1. トップ
  2. ビジネス・マネー
  3. 母の死後、実家を“賃貸”に出した40代娘→「もう手放そう」2年後に売ろうとしたところ…税理士から告げられた“想定外の事実”

母の死後、実家を“賃貸”に出した40代娘→「もう手放そう」2年後に売ろうとしたところ…税理士から告げられた“想定外の事実”

  • 2026.6.29
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは!税理士・元国税調査官の神崎遊です。

「思い出の詰まった家だったので、売りたくはなかったんです」

そう語るのは、48歳のパート勤務女性のNさん(仮名)です。Nさんは2年前、亡くなった母親が一人で暮らしていた実家を相続しました。すでに夫と息子と暮らす持ち家があったため、相続した家をどうすべきか悩んだそうです。

思い入れがあることから売る決心がつかず「空き家のままにするよりはいいかな」と、賃貸に出したのですが、その判断が後悔の引き金になるとは…。

「空き家のままよりいい」と思ったのですが…

Nさんは結婚するまで、母親と2人で実家に暮らしていました。結婚後も毎年帰省しており、実家は心のよりどころでした。

月日が流れ、母親を亡くしたNさんは実家を相続することになりました。築年数も古くすでに持ち家に住んでいたこともあり、夫からは「売ってしまうのがいいんじゃないかな」と言われました。

しかし、「気持ちの整理ができるまでは」と売ることができず、賃貸に出すことにしました。借り手はすぐに見つかりましたが、家賃収入から経費を支払うと手元に残るお金はわずかでした。

結局、2年後に再び空き家になり、大規模な修繕も必要であることが分かると「もう手放そう」と決心したそうです。

売却額は約4,500万円。周辺の開発が進んだことで土地の価値が上昇しており、想像以上の金額で売却できたそうです。

確定申告が必要になると思ったNさんは税理士に相談に行きました。

「賃貸に出していなければ"空き家特例"を使える可能性がより高かったのですが…ただし特例の適用には賃貸以外にも、建築時期・売却期限・売却価格の上限など複数の要件があり、すべてを満たす必要があります。」

「え?なんですかそれは…」

空き家特例とは

空き家特例とは、亡くなった方が住んでいた家を相続し、一定の要件を満たした場合に、課税譲渡所得(税金の対象となる利益)から最大3,000万円を控除できる制度です。

課税譲渡所得は次の算式で計算します。

課税譲渡所得=売却代金ー(購入時の費用や仲介手数料など売却時の諸費用)ー特別控除額

Nさんの場合、約3,000万円の課税譲渡所得が発生していましたが、空き家特例を適用することができれば、税負担はほとんど発生しませんでした。

売却した年の1月1日時点で、保有期間が5年超の場合、税率は20.315%です。なお、相続で取得した不動産の保有期間は、相続した日ではなく被相続人(亡くなった方)が取得した日から起算します。Nさんのように数十年前に親が購入した家であれば、相続後すぐに売却しても長期譲渡所得として扱われます。

つまり、空き家特例を適用できれば、約600万円もの税負担を抑えられる可能性があったのです。

※なお、空き家特例は家屋の築年数や相続人数などに関する要件があり、税制改正により内容が変更されることもあります。特に2024年1月1日以後の売却については、相続人が3人以上いる場合は控除上限が3,000万円から2,000万円に縮小されます。節税効果の試算はご自身の相続人数を踏まえてご確認ください。

空き家特例の落とし穴

空き家特例には複数の適用要件があります。

Nさんのケースで適用できなかった理由は『相続してから売却までの間に賃貸に出していないこと』という要件を満たさなかったためです。

適用にあたってはそれだけではなく、いくつもの要件があり、全てを満たしてはじめて適用できる制度です。節税効果は高いのですが、適用の判断は専門的であるため事前に税務署や税理士に相談することをおすすめします。

もっと早く決断していれば…

相続した家に思い入れがあり残しておきたいという気持ちは決して否定できるものではありません。

ただし、最終的にどうするのかという見通しを持っておくことは大切です。事前の計画が、思わぬ税負担を防ぐことにつながる場合もあります。

「早く決断できていればよかった…」というNさんの言葉が印象的でした。


執筆:税理士・元国税調査官 神崎遊

国税組織で12年間勤務し、法人税調査を中心に200件以上の税務調査に従事。現在は「ゆとり税務会計」を運営し、中小企業・個人事業主の税務支援を行っている。

の記事をもっとみる