1. トップ
  2. カルチャー・教養
  3. 阿川佐和子(72歳)、「老い」がテーマの新刊で綴る“いい年の重ね方”。弱っていく身体、変わっていく見た目にも「面白がる気持ちを忘れないようにしたい」【書評】

阿川佐和子(72歳)、「老い」がテーマの新刊で綴る“いい年の重ね方”。弱っていく身体、変わっていく見た目にも「面白がる気持ちを忘れないようにしたい」【書評】

  • 2026.5.20
年とる力 阿川佐和子 / 文藝春秋
年とる力 阿川佐和子 / 文藝春秋

人気エッセイスト・作家、そしてインタビュアーとして名高い阿川佐和子さんの最新刊『年とる力』(阿川佐和子/文藝春秋)が発売される。

「老い」をテーマにした本書。阿川さんも72歳ということで、食(健康)、外見、友人、趣味、身近な人の死といったテーマが、年をとったらこんな風に意識するといいんじゃないかしらねぇという感じで、押しつけることなく独自の魅力的な視点で綴られている。

阿川さんの考える友だちとは……

「友だち」とはなんでしょうと、阿川さんもときどき考えるという。

家族や恋人ほど密な関係ではないけれど、時に家族には言えないことも相談できる。なるほど、考えてみると、友だちとは人生に欠かすことのできない存在であるかもしれない。

阿川さんは、友だちについてこう語る。

学生時代から付き合いがあり、「若い頃から私のことを熟知している友だちに会うと、今でも反省したり勇気づけられたりすることがたくさんあります」と。有名人になった後も、何か間違ったことをしたら「笑いながら諭して」くれるのが、長年の友だちなのだそう。

では「大人になってからの友だち」は、どうだろう。

阿川さんとしては、それも「友だち」だ。

例えば仕事場で知り合った、年齢の違う人たち。職務上の同志として一時、濃密な時間を過ごし、信頼感と親しみを持った人。

ただ、そういった人とは仕事から離れた後は疎遠になりやすい。仕事を通じて親しかっただけだと思い知らされる。けれどその後も、ときどき「会いたいな」、「元気かな」と、しょっちゅう会うことはなくなっても「心のどこかに留めている人」は、友だちの一人だと考えているとか。

この「心のどこかに留めている」という表現、とってもステキではないだろうか。ともすれば「学生時代の友人だけが真の友」だと思い込んでいたり、自分はそういう存在がいないから、孤独だと思ったりしている方もいるかもしれない。けれど、長年、心のド真ん中にいるわけじゃなくても、「どこかに留めている」ならば、それはもう愛おしい人間関係ではないかと、そう思わせてくれた。

誰でも年をとるのは初体験

「高齢者初心者マーク」の話も、ユーモアたっぷり、かつ「確かに!」と思わせてくれて、興味深かった。年を重ねると、新鮮な経験などが徐々になくなっていくと思っている方も多いのではないだろうか。

阿川さん自身も昔はそう感じていたそうなのだが、「年をとるって、誰にとっても初めての経験なんだ」と実感した出来事があったそう。それからというもの、だんだん弱っていく身体や、変わっていく見た目、身近な人の死などを――それは一般的にネガティブに捉えられることが多いけれど、「面白がる気持を忘れないようにしたい」と思っているそうだ。

まるで人生そのものを実験して「なるほど、こういう結果になるのか」と面白がっているような阿川さん。失敗したらちょっと落ち込むけれど、ケラケラっと笑って颯爽と次へ。

「年をとる」というのは、人間なら誰しも避けられない道ではあるが、阿川さんのように軽妙洒脱に、楽しみながら過ごしたいと思わせてくれるような一冊だった。

文=雨野裾

元記事で読む
の記事をもっとみる