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「隣のベランダから枯葉や土が…」隙間をふさぎたい30代夫婦。実は"勝手にふさげない"構造だった【一級建築士は見た】

  • 2026.6.24
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「どんなに掃除しても、すぐにベランダが枯葉や土だらけになるんです。よく見たら、隣の家がベランダで植物を育てていて、風で全部うちに飛んできていて…」

そう話すのは、郊外のマンション(築8年・約70㎡・3LDK)を約5,700万円で購入したUさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。日当たりのよいベランダが気に入って選んだ住まいでしたが、入居後しばらくして、隣戸との境にある仕切り板の足元のことで頭を悩ませるようになりました。

隣戸との間を仕切る板の下には、床とのわずかな隙間があります。そこから、隣戸が育てる植物の枯葉や土が、風に乗ってUさんのベランダに流れ込んでくるのです。

「角を立てたくないので、隙間にさりげなく板でも立ててふさいでしまおうかと思ったのですが…」とUさんは振り返ります。

その仕切り板は、いざというときの「避難経路」

隙間をふさぐ前に、知っておきたいことがあります。マンションのベランダで隣戸との間を仕切るあの板は、「隔て板」や「蹴破り戸」と呼ばれ、火災などの非常時に隣の住戸へ逃げるための避難経路を兼ねています。

薄くて壊れやすい素材でできているのは、いざというときに文字どおり蹴破って隣へ避難するためです。設置は消防法に基づくもので、板には「この付近に物を置かないでください」といった表示がされていることもあります。

つまり、この隔て板やその周辺をふさぐと、いざというときの避難の妨げになりかねません。「自分の家のベランダ」であっても、勝手に手を加えてよい場所ではないのです。

ベランダは「共用部分」という意外な事実

意外に思われるかもしれませんが、マンションのベランダは、その部屋の住人しか使わないのに、法律(区分所有法)上は廊下や階段と同じ「共用部分」として扱われます。

居住者に認められているのは「専用使用権」、つまり「自分が使う権利」だけで、所有しているわけではありません。そのため隔て板を改造したり、避難の妨げになる物を設置したりすることは管理規約で禁じられているのが一般的で、違反すると撤去や原状回復を求められることもあります。

ちなみに、隔て板の下にわずかな隙間が設けられているのは不良品ではなく、雨水を流すためや避難のための構造によるものです。隔て板の寸法は、各自治体の消防に関する指導基準などで定められており、床面からの隙間は150mm以下とされるのが一般的です。

Uさん夫婦はどう対応したのか

「勝手にふさいではいけない」と知ったUさん夫婦は、まず管理規約を確認し、管理会社に相談しました。

すると、隔て板の機能を損なう設置はやはり認められないとのこと。隙間は避難や排水のための構造なので、そこをふさいで飛来物を物理的に止めることはできません。そこでUさん夫婦は、発生源である隣戸への働きかけを中心に据えました。

直接伝えると角が立つため、管理組合・管理会社を通じて、ベランダでの植物の手入れや土の飛散に配慮してほしいと、やんわり全戸にアナウンスしてもらうよう依頼。あわせて、飛んできた枯葉や土が室内側へ舞い込むのを軽減するため、避難の妨げにならない位置に背の低いプランターや軽いついたてを置く工夫も補助的に取り入れました。

「直接言わずに済んだうえ、構造のことも理解できて安心した」とUさんは振り返ります。

マンションは「ベランダのルール」まで確認して選ぶ

マンションを検討する際は、間取りや日当たりだけでなく、ベランダにどんな制約があるかも知っておくと安心です。とくに以下の点を意識してみてください。

・ベランダが避難経路に指定されているか(隔て板や避難ハッチの位置)
・ベランダの使い方を定めた管理規約や使用細則の内容
・困ったときに相談できる管理組合や管理会社の窓口

ご近所と「気持ちよく」暮らすために

ベランダで植物を育てることも、隙間が気になることも、どちらも自然なことです。問題になるのは、構造を知らないまま自己流で手を加えたり、不満を感情的に隣戸へぶつけたりしてしまうこと。

隔て板の機能を守る、避難の妨げにならない範囲で工夫する、困ったら管理会社や管理組合に相談する──こうした手順を踏めば、安全を保ちながらトラブルもやわらげられます。飛来物を出している側も悪気がなく、気づいていないことが多いので、管理を通じた穏やかな伝え方から始めるのがおすすめです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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