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築9年3LDK購入も「毎朝、隣からバンバン…」30代夫婦を悩ませた騒音問題…実は"100万円賠償"の判例も【一級建築士は見た】

  • 2026.6.23
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「毎朝、隣のベランダから布団をたたく『バンバン』という音が響いてきて。窓を開ける季節になってから、その音で目が覚めるようになったんです」

そう話すのは、郊外のマンション(築9年・約68㎡・3LDK)を約5,600万円で購入したSさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。日当たりのよさが気に入って選んだ住まいで、初夏に窓を開けるようになって思わぬ悩みに直面しました。

隣戸の住人が天気のよい日に布団を干し、ベランダで勢いよくたたくのが習慣で、その音が窓越しにSさんの寝室まで届くのです。寝室の窓が、ちょうど隣戸のベランダと近い位置にありました。

「悪気はないと思うのですが、休日くらいゆっくり寝たいのに毎朝たたかれると、さすがにこたえます」とSさんは振り返ります。

「布団たたきの音」は深刻なトラブルになりうる

たかが布団たたき、と思うかもしれません。しかし、この音をめぐるトラブルは、実際に裁判にまで発展した例があります。

2010年に大阪地裁で判決が下されたケースでは、隣家の布団たたきの音に長年悩まされた男性が、相手の女性に損害賠償を求めて提訴しました。裁判所は、両家が約1メートルしか離れておらず音が相当な音量で響いていたこと、女性がベランダではなく男性宅に近い窓側でわざわざたたいていたことなどを指摘し、「社会通念上、我慢すべき限度を超えており、平穏な生活を侵害した」として、女性に100万円の支払いを命じました。

布団をたたく音は瞬間的に大きく、住宅が近接していると隣家に直接響きます。これは戸建てに限った話ではありません。マンションでも、隣戸のベランダと自宅の窓が近ければ、たたく音は窓越しに届きます。「自分の家のベランダでしていること」でも、程度によっては法的な責任を問われることがあるのです。

判断を分ける「受忍限度」と「対応の誠実さ」

近隣トラブルで問題になるのが、「受忍限度」という考え方です。お互いに我慢すべき限度のことで、多少の生活音はお互いさまですが、その限度を超えると違法と判断される可能性があります。

先のケースで重く見られたのが、対応の誠実さです。いったん「1日3回未満、1回10分未満」といった条件で和解が成立したのに、その後も条件を超えてたたき続けたことや、音を抑えようとする配慮が見られなかったことが、賠償命令の理由になりました。音そのものだけでなく、相手の訴えにどう向き合ったかも判断を左右するのです。

そもそも「強くたたく」のは逆効果

ここで知っておきたいのが、布団は強くたたく必要がない、という事実です。

布団たたきは本来、表面のほこりを払う道具で、力任せに打ちつけるものではありません。むしろ強くたたくと、中の綿を傷めるうえ、ダニの死骸やフンを細かく砕いて表面に出し、アレルギーの原因をかえって広げてしまうとされています。干したあとに舞う白い粉のようなものも、ほこりではなく中綿が砕けたものであることが多いのです。

ダニやほこりが気になるなら、たたくより掃除機で吸い取るほうが効果的だとされています。布団を長持ちさせるうえでも近隣への配慮の点でも、「強くたたかない」ほうが理にかなっているのです。

Sさん夫婦はどう対応したのか

布団たたきの音に悩んだSさん夫婦は、角が立たない伝え方から始めました。

日常のあいさつを大切にして話しやすい関係をつくり、あるとき「朝の音が寝室に響いてしまって」とやわらかく伝えたところ、隣戸は驚きつつも、たたく時間帯を遅らせ、力もほどほどにしてくれるようになったといいます。「相手も気づいていなかっただけで、伝え方しだいで歩み寄れた」とSさんは振り返ります。

マンションは「窓を開ける季節の音」まで考えて選ぶ

住まい選びでは、間取りや日当たりだけでなく、窓を開ける季節に隣戸からの音がどう響くかも意識しておくと安心です。とくに以下の点を確認してみてください。

・隣戸のベランダや窓と、自宅の寝室・窓の位置関係
・窓やサッシの遮音性(開けない時期にどの程度音を防げるか)
・騒音トラブル時に間に入ってもらえる管理会社が入っているか、ベランダの使い方を定めた管理規約があるか

ご近所と「気持ちよく」暮らすために

布団を干すこと自体は、気持ちのよい習慣です。問題になるのは、その音が近隣に与える影響に気づかないまま続けてしまうこと。

干す時間帯に配慮する、強くたたかず軽く払う程度にする、掃除機での手入れに切り替える──こうした工夫があれば、近隣と気まずくならずに布団を清潔に保てます。悩まされている側も、感情的にならず、まず関係づくりと具体的な相談から始めると円満に解決しやすくなります。

「自分のベランダだから自由」ではなく、「窓を開ける季節は、音もお隣に届く」とお互いが意識すること。それが、初夏のご近所トラブルを防ぐ第一歩です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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