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「駅員はいつ寝ている?」終電を見送った後の知られざる“深夜の駅”の裏側

  • 2026.6.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役鉄道会社社員の福本明文です。

終電後に駅のシャッターを閉じて家路につく人々を見送り、翌朝には再びシャッターを開けて始発電車に乗る人々を迎える鉄道駅の駅員。彼らが毎日駅にいるのを見て、「駅員さんは一体いつ、どこで寝ているのだろう?」と不思議に思ったことがある人も少なくないのではないでしょうか。

今回は、皆さんが普段見ることのない終電後の駅の裏側と、近年駅の現場にも広がりつつある働き方の変化に迫ります。

鉄道特有の「泊まり勤務(隔日勤務)」

鉄道の現場には、朝出勤して夕方から夜にかけて退勤する一般的な会社員のような「日勤」のほかに、「泊まり勤務(隔日勤務)」という独特の勤務形態が存在します。

隔日勤務の駅員は、朝出勤してそのまま駅で夜を明かし、翌朝のラッシュ対応などを終えてから退勤します。退勤した後の時間は「明け」と呼ばれます。つまり、二日分の勤務を一度にまとめて行い、出勤が文字通り「隔日」になることから隔日勤務と呼ばれているのです。

会社によってシフトの組み方は異なりますが、基本的にはこの日勤と隔日勤務、そして公休を組み合わせて毎日の勤務スケジュールが決まります。深夜の終電対応や早朝の始発対応を行っているのは、この泊まり勤務を担当している駅員たちです。

終電後から始発まで(ある日の深夜の駅より)

ここで、終電前後の駅の様子を覗いてみましょう。なお、これはあくまで一般的な一例であり、会社や駅の規模、設備によって業務内容や対応は異なることをあらかじめご了承ください。

深夜、駅員たちは最終電車を見送ります。電車が去った後、駅構内に残っているお客様や忘れ物がないかを確認し、清掃作業を行います。すべてが完了すると、出入り口のシャッターを下ろし、駅の照明をはじめ、自動改札機や券売機といった駅務機器の電源を切ります。ここでようやく駅の長い一日が終わります。

駅員たちは駅に設けられた仮眠室で短い睡眠をとりますが、始発担当の駅員は始発電車が動く前に起床しなければならないため、ゆっくりと寝られる時間はわずかです。日の昇る前の薄暗い中、駅の照明をつけ、駅務機器を立ち上げ、シャッターを開けて、始発電車に乗る人々を迎えるのです。

駅での食事と胸がひりつく終電の接続

忙しい駅の仕事の合間の楽しみといえば食事です。帰宅ラッシュの前や、ラッシュが落ち着いた頃合いを見計らい、駅員たちは交代で夕食をとります。会社や駅によっては、交代で食事担当となった駅員が、駅のキッチンで全員分の夕食を手作りすることもあります。こうした職場では食事の時間が大きな楽しみであり、特に料理上手の人が担当の日は、夕食を心待ちにしている駅員も少なくありませんでした。

そして、夜の業務で最もシビアなのが終電の接続です。接続予定の他路線が遅れて終電に間に合わない事態になれば、利用者が帰宅できないなど大きな影響が出ます。筆者の経験でも、状況によっては運転指令を通して他駅や他社と緊密に連携し、終電の発車時刻を数分遅らせて接続を図ることがありました。こうした瞬間は胸がひりつくような緊張感に包まれますが、無事に乗り換えが完了して終電が発車していくと、心底ほっとした気分になったものです。

酔客への対応と変わりゆく現場の意識

終電後の対応で特に大変に感じるのが、酔客への対応です。終電が出発した後の構内で寝込んでいる方を見つけると、駅員には緊張が走ります。筆者がかつて先輩から聞いた話では、昔はかなり強引に起こして駅の外へ連れ出していた時代もあったそうですが、現在ではそうはいきません。トラブルを防ぐためにも丁寧に声をかけて駅の外への退出を促し、どうしても起きない場合や、暴れてしまうなどやむを得ない場合は、警察に協力を仰いで対応します。

こうした過酷な隔日勤務ですが、筆者が新入社員の頃は「明けの日は休みのようなもので、日勤の仕事より休みが多いように感じられるのが良い」と好意的に捉える人も少なくなく、鉄道ならではの働き方として現場に広く定着していました。

南海電鉄の事例に見る「新しい働き方」と省力化

しかし、ここ数年でその雰囲気や制度は大きく変わりつつあります。例えば大阪の南海電鉄では、2025年度下期(10月頃)からは一部の駅で、泊まり勤務を大幅に縮小し、「宿泊を伴わない勤務」を中心とする体制に見直す取り組みを始める予定です。同社の公式リリースによれば、その対象となる一部の駅では、「宿泊を伴わない勤務」の割合を7割程度まで拡大する方針であると発表されています。

例えば大阪の南海電鉄では、泊まり勤務を大幅に縮小し、「宿泊を伴わない勤務」を中心とする体制へと見直す方針を発表するなど、柔軟な働き方に向けた具体的な動きを見せています。

この働き方の変化の背景にあるのは、社会的な働き方改革です。いくら明けの日が自由に使えるとはいえ、24時間近く職場に拘束される勤務は心身ともに過酷であり、育児や介護といった家庭との両立を考慮した柔軟な制度が求められるようになりました。また、女性が鉄道の現場で広く活躍するようになったことも、制度見直しの大きな後押しとなっています。

さらに、システムの省力化が進んだことも見逃せません。早朝や深夜、あるいは日中も無人となっている駅や窓口を見かけたことがあるでしょう。そうした駅では、防犯カメラや駅務機器の遠隔制御システムを活用し、主要駅やセンターから一括して制御・監視を行っています。限られた人数で集中管理できるようになったことで、泊まり勤務に多くの人を配置する必要が徐々になくなってきているのです。

変わっていく駅での仕事

終電が発車した後の駅は、どこか寂しげで独特の静寂に包まれます。その静けさの裏側では、翌朝の始発のために備え、安全を守るために働く駅員たちの姿があります。

次に深夜の駅を利用する機会があれば、システムの進化とともに新しい働き方を模索しながら、今日も駅の裏側で働く人たちの存在に、少しだけ目を向けてみてもらえると嬉しいです。


参考:
私たちの働き方(JR東日本ステーションサービス)
仕事を知る|京急電鉄 鉄道コース 新卒採用サイト(京急電鉄)
駅係員の一日(南海電鉄)
「南海グループ人財戦略」に基づき「人への投資」を強化 (南海電鉄)


ライター:福本明文
大学卒業後、鉄道会社に総合職として入社し、同業界に15年以上従事。鉄道部門だけでなく、タクシーやバス、小売りといった関連事業にも幅広く携わる。現在はWebライターとしても、広報を担当した経験を活かし、コラム記事の執筆からSNSへのコンテンツ提供まで多岐にわたって活動中。


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