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「非課税で渡せる」“毎年110万円”を3人の子どもに振り込み→10年後、税務調査で告げられた“耳を疑う一言”【お金のプロは見た】

  • 2026.6.19
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「毎年110万円までなら、税金はかからないらしいよ」。

知人からそう聞いて、せっせと子どもにお金を渡し始める人は少なくありません。でも実は、その「正しいはずのやり方」が、後から数百万円の税金を呼び込むことがあるのです。

今回は、よかれと思って生前贈与を続けたAさん(亡くなったときは84歳)が、思わぬ落とし穴にはまったお話です。

「10年で3,300万円を無税で渡せる」はずだった

きっかけは、知人のひと言でした。「子ども3人に毎年110万円ずつ贈れば、10年で1,100万円(3人で3,300万円)を非課税で渡せるよ」。当時74歳のAさんはこれを実行に移します。

毎年お正月になると、3人の子それぞれの口座へ、きっちり110万円を振り込んでいたようです。同じ時期に・同じ金額を・同じように、律儀な性格のAさんは10年間にわたって、一度も欠かさず続けました。

そして10年目を終えた直後、Aさんは亡くなります。相続税の申告も済ませ、ひと段落かと思われたころ税務調査が入り、家族は耳を疑う指摘を受けることになりました。

「最初から1,100万円贈る約束だった」とみなされた

税務署が問題にしたのは、贈与の「やり方」でした。毎年同じ時期・同じ金額の振込が10年続いていたことから、「これは最初から総額1,100万円を渡す約束に基づいた贈与だ」と判断されたのです。

ここで効いてくるのが「定期贈与」という考え方です。毎年同じ日・同じ金額を機械的に振り込んでいると、継続的な給付契約に見えやすく、定期贈与と判断されがちです。そして定期贈与とみなされると、1年間の贈与額が110万円以下であっても、契約をした年に総額の贈与を受けたものとみなされてしまいます。

つまり、毎年バラバラに110万円を渡していた「つもり」でも、初年度に1,100万円をまとめて贈ったとして課税される、ということです。

気になる税額を見てみましょう。定期贈与とみなされると、初年度(契約年)に総額1,100万円分を受け取る権利を贈与されたものとして課税されます。このとき差し引ける基礎控除110万円は初年度の1回分のみです。1,100万円から110万円を引いた990万円が課税対象となり、親子間の贈与で使う特例税率を当てはめると「990万円×30%−90万円」で約207万円の贈与税が、初年度にまとめてかかることになります。

なお、実際の税務調査で多いのは定期贈与の認定よりも名義預金の否認です。子ども自身が口座を管理しておらず贈与が成立していないと判断されるケースの方が件数は多いとされています。

加えて、本来の納期から遅れている分、延滞税や加算税まで上乗せされます。無税のはずだったものが、子ども1人あたり200万円を超える負担になってしまうのです。

なぜ「毎年110万円」だけでは安心できないのか

ここが今回いちばん大切なポイントです。定期贈与かどうかは、金額や回数ではなく「最初から総額を渡す意図があったかどうか」で判断されます。

毎年同じ時期に同じ金額を贈与しているだけで、疑いをかけられる可能性があります。お父さんの「律儀さ」が、皮肉にも“最初から決めていた証拠”のように見えてしまったわけです。

「非課税枠を使う」ことばかり意識して、「贈与をきちんと成立させる」視点が抜けていた。これが落とし穴の正体です。

2024年の改正で変わった「7年ルール」にも注意

もう一つ、近年の大きな変更点があります。これまで亡くなる前「3年」以内の贈与が相続財産への加算対象でしたが、2024年1月1日以降の贈与から、この期間が順次「7年」に延長されました。

つまり、亡くなる直前に駆け込みで贈与しても「相続財産に足し戻されて節税効果が薄れる」ということです。7年ルールが完全に適用されるのは2031年1月1日からで、それまでは段階的に延長されます。ただし延長された4年分(亡くなる前3年超〜7年以内)の贈与については、合計額から100万円を控除できる仕組みも設けられています。

この改正の意味するところは明快です。暦年贈与で財産を減らしたいなら、できるだけ早く、長い時間をかけて計画的に始めることが重要です。生前贈与や資産承継を検討している方は、できるだけ早い段階から計画を考え、実行していきましょう。

まとめ

「毎年110万円までは非課税」というルール自体は間違っていません。しかし、それは正しく贈与が成立していればの話です。同じ時期に同じ額を機械的に渡し続けるだけでは、かえって税務署に「定期贈与」と疑われ、数百万円を失いかねません。

大切なのは、非課税枠を使うことではなく、一年ごとに独立した贈与として成立させること。契約書を残し、子ども自身に管理させ、年ごとに変化をつける。少しの手間が、家族の大きな安心につながります。


出典:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」

出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」

出典:国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」

執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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