。現地のミュージシャン・産業とも関わりながら、K-POPだけではない韓国の音楽の魅力、現状について発信。最近はインディー音楽関連の執筆がメイン。YouTube『山本大地の韓国音楽レポート』もスタート。
X:@Kid_Dic

山本大地

最近はK−POP以外の大衆音楽も世界で注目を浴びるようになりましたね。

パク・ジョンヨン

若者たちが、韓国にはK−POPのほかにどんな音楽があるのかと興味を持つのは自然なことだと思いますし、K−POPの世界的な人気がいいチャンスになっていると思います。

山本

多様なジャンルがありますが、パクさんならどこから聴いてみることをおすすめしますか?

パク

まずは『韓国大衆音楽賞(KMA)』をチェックすることをおすすめします。毎年、各ジャンルから「これだけは聴くべき」という作品を選んでいますし、ここ数年の受賞候補の中にも私がおすすめしたいアーティストがキリがないほどたくさんいます。

山本

では、ローカルシーンのお話に移りましょう。今、韓国では「バンドブーム」という言葉が話題になったり、チャート上にも入ったりするくらい、バンドミュージックが人気ですよね。

パク

若者がバンドに魅力を感じるようになり、Silica Gelのようなスターも生まれました。8月に行われる『仁川ペンタポート・ロック・フェスティバル』のような大型ロックフェスは毎年来場者が増えていますし、フェス市場も拡大しました。でも、韓国はシーンの規模が大きくない分、産業的な基盤も弱く、まだ一部のバンドにその人気が集中してしまっているのが現実でもあります。

山本

パクさんが主に活動されているインディーシーンでは、どんな変化を感じますか?

パク

K−POPのようにファンダムの影響が強くなってきています。以前は20人くらいのお客さんの前で始めて、その後、100人、200人と、少しずつ大きな会場でライブをしながら成長していくという物語があったんです。今はSNSを通じて最初のうちからファンを集めて、数百人規模のライブでデビューしなければ意味のある活動ができなくなったと言っても過言ではありません。

山本

ミュージシャンにとって音楽以外の要素も重要になってきていると感じますか?

パク

はい。ただ、SNSやマーケティングはあくまでツールであって、音楽そのものによって観客とつながることの重要性はこれからも変わらないと思います。Silica Gelも10年という長い間、自分たちの個性を維持しながら少しずつ成長してこの位置まで来たことを考えると、やはり大事なのは自分の音楽に対する自信と誠実な活動だと思うんです。

山本

最近はライブハウスやレーベルなどのインフラの役割も変化しているし、シーンとしてのまとまりも以前ほど強固ではなくなっていると思います。そんな中でHyukohやSilica Gel、Balming Tigerのように、多様なジャンル、さらには映像、ファッションのクリエイターともコラボして、新鮮な作品を作ったり、自らのコミュニティを広げたりしているアーティストたちの活躍が印象的です。

パク

以前はインディーの人ならインディーシーンでだけ活動をするのが普通でしたが、そうじゃなくなってきているんですよね。K−POPや海外のアーティストともコラボするし、ジャンル、国籍、スタイルなどの「境界」がなくなってきています。また、リスナーも偏見がなくなって、カッコいい音楽であれば、誰が作ったものであろうと受け入れる人が増えていると思います。

山本

そんな中で今、パクさんのようにシーンを支える方々の役割はどんなことだと思いますか?

パク

シーンもリスナーも時代に応じて変化していくのは自然なことだと思います。私たちはこれからもリスナーに常に新鮮なものを体験させられるよう努力しなきゃいけないと思います。

ロック

『AAA』
Hyukoh/「Comes and Goes」等の大ヒット曲で大衆にも人気の4人組。台湾のサンセットローラーコースターとのコラボ作『AAA』(上)を引っ提げてツアーも行う。
『POWER ANDRE 99』
Silica Gel/2015年にデビュー。実験的でありながら多様なジャンルを取り入れたユニークな音楽性は唯一無二。最新アルバム『POWER ANDRE 99』(上)も高評価。
『Angel Inter view』
Meaningful Stone/2017年デビューのシンガーソングライター。21年韓国大衆音楽賞の新人賞受賞。『Angel Interview』(上)ではフォーク、シューゲイズ、ラップも披露。
『HOME』
Hanroro/2000年生まれ。少女時代テヨンのソロ曲はじめK−POPの作詞・作曲にも参加。世代を代弁する歌詞、パワフルな歌唱で新作『HOME』(上)でも支持を広げる。
『Fire & Light』
Soumbalgwang/2016年結成。韓国独自の“朝鮮パンク”を進化させる4人組。熱量あるポストパンクの新作『Fire & Light』(上)で2作連続の韓国大衆音楽賞受賞。
『2』
Seaweed Mustache/2014年にデビューし釜山を拠点に、メタルとシューゲイズの融合を巧みに行う4人組。最新アルバム『2』(上)は今年韓国大衆音楽賞受賞。
『Flight』
Leaves Black/釜山を拠点とする4人組。デビューから続けていた80~90年代UKロックの影響から一転、新作『Flight』(上)では幻想的な音像のフォークロックを披露。

フォーク

『Default』
Kim Sawol/2014年デビュー。数々の受賞歴を持ち、BTS・RMのソロ作でのコラボも有名。よりストレートな表現が魅力のアルバム『Default』(上)がおすすめ。
『From Where No One Is, To Where Ever yone is』
Kang Asol/2012年デビュー。最新アルバム『From Where No One Is, To Where Everyone is』(上)では、愛で揺れる心を、繊細な歌、ピアノ、重層的なストリングスで表現。
『Kaleidoscope』
Moher/済州島を拠点にする男女デュオ。アイルランドの伝統楽器を取り入れ、サイケデリックに表現した『Kaleidoscope』(上)は韓国的でありながら異国的な空気が漂う。

エレクトロニカ

『KIRARA』
KIRARA/2014年デビュー。「きれいで強い」音楽がモットーのプロデューサー。日本のポップスからの影響も。最新作『KIRARA』(上)ではシンガーとも多数コラボした。
『humanly possible』
HWI/2018年デビューの映像監督も行う多才なアーティスト。新作『humanly possible』(上)では前衛的なサウンドにマッチした霊的とも言えるボーカル表現が魅力。
『GALAPAGGOT』
Net Gala/2019年デビュー。テクノ、フットワークなどを自己流にアレンジし、クラブシーンでも活発に活動中。最新作『GALAPAGGOT』(上)で今年の韓国大衆音楽賞受賞。

ヒップホップ

『NOWITZKI』
Beenzino/友人らと設立したファッションブランドが人気で、ベテランながらいまだ若者の間ではカリスマ的存在。中毒性あるラップを聴かせる『NOWITZKI』(上)は傑作。
『The Anecdote』
E Sens/Supreme Teamの元メンバーであり、ラップ、リリックなど高い評価を浴びるラッパー。内省的表現豊かな『The Anecdote』(上)は他ジャンルリスナーも必聴。
O'KOYE
O'KOYE/ラッパーのIKYOと、プロデューサーのThe o2による2人組のユニット。ジャズを取り入れた昨年のデビュー作(上)でいきなり評論家からの絶賛を浴びた。
『ANT』
QM/2014年デビュー。詩的な歌詞で、時に社会的なイシューも扱うコンシャスラッパー。昨年は高評価を得た『ANT』(上)を含め2作続けてアルバムを発表した。

オルタナヒップホップ

『January Never Dies』
Balming Tiger/オルタナティブK−POPを標榜し、ミュージシャンや映像作家などから構成される11人組。『January Never Dies』(上)のジャンルレスさは彼らならでは。

R&B

『(1)』
youra/2018年デビュー。多様なジャンルを取り入れた実験的なサウンド、甘くセクシーな歌声が特徴的。ジャズ要素を感じさせるアルバム『(1)』(上)で絶賛を浴びた。
『MINISERIES 2』
SUMIN/シンガーとしてもプロデューサーとしても評価が高く、K−POPへの楽曲提供も多数。Slomとの共作アルバム『MINISERIES 2』(上)で評価を受ける。

ジャズ

『Hip Hop Retreat』
Kim Oki/2013年にデビュー。アンビエント、スピリチュアルジャズなど多様な要素を取り入れるサックス奏者。新作『Hip Hop Retreat』(上)には多数のゲストが参加。
『My Summer's Not Over Yet』
Yun Seok Cheol Trio/韓国ジャズシーンで最も著名なピアニストが率いるトリオ。明るくポップなアレンジの最新作『My Summer's Not Over Yet』(上)も評価が高い。
『Song of April』
Sunji Lee/ニューヨークでの活動を経て帰国後、2008年デビューのピアニスト。14年のセウォル号沈没事故後ゆっくり書き下ろした『Song of April』(上)は国内で大絶賛。
『Pierrot le Fumeur』
Teho/実力ある4人の演奏者たちによる即興演奏が魅力のバンド。新作『Pierrot le Fumeur』(上)は10回分のライブから厳選した演奏を収めたライブアルバム。

伝統音楽

『SUGUNGGA』
LEENALCHI/パンソリ歌唱とロックやディスコなどのグルーヴをミックスする6人組。2020年に発表したアルバム『SUGUNGGA』(上)で世界的に注目を集めた。
『Under neath the Dangsan Tree Tonight』
Chudahye Chagis/民俗音楽とファンクの混合を試みる4人組。リチュアルなグルーヴが新鮮なアルバム『Under neath the Dangsan Tree Tonight』(上)で絶賛を浴びた。
『半島地形図』
BANDO/伝統楽器、コムンゴの奏者を含む4人組。伝統音楽を生んだ朝鮮半島の土地をテーマにしたEP『半島地形図』(上)で今年韓国大衆音楽賞を受賞した。

インディーズを体感できるライブハウス

バンド系

Information

club FF

クラブ街に位置し、インディーバンドのライブはもちろん、深夜までロックDJのパーティを開催する。詳細はインスタグラムで。
住所:마포구 와우산로17길 12/12, Wausan-ro 17-gil, Mapo-gu
Instagram:@hongdaeff

Information

新都市

普段はバー営業をしているが、週末にはオルタナティブな公演が多数。
住所:중구 을지로11길 31 5층/5F, 31, Eulji-ro 11-gil, Jung-gu
営:19時〜24時(金〜翌1時、土〜翌2時)
休:日曜〜木曜日(公演のみ)
Instagram:@seendosi

フォーク系

Information

JEBIDABANG

昼間はカフェ、夜は地下でアコースティック系を中心にライブが楽しめる。アート好きのアジトのような空間。
住所:마포구 와우산로 24/24, Wausan-ro, Mapo-gu
営:11時30分〜翌2時
休:無
Instagram:@jebidabang

ジャズ系

Information

JAZZXOVER

「JAZZ IS NOT OVER!」をモットーに昨年オープン
したばかりのジャズクラブ。
住所:성동구 아차산로13길 2 지 하1층/B1, 2, Achasan-ro 13-gil, Seongdong-gu
営:18時〜23時LO
休:月・火曜日
Instagram:@jazzxover

Information

SoundDog

市場の中というロケーションでジャズを中心とした演奏が聴ける。
住所:용산구 후암로35길 24/24, Huam-ro 35-gil, Yongsan-gu
営:18時〜23時(ライブは曜日により時間が異なる)
休:無
Instagram:@sounddog_jazz

エレクトロニカ系

Information

MODECi

ヒップホップから先鋭的な電子音楽まで、毎週末ソウルのクラブミュージック好きが集まる。
住所:마포구 와우 산로 64 5층/5F, 64, Wausan-ro, Mapo-gu
営:クラブ・イベントに合わせて営業
Instagram:@modeci_seoul

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