1. トップ
  2. エピソード
  3. 『渡辺』と『渡邉』どっち?銀行員「お客様がおっしゃるなら…」→手続きを進めようとすると…新人時代に思わずヒヤリとした出来事に「大切なことを学んだ」

『渡辺』と『渡邉』どっち?銀行員「お客様がおっしゃるなら…」→手続きを進めようとすると…新人時代に思わずヒヤリとした出来事に「大切なことを学んだ」

  • 2026.6.19
undefined
出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。くまえり銀行員です。

今日は、私が新人時代に経験した「今でも忘れられないヒヤリとした出来事」をお話ししたいと思います。

銀行の窓口では、毎日たくさんのお客様と接します。

お金を扱う仕事なので金額の確認はもちろん大切ですが、実はそれと同じくらい重要なのが「名前」の確認です。

当時の私は、その重みをまだ十分理解していませんでした。

これは、現場に配属されて数か月が経ち、「少し仕事に慣れてきた」と感じ始めていた頃の話です。

「お客様が大丈夫と言うなら問題ない」そう思っていた

ある日、ご年配のお客様が窓口に来店されました。

通帳や本人確認書類を確認しながら手続きを進めていた私は、ある違和感に気付きます。

通帳の名義は「渡辺」。

一方で、本人確認書類には「渡邉」と記載されていました。

ただ、そのお客様は、

「昔から渡辺で使ってるから大丈夫だよ」

とおっしゃっていました。

私は内心、

「ご本人が問題ないと言っているなら大丈夫だろう」

と思っていました。

新人だった私は、「お客様がおっしゃるなら間違いない」と考えていたのです。

しかし、手続きを進めようとした時、システム上で確認が必要となり、先輩行員に相談することになりました。

先輩から聞かされた“銀行の裏側”

先輩は私にこう説明してくれました。

「実は銀行では、戸籍上の旧字体や難しい漢字がシステム上で表示できない場合があるの。

その場合、昔は通帳へ手書きで対応することも少なくなかったんだ。

ただし、手書き対応には別の問題がある。

例えば、お客様がATMで通帳繰越をしようとした際、機械で処理できず、

『窓口へお越しください』

という案内が表示されることがあるんだよ。

お客様にとっては不便だよね。

だから最近は、お客様へ事情を説明して了承をいただいたうえで、旧字体の『渡邉』ではなく、新字体の『渡辺』で口座名義を管理するケースもあるんだ。

もちろん勝手に変更するわけじゃない。

だからね、『お客様が大丈夫と言っている』だけじゃ駄目なんだ。

その理由まで確認しないといけないんだよ」

私は、その話を聞いて初めて気付きました。

「お客様がそう言っているから大丈夫」

ではなく、

「なぜそうなっているのか」

という背景まで確認する必要があったのです。

新人だった私は、その視点が完全に抜け落ちていました。

名前の裏に隠れている“お客様の事情”

銀行で働いていると、名前ひとつにもさまざまな事情があることを知ります。

結婚や離婚による改姓。
戸籍上の旧字体と日常で使う字体の違い。
長年使い続けている通帳との整合性。

そして時には、相続や家族間のトラブルが関係していることもあります。

お客様から見れば「たった漢字1文字」。

ですが銀行員にとっては、その1文字の違いが財産を守るための重要な手掛かりになることがあります。

だからこそ、確認には理由があるのです。

「慣れ」が生む思い込み

手続き後、先輩から言われた言葉があります。

「新人が一番危ないのは、分からない時じゃない。少し慣れてきた時だよ」

当時の私は、その意味がよく分かっていませんでした。

入行したばかりの頃は、何をするにも慎重です。

ですが数か月経つと業務の流れが見えてきます。

すると、

「たぶんこうだろう」「いつも通りだろう」

という思い込みが生まれます。

今回の私もまさにそうでした。

お客様が大丈夫と言っている。名字もほぼ同じ。だから問題ない。

そう勝手に判断していたのです。

しかし銀行の仕事では、「たぶん」は許されません。

確認できる事実だけを積み重ねて判断することが求められます。

あの時の経験は、「確認したつもり」がいかに危険かを教えてくれました。

読者の皆さまへ

銀行で手続きをする際、

「なぜこんな細かいことまで聞かれるのだろう」

と思うことがあるかもしれません。

ですが、その確認の多くはお客様の財産を守るために行われています。

特に旧字体や異体字を使われている方は、

・本人確認書類
・通帳
・キャッシュカード
・銀行への届出内容

を一度確認してみることをおすすめします。

昔の手続き内容によっては、現在の表記と異なっている場合もあります。

もし気になることがあれば、遠慮なく窓口で相談してみてください。

その背景を確認することも、私たち銀行員の大切な仕事です。

たった漢字1文字。

新人だった私は、その違いを軽く考えていました。

ですが今振り返ると、あの日確認を怠らなかった先輩のおかげで、大切なことを学べたと思っています。

銀行の窓口では今日も、多くの行員が「当たり前」に見える確認作業を繰り返しています。

その一つひとつが、お客様の大切な財産と信頼を守るための仕事なのです。


ライター:くまえり銀行員

金融機関の窓口業務に携わり、日々さまざまなお客様対応を経験。忙しい日常の中で起こりがちな銀行手続きの行き違いやトラブルを、窓口の内側から見た視点で、読者に寄り添いながら伝えています。「知らなかった」が「なるほど」に変わる瞬間を大切に執筆中。

【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】

の記事をもっとみる