1. トップ
  2. 暮らし
  3. 「価格は2700万円級」高市総理の新公用車、なぜ“黒塗りセダン”から「SUV」へ? 変更に隠された納得のワケ

「価格は2700万円級」高市総理の新公用車、なぜ“黒塗りセダン”から「SUV」へ? 変更に隠された納得のワケ

  • 2026.7.1
undefined
(C)SANKEI 新型センチュリーに刷新された高市早苗首相の専用車=6月22日午後、国会内(春名中撮影)

要人の車といえば黒塗りのセダンという常識が、今まさに変わろうとしています。高市早苗総理の新しい公用車として話題を集めている新型センチュリー。その高額な価格設定も注目を集めていますが、なぜ背の高いスタイルのSUVが選ばれたのでしょうか。

ショーファーカーとしての快適性を極めつつ、ドライバーズカーの側面もあわせ持つ究極の移動空間と、現代の高級車が示す新しい価値観について考えていきます。

話題のニュースから紐解く。「総理が乗るSUV」への素朴な疑問

先日、高市総理の新しい公用車として、トヨタの新型センチュリーが採用されたというニュースが報じられました。テレビなどの報道を通じて、その堂々とした姿を目にした方も多いのではないでしょうか。

これまで公用車や要人が乗る車といえば、威厳ある黒塗りのセダンをイメージする方が多かったかもしれません。それにもかかわらず今回は、背の高い、いわゆるSUVスタイルの車が選ばれたことに、少なからず驚きを感じた方もいらっしゃるでしょう。

政治的な背景はさておき、純粋に自動車の進化という視点から見ると、この選択には大変興味深い理由が隠されています。一見すると大柄なアウトドア向けの車に映るかもしれませんが、その中身は私たちが街中で目にするファミリー向けの車とは、まったく異なる思想のもとで作られています。

ここからは、この車の特別な立ち位置と込められた工夫を、順番に紐解いていきましょう。

そもそも「センチュリー」とは?

トヨタには多様な高級車ブランドがありますが、センチュリーはそれらとも異なる特別な存在として位置づけられています。

企業トップや官公庁の関係者など、後席に乗る方の移動を第一に考えたショーファーカーとして、長い歴史と格式を守りながら歩んできました。日本の伝統美と職人の手仕事によって作り込まれる特別な一台として、多くの方に認知されています。

メディアではその外観から「センチュリーSUV」と呼ばれることも多いですが、トヨタの公式発表における正式な車名は単に「センチュリー」です。従来のセダンモデルも継続して販売されており、多様化するニーズに応えた新しい選択肢としてラインアップに加わった形となります。

また、これまでは後席に乗る方のための車というイメージが強かったセンチュリーですが、この新しいモデルは少し異なる一面も持っています。ショーファーカーとしての優れた快適性を備える一方で、オーナー自らドライブを楽しめるほどの高い走行性能も確保されているのです。運転席まわりも、プロのドライバーをサポートする機能を集約しつつ、オーナー自身がハンドルを握る際にも運転に集中できる環境が整えられています。

後席の乗員をもてなすだけでなく、運転する歓びもあわせ持つ、新しい時代の高級車へと進化を遂げているといえそうです。では、その主役となる後席は、いったいどのような空間になっているのでしょうか。

家族のためではない? 後席が主役となる特別な空間

大きなボディを持つ車と聞くと、休日にたくさんの荷物を積み込んで大人数で海や山へ出かけるような使い方を想像するかもしれません。しかし、新しいセンチュリーはそのような一般的なイメージとは少し違います。

大柄なボディでありながら、乗車定員はあえて4名に設定されています。たくさんの人を乗せるためではなく、限られた乗員が極めて快適に移動できる特別な空間として設計されているからです。

とくに後席には、フルリクライニング可能なリヤシートが備わっています。大きく背もたれを倒して足を伸ばしながらくつろげるだけでなく、長時間移動の疲れを癒やすリフレッシュ機能や、ノートパソコンを広げて作業できる回転格納式のテーブルまで用意されています。

さらに、和服を着た方でも美しい所作で乗り降りできるよう、後席ドアが非常に大きく開く工夫も施されています。車内で過ごす時間そのものを仕事や休息に充てられるよう配慮された室内は、まさに「走る執務室」と呼ぶにふさわしい仕上がりといえるでしょう。

これほどまでに乗る人のことを考え抜かれた空間であれば、その価格設定にも注目が集まるのは自然なことかもしれません。

価格は2,700万円。価格の裏にある究極の移動体験

ニュースでは「2,700万円級」という数字が大きく取り上げられることもあり、驚かれた方も多いのではないでしょうか。
実際にトヨタが公表しているメーカー希望小売価格も、消費税込みで2,700万円となっており、ここにカスタマイズやオプションを追加していくことで、総額はさらに高額になります。

非常に高額な設定に感じられますが、その裏には移動時間をいかに質の高いものにするかという、究極のおもてなしの技術が詰め込まれています。

たとえば、室内空間の広い車は構造上、荷室からの騒音が客室に響きやすいという弱点があります。そこで新しいセンチュリーでは、荷室と客室の間に遮音機能付きの分厚いクリアガラスを配置し、空間をしっかりと区切ることで極限の静粛性を追求しています。

くわえて、路面からの振動を徹底的に抑え込む特別な足まわりが採用されており、車内で文字を書いたり飲み物を口にしたりする際にも、不快な揺れを感じにくいよう設計されています。単なる見た目の豪華さだけでなく、外の喧騒を遮断し、乗員が心穏やかに過ごせるよう守る工夫が随所に凝らされている。その結果がこの価格に表れているといえそうです。

こうした乗員への細やかな配慮は、現代の車選びにおいてひとつの大きな潮流を生み出しているようです。

セダンから大空間へ。高級車の価値観はこう変わってきている

かつての要人車や社用車といえば、車高の低いセダンが圧倒的な定番でした。

しかし近年は、アルファードのような広々とした室内空間を持つミニバンをはじめ、レクサスLM(ラグジュアリームーバー)のようなMPV、そして快適性を高めた背の高いSUVなどが選ばれる時代へと変化しています。新しいセンチュリーの誕生は、見栄えや形式だけでなく、車内で過ごす時間の質そのものが重視されるようになったという、現代の価値観の変化を象徴する出来事のひとつといえるでしょう。

もちろん、多くの方にとって現実的な購入候補にはなりにくい車です。それでも、誰のための車なのか、移動時間をどうすればより快適にできるかという視点は、私たちが日常の車を選ぶ際にも大いに参考になるのではないでしょうか。

運転する側の心地よさはもちろんのこと、一緒に乗る同乗者がどのように過ごすかという視点を大切にしてみると、これからの車選びがさらに豊かで楽しいものになっていくかもしれません。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。

の記事をもっとみる