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4000万で理想の注文住宅を建てたのに!半年で家中に物があふれてしまった30代夫婦の想定外の誤算【一級建築士は見た】

  • 2026.7.7
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「リビングの広さや内装にはこだわったんです。収納もひととおり付けたつもりでした。なのに、住み始めて半年で家じゅう物があふれてしまって…」

そう話すのは、地元の工務店で念願の注文住宅を建てたSさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。延床面積は約32坪(約105㎡)、間取りは4LDK。建築費は約4,000万円で、広々としたリビングとこだわりの内装が自慢の住まいです。

打ち合わせではキッチンや床材、照明を熱心に選び、間取りにも満足していました。ところが暮らし始めると、玄関には靴やベビーカーがあふれ、キッチンには家電やストック食品が並び、リビングはいつも片付かない——。

「収納が足りないというより、置きたい場所に収納がない感じなんです」とSさんは振り返ります。

「収納率」は足りていても、あふれることがある

住宅の収納量は、「収納率」という目安で語られます。延床面積に対する収納部分の割合のことで、一戸建てでは12〜15パーセント程度が一つの目安と言われています。Sさんの家も、収納率だけで見れば一般的な水準にありました。

ただし、この数字を満たしていても安心とは限りません。収納率はあくまで「面積」の目安で、棚の高さや奥行き、使い勝手までは表しません。図面の上では同じ四角い収納でも、実際にどれだけ入り、どれだけ使いやすいかは別の話です。

打ち合わせでは、間取りの広さや内装の見た目に意識が向きやすく、収納は「とりあえず付けておく」になりがちです。図面だけでは収納の使い勝手が伝わりにくいことも、入居後のギャップを生む一因です。

大切なのは「量」より「適所」

収納で後悔しないためのカギは、広さよりも「使う場所の近くにあるか」です。

Sさんの家は、収納の多くを2階の主寝室や納戸にまとめていました。一方、毎日使う1階の玄関やキッチンのそばには、収納がほとんどありません。2階まで運ぶのが面倒な納戸はしだいに使われなくなり、靴や食品ストック、日用品は1階の生活エリアにたまっていきました。収納の面積は足りていても、よく使う場所に収納がなければ、物はそこにあふれてしまうのです。

このように、納戸などひとつの場所にまとめる「集中型」だけだと、運ぶ手間から物が散らかりやすくなります。玄関には靴や傘、ベビーカー、キッチンには食品ストックや調理家電、洗面には洗剤やタオル、リビングには細々した日用品——それぞれ「使う場所のそば」に収納を散らす「分散型」を組み合わせると、散らかりにくくなります。

見落とされやすい「季節物」と「これから増える物」

もうひとつ抜けやすいのが、毎日は使わない物の置き場です。

扇風機やヒーター、クリスマスツリー、スーツケース、来客用の布団——こうした季節物や大物は、しまう場所を決めておかないと部屋の隅を占領します。

さらに、物は年々増えていきます。子どもの成長で道具や衣類が増え、出産や親との同居で家族が増えることもあります。今ある荷物の量だけで収納を決めると、数年後に足りなくなりがちです。

後悔を防ぐ「物の棚卸し」

注文住宅の強みは、暮らしに合わせて収納を逆算できることです。せっかくの自由設計を活かすために、計画の段階で一度、家じゅうの物を棚卸ししてみてください。

今ある家財や荷物を図面に書き込み、「何を・どこで・どれだけ使うか」を一年を通してイメージする。地味な作業ですが、これが入居後の後悔をいちばん減らします。後から造作で収納を足すと割高になりやすいぶん、計画段階のひと手間が効いてきます。

収納は「広さの数字」じゃない

Sさん夫婦はその後、玄関脇とキッチンに棚を後付けし、毎日使う物を「使う場所のそば」へ移しました。あわせて、もとの収納も可動棚の高さを細かく調整して天井までの空間を無駄なく活かし、季節物は外部のトランクルームに預けることで、暮らしを立て直しました。

「収納は広さの数字じゃなく、どこで何を使うかなんだと、住んでみて分かりました」と話します。

収納は、面積の数字を満たせばよいというものではありません。「何を・どこで・どれだけ使うか」から逆算すること。それが、片付けに追われない住まいへの近道です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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